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カチャリと何かが手元に落ちる音がした。
「お待たせ致しました」
さっきとはまた別の給仕が笑顔でこちらを見下ろしている。
見上げたあたしは凍り付く。
今度は、切り込み隊長の兄貴そっくりの男だ。
右の頬にあの傷がないから、一応は別人らしい。
「本日はご来店いただき、まことにありがとうございます」
くぐもった声まで兄貴と瓜二つの給仕は、慇懃にそう述べると、トレイからもう一つの白いカップを彼の前に置いた。
――いよいよ、明日だな。これ、お前も持つか?
昨日の晩、地下の部屋での打ち合わせが終わって他の連中が帰ると、兄貴はあたしの前に小さな黒い塊を放った。
「こちら、産地より直輸入しましたセカンドフラッシュでございます」
白い陶器のポットを手にした給仕が誇らしげに述べる。
――昨日、あっちから仕入れたハジキさ。
黒い塊を取り上げ、細く吊り上がった目であたしを見据えると、兄貴は口の端だけで笑った。
ヨモギ汁でも塗ったみたいに紫っぽい色をした、薄い唇の隙間から、尖った白い八重歯が顔を出す。
兄貴が裏で仲間からも「烏鴉」と呼ばれているのは、
一つにはこの面構えのせいだ。