27話
ある日、原稿も佳境に入った頃、
少し開けていた窓から、傘をさした“メイド”がふわりと空から入ってきた。
「邪魔をする。…久しいな、ローガン。風の便りで、目覚めたと聞いていたが、本当に目覚めていたのか。」
「…カイサル…!?何故ここに…?」
魔王サマが席から立ち上がり、“メイド”に近寄る。
えっ!待って待って!!?
銀髪緑色の瞳で、魔王サマより10cmくらい大きい“男性”!?!
中性的な顔立ちで、メイド服着てるけど、声の低さで男性だと分かる。
魔王サマだって、この前服のサイズを調べるために測った時、190cmくらいはあったのに、それよりも大きいの??!
あと、頭のツノ!なに?!
「あの、魔王サマ?その方は…?」
恐る恐る聞く僕。
汚れても良いように、執事服で原稿をしてた魔王サマと、謎のメイドさんが並んで、僕を見る。
えっ?待って?こんなの、こんなのって…
最高のネタじゃん!!職場恋愛系の話かな!?
いや、別のお屋敷で働いてる“真面目系執事×訳ありメイド”!!逆でも良いな!!
「あぁ、挨拶が遅れていたな。吾は“カイサル・ノクス”、元魔王だ。今は辺境の地にて、メイドをしている。」
「…“元”!?貴様、自身の土地はどうしたのだ!?」
魔王サマが、カイサルさんに詰め寄っていく。
…ん?今サラッと言ったけど“元魔王”って言った??
「お二人で、魔王様なんですか?」
好奇心が抑えきれないので、質問してみる。
「?…人間も、国の数だけ、王が居るであろう?それと同じことだ。」
カイサルさんが、不思議そうな顔で答えてくれる。
「えっ!魔王って、何人も居るんですか?!」
「そうだ。現在は“空席”があるから、6名の魔王がいる。」
昔の勇者とかが聞いたら、倒れちゃいそうな情報を聞いちゃったような気がする。
「…“空席”は貴様か?それとも余か?……ディアマント様はなんと言っておる?」
ものすごい真剣な顔で、カイサルさんを見つめる魔王サマ。
魔王サマの上目遣いって、貴重すぎるな。
こっそり撮っちゃお!チラッと侍女ズに、目配せする。
静かに、撮影の準備に取り掛かる侍女ズ。
というか、あの魔王サマが“様”をつけるくらいの人って、どんな人なんだろう?ついでだし、聞いちゃお!
「ディアマント様は…」
「あのー、魔王サマ達が“様”を付けるくらい、偉い方がいらっしゃるのですか?」
「…貴様が知る必要はな――」
「そうか、人間の国には、王を統べる“皇帝”が居ないのであったな。」
「…カイサル!!」
魔王サマが、いつもより饒舌に話してる。
…堅物執事×天然メイド、余裕たっぷり系メイド×ツンデレ執事
ダメだ、執事は変えよう!
この前みたく、“今度は執事設定がマイブームなんですか?”って聞かれたら、悔しいから!!
カプ設定に悩んでいる僕と、撮影準備が整った侍女ズ。
…設定を考えるのはあとだ!今は、貴重な“上目遣い魔王サマ”を撮らなきゃ!!
「…貴様は、昔から、人間に少し甘い!」
「生まれが近いからな――」
パシャッ
魔王サマが振り向く。
「撮りまーす!」
笑顔でシャッター合図をした僕。
「…撮ってから、言うな!!」
「ふむ。…吾も仕える者が違えど、“メイド”だ、手伝ってやろう。」
「……〜〜ッ貴様は本当に、人間に甘い!!」
今日イチ、魔王サマの大きな声が、お城に響いた。
「楽しいひと時であった。サラを待たせているので、これで失礼する。今度、サラの屋敷に来るがいい。」
「本当ですか!?ぜひ、お願いします!」
「では。」
そう言って指をパチンと鳴らし、シュッと居なくなるカイサルさん。
僕は、侍女ズと、撮影会で疲れてぐったりしている魔王サマに向き直り、
「よし、今の原稿が終わったら、“訳あり女装メイド×不憫系公爵”の『押し掛けメイド♂の強引給仕』に取り掛かろう!!」
「「「はい、王子!」」」
「…それは、余とカイサルか…?」
「これからも忙しくなるぞー!」
「…余の話を聞け!!」
魔王サマの声で、鳥が数羽飛んでいったのであった。
新連載の『元魔王様、親友の娘のメイドになる。』もよろしくお願いします!




