何時か何処かの日常で……「ふざけるなぁ!!」。
これは、チキュウではない世界の物語。
交わることの無い運命だった。
だが、
哀しい歴史が繰り返され
邪な野望があったからこそ
二人は出会った。
「まったく、こんなトコで寝てたら風邪ひくって」
別に彼が風邪をひいても私は構わない!!
けど、騎士団の皆さんに迷惑がかかるじゃない?
だから、”しかたなく”ソファーで寝ている彼を起こそう。
彼の肩を掴み、揺すって起こそうと手を伸ばした。
けれど、その手は逆に掴まれる。
「な?」
私と彼の体格差は、子供と大人ほどある。
あっさりと引き寄せられ、あれよあれよという間にソファーに身を沈めることとなる。
先程まで寝ていたなど考えられないほどの身のこなし。
さすが国一番強いの騎士様。
「不審者かと思ったよ、すまない」
満面の笑みで彼はそう言った。
嘘だ、不審者であったなら彼は容赦なく打ちのめしていただろう。
そもそも不審者に対して……
「近くない?」
ソファーに押し倒され両手首を掴まれたまま、私は彼に聞いた。
だって……不審者と互いの顔しか見えない距離で会話します?普通。
なまじ顔が良い、良いどころかこちらも国一番といっても過言で無い程の美形なのが性質が悪い。
スッと通った鼻に引き締まった口元、アメジストの様な紫の瞳・・・それらがシンメトリーな配置で並んでいる。
無駄の無い引き締まった筋肉で構成される体からは、熱が。
そして、息のかかる距離で静止する彼の髪、後ろで結い上げた美しい黒髪の毛先がさらりと私の首にかかる。
「私は不審者じゃないので手を離してくださいます?」
あえて敬語、そして若干語尾に力を込めながら彼に言った。
その言葉に「しかたない」と彼が手の力を弱める。
まるで捨てられた子犬の様に潤んだ瞳でこちらを見ながら。
何?わたしが悪いの?
いやいや、ここで甘やかせばもっと激しいスキンシップをしてくる。
しっかり躾けなければ!!私がしっかりしなければ!!
内心闘志を燃やしながらソファーから身を起こす。
しかし、その隙を彼は見逃さなかった。
[元村ヒト様が描いて下さいました。(感謝)]
「怖い思いさせたお詫びだよ」
私の頬に自分の唇を当てながら彼はそう言った。
ちゃっかり私の肩に手を添えながら。
「っちょ!?」
やられた!! まただ!!ちょっとでも隙があったらこれだ!!
自分でも顔が真っ赤になったのが分かる。
これは悔しいから赤くなってる、絶対そう。
照れとかじゃない、絶対!!
私は、気づけばソファーを蹴り上げ飛ぶ。
跳ぶではなく、飛ぶ。
背中にある翼で飛びあがる。
そして、
「ふざけるなぁ!!」
叫びながら、彼の脳天めがけ踵落し。
今から思い返せば、育った村から攫わた日からこんな事ばっかり!!
もう!!
二人は出会いが、少女にとって幸か不幸か。
それは、少女にしか分からない。