第13話 暴虐皇子と魅惑の女教師(スパイ)
ジャヒ―は、ミリアーデ男爵の出自を偽装し、この学園に教師として潜入している
元々、ミリアーデ男爵家は地方の下級貴族、ヴァルハラ帝国領でも辺境のルト王国と接する国境沿いの山奥にある小さな領土しか持たない「名ばかりの貴族」だ
他の貴族達との付き合いも薄く、何代にも渡り中央の社交界へも顔を出しておらず、その名前すら中央からは忘れ去られた、影の薄い地方の田舎貴族
田舎者のくせに女好きだった先代当主は、ネズミの様に子供をあちこちに作って回り、その子供の数は正確には分かっていないらしい
だからルト王国に送り込まれたジャヒ―がミリアーデ男爵の落胤を名乗っていても誰も疑わないのだ
しかも、彼女は非常に優秀であり貴族としての威厳も見識も兼ね備え、教職者としても非常に優秀だ、それにルト王国出身者特有の・・・
いや、今はそれはいいか・・・取りあえず彼女がルト王国の手先だと認識した上で、こちらの弱みを見せる事の無い様に行動と言動に気を付けるだけ
「さて、本日の講義は魔法基礎理論のおさらいから、魔導伝導における有効物質についてです」
ジャヒ―はこちらに背を向けると黒板に向かって魔法陣と基礎理論についての要点を書き出した・・・
「前回のおさらいです、この通り魔法には構成する元素が存在しております。火、水、風、土、光、闇の六大元素です」
(ちっ・・やはりな、ここでも神聖魔法は伏せたままか・・・)
「さて、それではこの魔法陣は何の元素魔法陣か答えてもらいましょう・・・えっと・・・では、アーサー君」
!?俺は肘から顔を上げて驚いた表情をジャヒ―に向ける
「ア、ア―サー様!?」
ちっ・・・隣でランスロットがアタフタと教科書のページをめくり答えを探している様子が見える・・・クラスの連中は俺の方へ視線を向けるがその目は蔑んだ様な視線だ
(あぁそうか、俺があの平民からの決闘を断った事で「腑抜け皇子」とか陰で呼んでるんだったな・・・ところでリリスは・・)
そう思いリリスへと視線を向けるが、俺の方を振り返る事なく教科書へと視線を落としたままだ
(とりあえず、ランスロットに借りを作るつもりはないから・・・つか2周目の俺には余裕の問題だ)
「はぁ~そんなの見たら判るだろ、その魔法陣は風の元素魔法陣だ」
俺の回答にクラスの連中は、答えられないと思っていたのか目を見開き驚いていた・・・それにしても・・・
「ただな、ジャヒ―その魔法陣は発動におけるコネクト部分の記載が間違えているぞ」
俺の指摘に今度は黒板の方へ視線を向けるクラスの連中
「フフフ・・・凄いわアーサー君よく気付いたわね」
ジャヒ―はわざと間違えた様だ・・・その笑みには悪びれた様子が微塵もなかった
妖艶な腰つきで黒板に書いた魔方陣を消しゴムで消し、正しい魔法陣の構成に書き直していく
「ちっ」
(戦略式魔法は空中にデカデカと魔法陣が出現するから、これでもかって程見てきたんだ・・・間違えたくても間違えねぇよ!)
「ア―サー様流石です!!」
横で俺の事を尊敬した眼差しで見つめるランスロットに舌打ちしながら俺は席につくと、肘をついてソッポを向く
ザワザワするクラスにもイライラするが、今はその事に腹をたてていたって仕方ない。リリスの名誉回復が最優先だ
(帰りのホームルームで皆に伝えるか・・・)
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しかし、悪い事は俺の予想を超えて発生するみたいだ・・・昼休憩、本来であれば皆、貴族学園のサロンへ食事に向かうはずが、カリンとミレーユが何やらリリスの席の前でリリスに対し何か話をしてる様だ
「ちっ・・・展開、早すぎだろ」
「?何か仰いましたか?アーサー様」
不機嫌そうにその様子を肘をついて見ていた俺に向かって、キョトンとしてそう尋ねるランスロット「さぁ食事に参りましょう」と俺の椅子に手をかけ引き下げようとするが
「!?ア、アーサー様!?」
俺は左手を立ててそれを制止し
「ランスロット、今日は食欲が無いお前一人で行ってこい」
「なっど、どこかお加減が!?す、すぐに医者を!!」
「何でもない、今朝寮の朝食を食べ過ぎただけだ、お前はさっさと昼に行って来い!これは命令だ」
「っ!?か、畏まりました・・・でも、本当にお加減がすぐれないのであれば・・・」
「だぁぁ!わかったわかった、しつこいぞ、ランスロット!」
俺が手で追い払うようにランスロットを教室から追い払うと・・・視線をリリス達に戻す
「なっ!?いない!!クソッどこに行きやがった!!」




