2、不運な朝
この回はとてもグロイので、ムリな人は読まないほうがいいです!!
そこんところよろしくお願いします!!
私は名探偵柏木 王木。誰もが知っているわけではないが知っている人は知っている平成と言う混沌の世に出でた名・探・偵である。そう・・・・・・名・探・偵である!
大切なことだから二回言わせた貰った。よく私のことを名探偵じゃなく迷探偵だなど呼ぶ輩がいるから尚の事二回言っておかなくてはいけない。
して、私は名探偵でありながら女子高校生でもある。神橋高等学校2ー2に在籍だから、正しくは名女子高校生探偵なのだがゴロが悪いので省略しているのだ。高校生の身でありながら名探偵だなんて・・・私かっこよすぎじゃないか!
自分の才能が恐ろしいとはこのことだ、そのうち私の自伝が小説になるかもしれないな。
なったらなったで重版に重版を重ねその年のベストセラーになり、当然のことながら映画化決定でそれも大ヒット!!
サイン・握手会やら講演会で大忙し「うっへっへ」笑いが止まらない。
それともうひとつ大事なことを忘れていた。私の容姿のことだ。
自分自身で言うのもあれだが私は美少女だ。少しばかり高身長な気があるがそれを除けばパーフェクトだと自負している。
髪型は腰まで届くストレートの髪をポニーテイルにしているキリッとした顔にベストマッチだ。
足も長くよくモデル体形だと他人から言われたことはないが自分では大いにそう思っている。胸も人前以上にあるしくびれもきゅっと締まっているから将来探偵と兼業してモデルもするかもしれない、いや待てよ・・・自伝が映画化する際に私の役を私がやるというのはどうだろう。それはもう神がかったできになるだろうな、自伝の完成を急がねば。
まぁ、簡単な自己紹介が終わったところで本題に移ろう。
私は今ある男をスト・・・追跡している。
彼は私が所属している探偵事務所の上司で2年前から私と共に難事件を解決へと導いた名脇役だ。
見た目は無精ひげを生やしたいかついおっさんだが的確なアドバイスとツッコミは目を見張るものがある。
私への暴言が玉に瑕だが・・・そこはよしとしておこう。
すると、彼が彼が一瞬立ち止まりこちらを向いた、が気づかれてはいないだろう。尾行術は得意中の得意だ、なんせ年中彼をスト・・・追跡しているわけだから。
彼はいつも通り朝会社に通勤している、遅刻ぎりぎりにもかかわらず急ぐそぶりも見せずだらだらとしているのもいつも通りだ。
きっと、二日酔いして起きれなかったのだろう昨日あれだけ酒を飲めば二日酔いにならないほうがおかしい。一応今に至るまでも経緯を推測すると、彼は目覚まし時計を反射的にとめた後2度寝にスムーズに入り1時間ぐっすり寝た後、寝ぼけた頭でケータイを見たら遅刻ぎりぎりじゃないか!と跳ね起きあたふたと通勤の準備をしているうちになんかもう遅刻してもいいやと開き直ってだらだらと不貞不貞しく家を出てわざともっと遅れようと歩幅を小さくしたりゆっくり歩いたり小学生並みのことを平然としながら遅刻した言い訳を必死に考えているといったところだろう。
私ほどの探偵になると人が考えていることもわかってしまうのだ。別に彼だからとかでは決して無い。
しかし、私の語りだけではわかりにくいだろうからここでつまらない情景描写でも挟むとしよう、まず私がどこにいるかというと天下の桜田門の目の前、ランニングの名所と知られる皇居の歩道である。肌寒い季節を終え、暖かい日差しがほどよく周りを活性化させている今日この頃、それはまさに春の到来を告げていた。春は始まりの季節らしく動植物然りアスファルトで舗装された道路までも光り輝かせる。
言っておくがここで単に日光が照り返しているだけでは?などと無粋なことを言ってはいけないし考えてもいけない。ようは気分の問題なのだ、察して欲しい。
皇居周辺を走る女性の数が増えたのもその影響だろう、おしゃれなスポーツウェアを着た女性の群れが幾度も横を通り過ぎる。
私も欲しいなぁなんて思うが、考えてみたら走る理由が無いから買っても無駄になるだけだと思い当たる、まったく美人は損で困る。それにしてもいつの間にあんなおしゃれなスポーツウェアができたのだろう、最近やっとヒートテックの存在を知った私としては時代に置いてきぼりにされているような気分になる。・・・・・・お分かりのように私は流行には乏しい、友人の口から聞く肉食系女子だの盛りガールだか森ガールの単語を聞いただけで頭がくらくらする。
人間は雑食だ、肉食動物には決してなれない、ビタミン不足で鳥目になるぞとか思うし、森ガールにいたってはエルフとかそういう感じ?とか思った。
だが仕方が無い、探偵とは時代に取り残される者なのだ。おしゃれな探偵なんて箔がつかない、探偵は黙ってパイプ煙草に古臭いマントを羽織るのだ。
ついでに彼と私の距離関係について語っておこう、彼は私の10m先を歩いていて私は近くにあった電柱に身を隠している。
電柱に隠れきれていないが気配を隠せればいいのでよしとする。
あらためて言っておくが決して私は誇大妄想にとらわれた犯罪者とは違う、私は彼を見守っているのであって別に彼と彼とどうこうなりたいわけではないのだ。これは愛、生き辛い世の中を必死に生きていこうとする彼を助けたいという立派な愛なのだ。
彼がどうしてもと言うのならそれはもうやぶさかではないのだけど。