第31話 転生チートモブ英雄の、暴虐皇子暗殺作戦
●アドルside
おかしい、おかしい、おかしい!、何でゲームとシナリオが違うんだ!?
リリスに婚約破棄を突き付けた、馬鹿皇子とリリスの名誉をかけて俺が戦い、奴の取り巻きのイケメン共をまとめてボコボコにして地面に這いつくばらせるストーリーなのに。
馬鹿皇子が挑発にのって来ない・・・会場から立ち去って行く奴の金髪に唾を吐いてやりたい!
「不敬罪だ!捕らえろ!!」
「!?まずい」
呆然とする俺の周りを、警備兵が取り囲み槍の穂先をこちらに向ける
「ちっ!」
間合いを確認しながら、戸惑った表情で馬鹿皇子の消えた階段の方を凝視するリリス
(クソッ!あの青いドレスの下の染みひとつない果実が、俺の唾液と愛撫でピンクに染まるはずだったのにぃぃ!クソが!!)
警備兵の一人が突き出した槍を右手で掴むと、腕に力を籠め槍ごと警備兵を振り上げ壁に向かって放りなげる
「うぉっ!この力、チート能力は健在だ!」
左胸の心臓付近に意識を集中すると、じわりと熱くなるのを感じた…
「これが、聖王の聖刻の力…いいねぇ―――っ!」
右の拳を強く握り、真横に思いっきり振り払うと、警備兵たちが数名、風圧で弾き飛ばされる
目の前に出来た逃げ道を、疾風のような速さで駆け抜けそのまま一気に学園の外へと逃げ出した
―――はぁはぁはぁはぁ
周囲の景色が視認できないくらいの速さで駆け抜け、馬車でも2時間はかかるであろう外壁街道を走り切り、ヴァルハラ城の市街地裏通りへと逃げて来た
倉庫と思われる建物のカギを強引に壊し、中にかくれ息を潜める
「しかし、さっきの馬鹿皇子の反応・・・どういうことだ?奴は俺の噛ませ犬の顔だけの馬鹿皇子のはずだ・・・それなのに俺の知ってるシナリオが始まらない」
「このままじゃ、リリスの親父に気に入られて、リリスの護衛と称し学園に通うってルートに行けねぇじゃねぇか・・・それにあのヤリマン女・・・確かグネビーだったか?原作では主人公らしいけど、このゲーム内じゃ誰とでも寝る、クソビッチ扱いだ、俺も何度か画像を買ったしな」
「たしか婚約破棄の時点では、馬鹿皇子をその性技で虜にしてるはずなのになんで、馬鹿皇子に袖にされてる?ありえねぇ・・」
バギッ!
片手を軽く押し当てるだけで木箱が粉々に砕け、中にはいっていた果物が周囲に散乱する
「クク・・・だが、この化物級の能力は健在だ、このチートパワーがありゃ幾らでも逆転出来る!」
俺は床に散乱した果物を服の袖で拭き取ると、ムシャリとひと嚙みした…
!?
「あぁ―――、良い事思いついたぜ、このタイミングで馬鹿皇子を殺して、奴の従弟のぉ・・・なんて言ったかラン…ラン…あぁ―思い出せねぇ、そのランなんちゃらとクソビッチをくっ付けて、皇帝にランなんちゃらを養子にさせればいいんじゃねぇか?」
「あぁ思い出してきたぜ、たしか馬鹿皇子の最後のシーンでランなんちゃらが盛大に裏切るんだよな、しかもクソビッチを寝取りましたぁ――って、報告のおまけつきで、キャハハハあれは痛快だったぜぇ、マジ「ザマァ」シーンだった!」
「あぁ、いかんいかん、つい興奮しちまった。確かあいつ馬鹿皇子への捨て台詞で「お前の敵討ちという大義名分」とか「俺がこの国を貰ってやる」とか言ってたよな」
「どのみち奴にとっては、崩壊した帝国を乗っ取るか、今乗っ取るかの違いってだけだ、つまり馬鹿皇子がくたばれば、ランなんちゃらの所に皇位が転がり込む流れは確実、そこにあのクソビッチが悪女ムーブして帝国をかき乱してくれりゃ…」
「まだ、俺の英雄ハーレムルートは実現出来る!我ながら頭いいぜ」
果物を噛りながら薄暗い倉庫の中で作戦を練る・・・まず、あの馬鹿皇子を殺す作戦だ
今の俺なら直接、馬鹿皇子を殺すのは容易いだろう・・・が、
あの馬鹿皇子がヘイトを最大級に集めてない状態で奴を殺しては、おれは単なる国賊、犯罪者になってしまう。
俺の目指すところの、ゲームと同じ聖王、英雄にそんな汚点は残せない。
英雄ルートで、この世界の美女たちを大勢はべらして、ヤリたい放題のハーレムを作るのが俺の最終目標
転生前には画面ごしの静止画とアテレコの音声だけであれだけ興奮したんだ、現物だったらどんな気持ちいいんだ?想像しただけでイチモツが滾る。
それに今の俺は超絶美形…と、までいかなくても、この世界でもそこそこ男前といえる容姿。
以前のモブブタと呼ばれていた茂部 武太とは全くの別人…
格安のソープの四十過ぎの玄人にしか相手してもらえなかった俺とは違う
それにこの腹筋だ…バキバキに腹筋が割れた細マッチョ、これなら何もしなくても女が寄って来そうだぜ
服を捲り自分の腹筋を触ってニヤニヤしていると、外から誰かの話し声が聞こえる
【あぁ、俺も見たぜ、あれ皇室専用の馬車だろ?学園の方へ走ってったな】
【だとしたらアーサー皇太子殿下が乗ってるな、どうせまた陛下に小遣いでもせびりに来たんだろ?俺達の血税を、皇子様はいい気なもんだ――――】
男たちの話し声が遠ざかって聞こえなくなって行く…
これは好機だ、神が俺に暴虐皇子を倒せと告げてるに違いない
「この好機、逃すか!」
倉庫の前に誰もいない事を確認し、疾風の如く駆け出し舗装されてない最短ルートで学園方面の外壁街道へと先回する
「あれだ!」
俺は外壁に備え付けられた防衛用の連弩に目をつけ、外壁へと侵入した。
「クククク、ちょろいぜ・・・」
見張りはおらず入口のドアのロックを強引に引き抜くと、螺旋階段を駆け上がり外壁の上へと昇る
「おぉ!流石チート能力だ、視界も遠くまでよく見えるぜ」
外壁街道を遠距離でも視認出来るようになった目で追っていくと、馬2頭で引かれる真っ白で豪華な金の宝飾されれた馬車が1台こっちに向かって進んでくる
「あれだな…、十分間に合うな」
俺は連弩の設置されてる石造りの台座を、持てあます化物級のパワーで強引に回転させる
「うっしょ、うっしょ…ふぅ―――こんな物か…後は」
連弩の射出口を強引に街道側に向ける事に成功した俺は、連弩の照準席へと座り、超視力とターゲットスコープを駆使し馬車が照準の枠内に入るのを待つ…
「今だ!!」
ドドドドドド―――!
立て続けに放たれた巨大な鉄の矢が、白い馬車に向け6発同時に発射される
「よっしゃ!!」
矢は2頭の馬と操縦していた男、それと馬車に3発と全弾命中し馬車は街道の横に激しく横転…砂煙を上げ、見る影も無く破損した
「クク、これで馬鹿皇子はくたばったな…あとは、外から様子見だな」
超聴覚で、こちらに向かってくる足音に気付いた俺は外壁を帝国外側へと飛び降り、草木の生い茂る林の中へと着地すると、日か傾き薄暗くなるのを待って、帝都から離れた・・・
だが、この暗殺が失敗に終わった事を俺が知るのは、数日後に帝国西部の大都市ナニーワに逃げ込んだ後の事だった。




