第1話 なんか似てる
『ナツ、美味しい?』
『ワン!』
『それなら良かった』
目が覚めた。
カーテンから朝日が差し込み、頬には涙の跡があった。
最近よく昔の夢を見る。
「行ってきます」
誰もいない家に挨拶をして家を出た。今日は入学式だ。
中学の3年間は一度もクラスに馴染めず、友達も1人も出来なかった。両親がそんな俺を心配して遠い田舎の高校に進学させてくれた。それだけでなく、俺の為にマンションの部屋を1つ貸してくれた。家賃などは両親が払ってくれている。わかる通り自慢じゃないが俺の家はかなり金持ちだ。まあそのおかげで休日も働きに行くから両親と関わることはあまり無かったのだが。
教室のドアを開けるといろんな人がいた。
俺の学校は多様性に特化していて、ジェンダーの人などが生活しやすい学校だ。
リボンとネクタイ、スカートとズボンは選べて、理由があれば男子ですらスカートを履くことができた。
「じゃあ自己紹介からするぞー」
担任の言葉で自己紹介が始まった。
「佐倉 悠琉です。よろしくお願いします」
(苗字がいい感じのところで良かった)
普通に終わるのを待っていた。でも、どうしても目が離せない人がいた。
「柚木 藍です!よろしくお願いします!」
(可愛い)
見本の様な犬系男子。ふわふわしてて、明るくて、目がキラキラしてて。可愛かった。
休み時間、柚木の周りに何人か集まっていた。俺は話しかけられず、聞き耳を立てていた。
「なぁ俺バイなんだけど、柚木は?男にも興味ある?」
「僕?うーん男の子に興味あるんじゃなくてー、でも女の子にも興味無いしー、僕が興味あるのはー…あ!悠琉くん!」
「えっ?な、なに?」
「悠琉くんもおいでよ!」
「俺も?」
「なぁ佐倉は男にも興味ある?」
「あ…」
怖かった。
中学の頃みたいに引かれるんじゃないか。変な目で見られるんじゃないか。
でも、今は違った。
「あ、えっと…俺ゲイなんだよね」
「マジ!?良かったわー同じ人いて!まあ俺はバイだけどな!」
「あ、うん」
「そんな硬くなるなってぇー。ここには俺達みたいな人がいっぱいいるから心配することないぞ」
「だよな。ありがとう」
「ただいま」
また誰もいない家に挨拶をした。
柚木の顔が頭に浮かんだ。
「ナツに似てたなぁ」
ナツ。俺が中学のとき、コンビニの横の細い道で見つけた子犬。その時、隣に藍色の花が咲いていて、調べたらデルフィニウムという花だった。その花が咲く時期が初夏だったから『ナツ』と名付けた。
俺はいつもコンビニで肉まんとチョコスティックパンを買ってナツのところへ行っていた。ナツは肉まんの生地が好きで、あげるとよく食べていた。
「また会いたいな。ナツ」
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「神様ありがとう!僕もう一度悠琉に会えました!」
藍の正体はナツ。悠琉が田舎に行ってから食べるものが無くなり普通に死んだ。でも、もう一度だけ悠琉に会いたくて、神様に頼んだ。すると条件付きでナツを人間の姿にして悠琉に出会わせてくれた。
条件1【人に直接触れてはならない】
布など無い状態で人に触れるとその場で消えます。
条件2【悠琉に正体がバレてはならない】
バレたら消えます。
条件3【期限は3ヶ月まで】
3ヶ月目の日付が変わる丁度になると問答無用で消えます。
これらの条件にOKしてナツは人間となって悠琉の元へ来た。
さて、悠琉にバレず3ヶ月過ごすことが出来るのか!




