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ヌイグルミは見ていた。(1)

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・・・・



(いくらほど寝かされたのだろうか?)

 気づくとユーナは、窓の外を見た。

 夜、いや、少し光が入ってきている。夕方だろうか……曇り空が見える。

ガラス窓の外には不釣合いな丈夫で無骨な格子がはめられていた。

 部屋は、広く、かつては豪勢な場所であったと分かる程に、しっかりとした作りであった。

 ただ、あちらこちらすすで汚れており、長年使っていない為に溜まったほこりも手伝いかなり汚い。

 よくみれば、日焼けと煤で汚れた壁の一部に、優し色、可愛い桃色の壁紙が残っていた。所々に転がるのは、ウサギにクマ、ネコ等痛んだヌイグルミ達。

 そして、焼け残っている寝台、一般的なものより小さい……。ここの前の持ち主は、女の子だったのだろう……そう思いながらゆっくりと体を起こす。


 必要ないと、思われたのか、手を縛っていた縄は外されていた。ただし、左足には、床から生えたとしか思えない不思議な作りのくさりが付いたかせめられている。

 鉄ではない素材、触れた感覚が素焼きのような物で作られたそれらは、衝撃を与えれば割れそうだが、案の定、それ程甘くなかった。

 床に叩きつけてみるもビクともしない。金属より軽く澄んだ音が響くだけであった。


 口の中がざらついて・・・鉄の味がして気持ち悪い。よく見ると腕や膝に発赤ほっせきや内出血が出来ていた。

 ぜんせは、こんな傷でも大騒ぎになったっけ……血を見るたびに思い出す、苦い思い出に彼女は苦笑した。

 以前の彼女の命を脅かしていた血が止まりにくくなる病、こういった傷が出来るたびに家族に心配させていた。

 16歳になる誕生日の前日、脳内出血を起こして、翌日には、そのまま意識が戻らず……。

 最後に別れの言葉も感謝の言葉も伝えれず、気づけば、この世界に生まれ変わっていた。

 もう一度会って言葉を交わしてみたいと思うも、それも、叶わない事は彼女も理解はしている。

 しかし、血を見るたびに寂しさを覚えるのは、まだ未練を持っているからだろうか……。目頭が熱くなる。


――パシッ

 定番だけど、一番気合の入る方法、両頬を叩き気持ちを切り替える。

まず、ここから逃げ出して……あのレイヴァンの元に帰らなきゃ。


「…………っ違う」

 違う、違う安全な状態にして村に帰らなきゃ。きっと、あの男の所が安全そうだから思いついただけ。

 一人で自分に突っ込み慌てて帰る場所として、最初に思い浮かべた場所の理由いいわけを探しながら、手元にあったネコのヌイグルミをバシバシと何度も、右手でボディブローを加えながら一人考えもだえる。ちなみに左手はネックにきっちり入っている。


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