31話(中編)
エナに連れ出してもらい、次の持ち場『王妃たちの庭園』に来たよ!
基本、庭園は庭師たちの持ち場だけど、お茶会やパーティなどに使われている花を、庭園から摘んで、会場に飾り付けるのは、侍女の仕事だったりする。
こっちもセンスが問われるお仕事なのだ!
「助かったよ、エナ!」
「間一髪だったッスね、王子!今回もバレちゃってる感じッスか?」
「それがさぁ、バレてるのか、バレてないのか、わからないんだよね。」
「それじゃあ、アフタヌーンティーの時のお楽しみッスね!」
「エナってば、面白がってるでしょ!」
そんなやり取りをしながら、“季節ごとや、妃ごとに花を変えたり、催しによって使ってはいけない花もある”という説明を受ける。
いやー侍女って、本当に大変!
「ここが、あたしの“おすすめスポット”っス!」
エナに連れられて、四人で人が少ない場所に着く。
そういえば、エナに会ったのもこの辺だった気がする。
そこに広がるのは、紫色の系統でまとめられた花々。
「わぁ、すごい!“圧巻”ってやつだね!」
「本当に…きれいですね。」
エマも思わずといった感じでつぶやき、エリもほぅと息を漏らす。
「コムラサキにクレマチス、ラベンダーセージに、それからあたしが大好きな“ブラックダリア”!」
ニコニコと花を紹介してくれるエナの後ろから、人影が現れた。
「おっと、人が居たか……おや?エナじゃないか?」
「パーカーさん、お久しぶりッス!」
エマとエリの後ろに、スススと隠れて“どなた?”とエナに聞く。
「庭師のパーカーさんッス!この辺りの管理者でもあるッスよ!」
「エナの友達かい?ゆっくり見ていくといい……確か、待機小屋に茶菓子があったはずだ。持ってこよう。」
「ああ!パーカーさん、今はお仕事中ッスから、大丈夫ッスよ!」
悪い人じゃないみたい。
“久々に、お庭の手入れを手伝うッスよ!”とパーカーさんからホースを奪い取り、花々に水をまくエナ。
“雑すぎますよ、エナ”と言うエマと、“私の方がうまくやれます”と言うエリが、ホースの奪い合いをしている。
侍女ズってば、すごいテンション高いなぁ。
「お菓子、ありがとうございます。パーカーさん!」
“そろそろ暑くなるから、休憩を挟みなさい”と言って、待機小屋の前でテーブルと椅子をセッティングしてもらい、お茶をいただいてる僕です。
庭仕事で大事なのは、こまめな休憩なんだって!
体力的な問題もあるけど、水分補給を忘れて日射病になる若手が多いらしい。
「礼には及ばんよ。……エナがあんなに楽しそうに笑っている。いい持ち場につけたんだろうな。」
感慨深そうにつぶやくパーカーさん。そうか、エナってここで花のスケッチしてたからパーカーさんとも知り合ったんだよね、きっと。
「以前のエナは、どんな感じだったんですか?」
僕が尋ねるとパーカーさんは少し下を俯く。
「……ここに来始めた頃は、あんまり笑わない娘だった。ボーッと花を眺めていて、花に手を伸ばしては諦めた様子で下ろしていた。」
おっ、今のエナからは、ぜんぜん想像つかないや!
「そのあと、庭番の侍女からエナの話を聞くと、王妃の好きな花を間違えて覚えて、飾り付けたり」
ん?話の雲行きがおかしいぞ?
「パーティで使ってはいけない“微量な毒性のある花”を使いかけたり、王妃が取り寄せた球根を踏み潰しかけたり……庭番での呼び名が“破壊神”だと聞いた時は、暇を出されないかと心配したもんだよ。」
「そ、そうなんですね……」
やらかしがすごいな、エナ……
「しかし、その心配も、もう不要のようだ。」
パーカーさんが眩しそうにエナを見つめる。なんだかエナのお父様代わりみたい。
お茶を飲みながら、侍女ズのホース争奪戦を眺めていると、茂みから“ガサガサ”と音がする。
椅子から立ち上がり、音の方を警戒していると、出てきたのはワイアット兄様だった。
「パーカーすまん、日陰で休まさせてくれ……」
ワイアット兄様と目が合い―――顔が輝く。わぁ、ない筈のしっぽが、ブンブン振られている気がする。
「ミオーネ!ここで出会えるなんて、オレたちは運命の糸で結ばれているのかもしれないな!共にお茶をしないか!」
「……お茶は、既にいただいたので、持ち場に戻らせてもらいますね。」
ジリジリと後ずさりをしていたら、パーカーさんに“小人族は、人間より体力の消耗が激しいだろう?もう少し休んでいきなさい”と勧められてしまった。
好意を無下にできないいいい!
あぁ、ワイアット兄様がキラキラだ……眩しすぎる、太陽にでもなるおつもり?




