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暴虐皇子のやり直し「同じ失敗は繰り返しません!」  作者: nayaminotake
第一章 暴虐皇子のやり直し開始

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第35話 暴虐皇子と悪役令嬢のお忍び

―――それから1週間が過ぎ、懸念していた俺への刺客は姿を見せることはなかった。


そして――――


「では、アーサー様、我々は一度ヴァルハラ城へ戻り、宰相ザッハ様へと報告し今後のご指示を仰いで参ります。」


週末の朝、ヒルダと護衛の兵三名は、今回の一件とこの一週間の状況について城に報告書を上げに戻る事になった。


「あぁ、この1週間の身辺警護ご苦労、ザッハには俺が感謝していたと伝えておいてくれ」


「はっ!」


―――兵士たちはそれぞれの馬に自分達の荷物を乗せ帰る準備を始めたが、ヒルダだけが俺の元へとやって来て


「アーサー様、何度も申し上げますが、この週末は――――」


「あぁ、わかっている不要な外出は控え極力寮の中で過ごすように…だろ?」


「ご理解いただけてるのであれば結構です。」


「俺も、子供ではないそのくらい、自重する」


しかし、ヒルダはまだ何か言いたそうにしながら、モジモジして俺の前から離れようとしない


「ん?どうした?まだ何か言いたい事があるのか?遠慮するな申してみよ」


「は、はい…これは、その―――私個人からの質問ですが、その…アーサー様はミョルニル侯爵嬢と、その…」


ヒルダは顔を赤くして、目を泳がせながら要領を得ない質問をしてくる


「?リリスがなんだ?」


「そ、そう、何故…その…急に、ミョルニル侯爵嬢をまたファーストネームでお呼びになられているのか…と、その気になりまして――――」


「あぁ、実は先週末にリリスと話をする機会があってな、お互い色々あったが、せめて名前くらいは前の通り呼び合おうって話になったのだ。で?それがどうかしたのか?」


「い、いえ!そ、それでしたら、その、大丈夫ですので!」


そうヒルダは顔を真っ赤にして両手を振った


「そうか?まぁヒルダお前もご苦労だったな、まさかお前が学園で戦乙女とか御大層な異名で呼ばれてるとはな…クククク」


「そ、それはもう、お忘れ下さい!!」


いつも俺に小言を言ってくるヒルダをこうしてたまに揶揄うのは、実に楽しい。


「(もっと可愛らしい異名だったら…)」


「ん?何か言ったか?」


「いえ!何でも御座いません!!では、くれぐれもご自重いただきますように!!では!」


俺に向けて丁寧に頭を下げると、ヒルダも自分の馬にまたがり他の兵士を追うように学園を後にした


(さぁて、それじゃ俺も準備するか……)


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・・・・・


〇学園最寄りの乗り合い馬車停留所付近


この日は休日という事もあり、中位貴族の生徒たちが帝都の貴族街にある自身の家の別宅へと帰省する為に、停留所は混み合っていた。


そんな生徒らを少し離れた場所にある木にもたれ掛かり見つめる、麻地のフードを深く被った男……


大勢の生徒が貴族街行きの乗り合い馬車へと搭乗していく中、フードの男はその場を動こうとしなかった。


――――貴族街行きの乗り合い馬車を3本ほどスルーし、フードの男は誰もいなくなった停留所へと並んだ


「はぁはぁはぁ……」


そのフードの男の元へ息を切らし駆けつけた、薄桃色の同じ麻地のフードを深く被った女性…

手を両膝につき肩で息をしながら呼吸を整えている


「まだ時間には余裕がある、そのように慌てなくてもよいぞ」


「はぁはぁはぁ……しかし、アーサー様をお待たせする訳には――――」


「リリ!、ここからは、俺の事はアースと呼ぶように言っておいただろ?それでお前はリリだ。」


薄桃色のフードの女性は「しまった!」と言わんばかりに口元を押さえる


「申し訳ございませんアース様、気を付けます」


「それもだ、敬称も敬語も不要だ、これから俺達は一般市民のアースとリリだからな」


「は、はい!あっ、う、うん…わかったわ、アース」


「それでいい……あっ来たみたいだぞリリ」


男が指差した方を見ると、先ほどの貴族たちが乗って行った馬車とは違い馬車というよりも、荷車……


「私、屋根のついてない馬車には初めて乗るわ」


女はフードから覗く深紅の瞳を輝かせながら、みすぼらしい荷車をみつめていた


「フフフだろ?少しお尻が痛くなるが、景色を楽しむなら断然こっちがおすすめだ」


小さな馬1頭に引かれた荷車は、フードの男と女の前でUターンすると不愛想な御者がジロっと睨みつけ


「ちっ――たった二人かよ、しけてんな…… 一人銅貨2枚だ」


舌打ちし乱暴に二人に向けて手を差しだす


「ア、アース……そ、その私銅貨を持って来てなくて、白金貨しか……」


「はぁ――――リリ、お前な――――、まぁいい、それも勉強だ、ここは俺が出しといてやる」


男は布袋に手を突っ込み、銅貨4枚を取りだし御者の男に手渡す


「これで2人分だ」


御者の男は手のひらの銅貨を数えると、乱暴にズボンのポケットにしまい、首を動かし2人に「乗れ」と合図した。

男が先にピョーンと荷車の後に飛び乗ると、手を女性に向け差し出す

女性は男の手を恥ずかしそうに、おずおずと握ると男が力いっぱい引き寄せ荷台の上に引き上げ、女がバランスを崩し男の胸にもたれかかる


「あ、あの……ありがと」


「ちっ……ガキが色気付きやがって、おい行くぞ早く座れ!」


「さぁリリこっちだ」


敷き詰められた藁に、小汚い布が無造作に被せられただけの簡易的な座席に腰を下ろす二人


動きだした荷馬車は、その速度もゆっくりで、いつも二人の乗っている2頭引きの馬車とは雲泥の差であった。

が、それが二人には新鮮であり穏やかに流れる景色を楽しみながらクッションの悪い荷車に揺られ市街地方面に向かった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・・


〇ヴァルハラ帝都、市街地


「大丈夫か?リリ」


「は、はい…すこしはしゃいでしまったみたい……」


どうやらリリは、荷馬車の上に揺られながら、日頃見慣れない屋根なしでの景色が新鮮でキョロキョロしすぎたらしく、車酔いしてしまったようだ。


「まぁ俺も最初に乗った時はそうだったからな」


「うっ…情けないかぎりで…」


「おい、言葉使い戻ってるぞ」


「申し訳…いえ、気を付けるわアース…ところでここは?」


リリを休憩させるために連れて来たのは、市街地の中央市場近くにある広場のベンチだ。

大勢の人がせわしなく往来しているのをハンカチで口元を覆いながら、ぼーっと見つめるリリ


「あぁここは市場といって、国内や海外からの様々な食材や商品を扱う商人ギルド運営の商業施設だ」


「まぁ!ここが」


「リリが大丈夫そうなら少し案内してやるよ」


「えぇもう平気よ、行きましょう」


ベンチに腰掛けていたリリに、手を差し出し立ち上がらせると、二人は人込みで溢れる市場通りに向かって歩き出した。




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