第4話 有能な美人史書官、ヒルダ=ニーベルンゲンとの再会
アーサー達が通う、国立の学校「ヴァルハラ帝国貴族学園」
帝国首都ヴァルハラの外れにあり、広大な敷地と充実した設備を誇るその名の通り「帝国貴族の子息が通う為」に設立された学び舎
当然ながらその学園には、帝国貴族しか入学を許されてない
創立以来の不文律として守られてきた伝統を破り、平民でありながら入学が許された者は後にも先にも、例のリリスとの婚約破棄の場に乱入してきたアドルのみだ
アドルは俺やランスロットを含めた取り巻き全員を相手にした決闘において、たった一人で完勝して見せ、その報酬として要求したのが
「常にリリスの傍で、その身を守れる事」
その心意気に感銘を受けたミョルニル侯爵が、俺達との決闘で勝利した事を盾に、陛下を動かし特別枠として学園へと入学させたのだ
アドルは宣言した通りリリスの盾となり、その身を守ると共に心の支えにもなっていった・・・
って、まぁその事は今は良い。決闘を断った事で、奴に決闘で無様に負ける未来も無くなったはずだ。今気に病む必要も無いだろう
俺は休日の朝に学園の寮から出ると、玄関の前には皇族専用の馬車が横付けされていた
「アーサー様、陛下の勅命によりお迎えに参りました」
「ヒルダ・・・その・・・久しぶりだな、元気にしていたか?」
「は?あ、いえ・・はい、日々政務に努めておりますが?いえ、つい3日前にも今月分の交際費をお渡しするのにお会いしましたが?」
(しまった!つい1周目の事と混同してしまった)
「アハハハハ・・・そ、そうだったな、少し寝起きでボケてるのかもな」
「!?それは気づかず申し訳ございません、寝台用の馬車を用意出来ず・・・わが身の不明を許し下さい」
茶色いセミロングの髪の毛を垂らし俺に深々と頭を下げるヒルダ=ニーベルンゲン。
ヒルダはニーベルンゲン伯爵家の次女で、年齢は21歳と俺より2つ年上、昨年学園を主席で卒業しその実力を買われ帝国の政務官へと大抜擢された。
小柄だけど、出るところは出ており女性らしい体つきの女性だ、穏やかな木々を連想させる茶髪のセミロングに黄金に輝く瞳、透き通る様な白い肌、通った鼻筋、リリスやグネビーとは違い薄化粧だが、それがまた彼女の美しさをより引き立てている・・・グネビーに入れ込んでていた1周目の俺は、ヒルダ自身に全く興味が無く気づかなかったがな・・・
そんな彼女は帝国の政務に携わる史書官という立場だが、父である皇帝陛下から直接任命され俺の世話係という名のお目付け役という役割を担っている・・・そのおかげで1周目ではよく小言を言われたものだ
『アーサー様!!ミョルニル様と婚約破棄したとは言え、仮にも侯爵令嬢に対し、それはあまりにもご無体です!』
『アーサー様、グネビー様には何か裏があるように思います、もう少しあの方の背後関係を・・・あっ、お待ちください!!アーサー様!!」
『ルト王国は非常に危険です、あの国は先代皇后様の死の責任が我が国と陛下にあると信じ込んでいます、軽々に同盟等・・・』
『・・・・畏まりました・・・アーサー様のご命令とあれば・・・短い間ではございましたがお世話になりました、とうとう最後まで、あの日の御恩を・・いえ、何でもございません。では、これにてヒルダ=ニーベルンゲンお暇頂きます、アーサー様もご自愛くださいますよう』
あぁヒルダは、俺に正しい選択を示してくれていたんだな・・・愚かだった俺はヒルダの言葉に耳を傾けず、それどころかそんな彼女を疎ましく感じ遠ざけてしまった
本当に愚かな皇子だった…馬鹿皇子と呼ばれても仕方ないな、だが
今度は間違えない!最善の選択を掴み取ってみせる!!
「アーサー様?いかがなさいました?」
馬車のドアを開いたまま、俺の事を待っているヒルダが首を傾げながら俺の方を不思議そうに見つめた
「あ、あぁ・・・すまない」
俺が馬車に乗り込むまで、頭を下げ礼をして見届けると、、ヒルダも乗り込み馬車の扉を閉め、馬車の外の御者(馬を操る人)に目配せして合図するとゆっくりと馬車は発進した
馬車で楽園城へと向かう途上でヒルダから本日の予定を説明された・・・陛下との謁見の前に皇子としての仕事をこなさないといけないらしい
孤児院への寄付の署名、騎士団の軍事演習の参加、文官達の政務会議への出席、商人ギルドからの新規取引品申請の許可
1周目の時は煩わしくて、全てヒルダに丸投げして自室で体調不良と偽り雲隠れしていた
「?アーサー様?何か問題でも?もしかしてスケジュールを詰め込み過ぎましたか!?申し訳ございません!!では、軍事演習と商人ギルドの案件は私が・・・」
「いや、俺の仕事だ、俺がやるのが筋だ」
「!?ア、アーサー様!?一体・・・いえ、畏まりました、孤児院の署名は期限の差し迫った物だけを選りすぐり、軍事演習に関しては時間を考慮します」
ヒルダは直ぐにメモへと書き連ね俺のスケジュールを整理していく・・・本当に有能な史書官だ、それに俺の身体の事も気遣ってくれてる
俺は、メモに集中しているヒルダから目をそらし、馬車の窓から近づいてくる楽園城を見上げる
(さぁ・・・陛下から何と言われるか・・・ここも大きな選択となるかも知れないな)




