メイドさん登場ですよ。
朝、目が覚めて一番に目に入ったのは、窓から入る朝日を浴びながら濃い目の紅茶で優雅にモーニングティーをする本日も爽やかなレイヴァンだった。
(……コレは夢だ)
フワフワの上質な布団を頭からかぶる。羽毛布団にシルクのシーツが気持ちいい、もちろん枕もフカフカ柔らかい。
攫われてから今までの出来事が夢落ちだったらどんなに良かったか……ホントに。
「ユーナ様も如何ですか?」
柔らかく丁寧な口調の言葉が、夢落ちを否定してくる。しぶしぶと顔を出すと20歳ほどの細身のメイドがこちらに笑顔を向けている。
「……って、だれ?」
慌てて布団を被り直し頭の猫耳を隠す。
ニコリと微笑むと……
「申し遅れました、ノワールディア家に仕えております。『スケティナ・メンルナー』と申します」
細身でスラリと背が高く、その身を襟高の黒色のメイド服に身を包んでいる。きっちりと団子に結い上げられた濃緑の髪に、切れ長の青い瞳。真面目そうな雰囲気だけれども左目の下のホクロと赤いルージュが何だか色っぽい。
「気にすることは無いよ。彼女は俺専属のメイドだ。王都から呼び寄せ、昨晩こちらに着いたのだよ」
何か用事があれば、まず彼女に頼むといい。そう、付け加えた。
「はぁ……」
それは、わざわざ大変遠くからご苦労な……。上流階級の皆さんは、こういうもんなのだろうか?
とりあえず……。
「着替えるので……この部屋から出てって」
昨晩着ていた高そうな赤いドレスにシワをつけるのも申し訳なく、置いてあった寝る時用に用意された服……っていっても、レースで綺麗に縁取られたシンプルな白のワンピみたいなもの。日の光で透けてしまう。こんな明るい部屋では、体のライン丸見えだ。
「気にすることは無いよ」
むしろ、歓迎といわんばかりの笑顔。
「私が気にするの!」
イラッ……枕を彼へと投げつける。前回のように扉ではなく、本人めがけ……。
――バフッ
軽い破裂音と共に白い羽がフワリと空に舞い上がり雪のように柔らかに下降していきそして、床へと舞い落ちた。
何事も無かった様に紅茶を口にするレイヴァン。
急に起こった幻想的な風景に呆気に取られる。
「彼女はとても優秀でね」
床に落ちている真っ二つの枕カバーとメイドさんの手には似つかわしくない黄金色に輝く円月輪。
それらがもたらした結果だと気づくには、ユーナには少し時間が必要だった。
※円月輪
金属の円盤の外側に刃がついている武器。
切り裂いて攻撃をする。




