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3、手詰まり

彼は私を含めた社員3名を束ねる探偵事務所の所長だ。稼ぎはぼちぼち。

私がいるのだからもう少し稼ぎがあってもいいと思うのだがなんにせよ会社の規模と知名度が小さくて無いものだから、ランクで言うなら知る人ぞ知る名探偵止まり。まぁ、私がこれから大きくしていくのだから逆に小さくてありがたい、いつだってサクセスストーリーには障害が付きものだ。

それでも、知る人知る状態でも稼ぎがぼちぼちあるのには理由がある。例年益々犯罪が増加の傾向が強くなったこともあり、警察が足りない人員を補給するかのように探偵事務所へ依頼を持ち込むようになったからである。例によりその法令を「探偵契約条例」という。この法令により資格を持つ探偵にはある種の特権と権利が与えられる。3つの特権と3つの義務がこの法令の定める探偵の定義だ。抱き合わせて課せられる義務は厄介ではあるがあくまで私達探偵は警察に御せられる立場である。文句を言う資格はない。なによりも探偵よりも不自由な本職の人たちに失礼だろう。


そして、突然ポケットでルパンのテーマ歌いだす携帯電話を手にとって確認する。

リスペクト銭形警部だ。友達からのメールだった。文面は「あんたのこと占ったら今日は最悪に運勢が悪い、大人しく物忌みしてな。学校も休んどけ。by 戸部」


戸部の占いは良く当たる。当たり障りの無いことを告げる占い師とは違い的確に良い運勢に導いてくれる正真正銘の占い師だ。興に乗ると占ってくれる、代金は私達の熱き友情。彼女が大人しくしておけと釘を刺すのは珍しいことで、前に一度言われた時はぬきぬちの数学小テストが行われた。その程度と言われそうだが私は数学が大嫌いで単位を落とすか落とさないかの瀬戸際を彷徨ってるところを万全の状態で望んだ小テストのおかげで単位を落とさずに済んだ。すなわち、めぐりめぐって私を大いなる脅威から救ってくれたことになるのである。戸部様ヶ!!彼女なしでは生きられない、軽く依存症だ。占い師の稼ぎ方サイクルの中に取り込まれていることに薄々感づいてはいるがやめられない止まらない。

彼女とは今後ともいい関係を維持したいものだ。


なんて、考えているうちに彼がこっちにUターンして来た。私のストーカーではなく追跡がばれるわけが無いのできっと家に忘れ物でもしたんだろう。忘れん坊さんだなぁ信二きゅんは・・・。彼はカツカツと靴音を立てながらこちらに戻ってくる、靴音の間隔はだんだんと狭まる、徐々にスピードが上がっているようだ。そして今私の真横を・・・横切らない?

彼は私の前で歩を止めた。背後に負のオーラを感じる、間違いない彼が私の背後に立っている。

ありえないことだがばれてしまったようだ、探偵服を着た私に不可能はないというのに追跡に気づく彼は化け物だろうか?昔おじいちゃんがいっていた通りにしてたんだけどな。

紛れ込む人ごみがなくとも側の電柱に隠れておけば大丈夫っておじいちゃんに習ったんだけど、なんかだめだったよおじいちゃん。


でも、大丈夫。彼は優しい、なんだかんだいいながら私のこと軽くしばいたら許してくれるし、ボケたらツッコンでくれるし・・・割とノリのいいおじさんなのだ。

だから、私の後ろに立つな、とか凄んだら空気を読んで見逃してくれるはずだ、たぶん!!


「わたしの後「なにやってんだ、おまえ?」」


ひどい!!初めて声を出したのに被せてくるなんて、なんて鬼畜!!

でも、そこがいい!!

恐る恐る後ろを振り返るとそこには般若が居た。

あれれ~おかしいぞ~?すごいお怒りなのかな?

では、先手必勝!!


「あっおはよーございます、信二さん。き、奇遇ですねこんなところで出会うなんて・・・」


からの、


「では、お先に・・・」


先手必勝というかただ誤魔化しただけだ。

だがしかし、無事何事も無く彼の横をするりと通り抜けることに成功した。

決まった、自然に切り抜けた。優雅でスマートにその場を去った・・・

と思いきや・・・


「いや、待て。お前に渡したいものがある」


彼は私の肩を乱暴に掴んだ。彼の手は私を逃がさまいと力強く私の肩を掴んで離さない。

えっもしかして結婚指輪?もう、それならそうといってくれればいいのに!でも急に結婚なんて急すぎるゾ?期待を胸にしながら彼のほうへ振り返る、と

「ガチャガッキン」

というまるで頑丈な金属が擦れ合って嵌めあうような音がした。

指というより手首をがっちり固定するような大きさの鉄環・・・これはもしかすると

手錠?


「おまえを現行犯で逮捕する」


「え~~!!!!」

嵌められたああ、騙された!!

手錠を嵌められたってそんなうまくねぇよ!!

乙女の純情を踏みにじられた!!!


「え~じゃねぇよ、逮捕だ逮捕。」


「じゃあ、なん・・・だと!?」


「いつから私が・・・ってのるかよ」

普通にノッてくれた彼だった。

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