第25話 転生チートモブ主人公に、マジ転生した男
●アドルside
俺が転生した海外の二次作品ゲーム
『乙女ゲームのモブに転生したから、婚約破棄された令嬢と親密なお付き合いを始めました! 見せちゃう♡バージョン (R18指定)』
このゲームは、昔少しだけブームになった少女漫画をベースに、某国の名も知らないゲーム会社が著作権を無視してリリースした無料の海賊版のゲームだ
最初はスマホアプリゲームとしてリリースしたのだが、当然ながら作者や出版社からゲームの差し止めを訴えられて、アプリ画面から消されてしまった。
無料の海賊版と侮っていたが、その映像クオリティは国内のどのエロゲーよりも綺麗で、素人ぽい声優のアテレコも、結構リアリティがあって、俺的には興奮出来たので満足だっただけにアプリ版がサービス終了となったのは残念でならなかった…
だが、暫くすると海外の裏サイトでPC版の有料ダウンロードゲームとしてリリースされているのを見つけ、迷う事なく購入した
スマホとは違い抜くにはPCだとかなり不便だし、なにより有料化されているのが痛い
本番をしているエロ画像を入手するには追加課金が必要で、毎回そのシーンをダウンロードする為に俺は、1万を入れていた…
工事現場で誘導灯を振る日雇いバイトで稼いだ金は全て、食費か風俗かゲームの課金へと消えて行く
光熱費や食費以外の生活費、お袋の入院費は親父の残した貯金と保険金で賄う…まぁ最近は課金が増えてバイト代だけではやりくり出来ないのでそっちにも手をつけているがな
そんなある日、俺が日雇いのバイトに出てる間に、母親が久しぶりに退院し我が家へと戻って来たらしい
荒れ果てゴミ屋敷と化した我が家を見て唖然とする母親…
病み上がりの身体をおしてゴミの片付けをする中で、見た事ないカードの山…ゲーム課金のプリカだった
母親は慌てて銀行へ行き夫の銀行口座を確認する…
ガラガラガラ――
「ん?部屋が片付いてる?お袋――居るのか――!」
俺は何も考えず、電気のついてるリビングへと足を運ぶと、病み上がりで痩せ細り、青白い顔の母親が俯いたまま神妙な顔で座っていた…
「あぁ?何だよ帰ってるなら返事くらいしろよ」
「タケちゃん、そこに座って」
いつもオドオドしてる母親では無く、病的な姿と相反しその言葉には重みがあった
「はぁ―――!ん、だよ!たく…」
不機嫌そうに頭の後ろを掻きむしりながら、お袋の前の椅子に座る
「話とか良いから飯にしようぜ、俺、腹減ってんだ」
バサッ―――
お袋がテーブルの上に紙袋をひっくり返しバラまいたのは、これまでにゲーム課金に使ったウェブマネーのプリカの山だった
「はぁ?何のつもりだ?」
「タケちゃん、正直に言って…これを買ったお金…どうしたの?」
「は、はぁ?買う?何言ってんだこんなの…そう、これは駅前で配っていたチラシだ」
バン!
お袋はか細い手でテーブルを叩く
「お母さんを馬鹿にしないで、お母さんこのカードを持ってコンビニに聞きに行ったの…そしたらゲームや音楽に課金する時に使う電子マネーだって…」
「ねぇタケちゃん、こんなに沢山のお金いったいどうしたの?」
「はぁ―――、だから俺だって働いてんだよ、実際に今も仕事から帰ってきたわけだし、ホレこの恰好見たらわかるだろ?」
俺は立ち上がり、誘導員の作業服をお袋に見せる
が、お袋は無言で銀行の通帳をテーブルの上に置いた
「!?て、てめぇ!中を見やがったのか!?」
慌てる俺に向け通帳を開き、本日の日付で記帳した残金の場所を指差した
「―――お父さんが、私達の将来の為にって必死で貯めてくれたお金、それに保険金…見てタケちゃん、残金5万も残ってないの…私が知る限りで前は2000万あったはずのお父さんの貯金…」
「は、はぁぁ!?それを言うなら、てめぇの入院費のが掛かってんだろうが!あぁ!てめぇは治療の為だからって好き勝手に使っておいて、俺がちょ――と、使ったら犯罪者扱いかよ?ふざけるな!!」
俺はテーブルの上のプリカの残骸を手で払い飛ばし、お袋を睨みつけた
「お母さんの入院費は、お父さんがかけてくれていた生命保険で全部支払ってるわよ…」
「は?」
「だから、この通帳から引かれてるのは、この家の維持費だけのはずなの…だから、タケちゃんに聞いたの、どうやってこのカードを買ったのか?って」
「て、て、てめぇ…初めからわかってて…俺の事を馬鹿にしてたのか?必死で良い訳する俺を見て嘲笑ってやがったのかぁ!?えぇぇ!!」
「違う、違うのタケちゃん、お母さんはタケちゃんに自分の間違いに気づいて欲しくて。お金はまた二人で頑張れば貯められる、でもねタケちゃん、今の様なお金の使い方をしてたら、いつか身を持ち崩すのよ、だから気付いて欲しかったの!」
「ふっ…くだらねぇ…勝手にやってろ、てめぇみたいな病弱な母親…俺の人生に不要なんだよ、とっととくたばれよ、クソババアその方が親父も喜ぶぜ?アハハハハハハ」
ブスッ―――
その時、脇腹に強い衝撃と焼けるような激しい痛み…見下ろすと包丁の柄を握り震えながら俺の脇に包丁を突き立てるお袋の姿…
「てっ、てめ…」
お袋の手に飛び散る俺の血は少し黒味が掛かった赤だ…何かで読んだな肝臓からの血は少し黒味が強いって…
薄れる意識の中、やけに冷静な自分が可笑しくて笑ってしまう
「あぁ―――俺のクソみたいな人生も、クソみたいな家族も、クソみたいな世界も、全部、全部…ぜ…ん」
!?
なんだ?ここは!?俺の家じゃねぇ…てか、あれってリリス?
気が付くと、俺の視線の先に見えたのは、長い金髪で顔が良い男に何やら罵倒されてる、リリスに瓜二つの女性の背中…周りの人達もみんな貴族様みたいな恰好をして中央で怒鳴り声をあげている金髪男の方を見ている
俺は人込みを縫う様に前に出ると、ようやく金髪男の声が聞こえて来た
「リリス=ミョルニル!貴様は、侯爵家という立場を利用し爵位の低い他の貴族に対し――――」
金髪男の怒鳴っているセリフの内容と、銀のトレーに歪んで映る自分の顔を見て俺は一瞬で理解した…
俺は『乙女ゲームのモブに転生したから・・・』の、モブだけど最強のチート能力を持つハーレム主人公、転生者アドルに、マジもんの転生をしたのだと。




