ホラー物のお約束
おじいさんのありがた~い おはなし。
その夜、小式部は自分の部屋に戻ると、何かの気配がする。しかし霊視をしても何も見えない。ふと天井を見上げると大きな網が降ってきた。
そして2人組の男が現れた。
「よし、かかったぞ。」
「これで、おれたちのものだ。」
「保昌が帰ってくる前に連れ出すぞ。」
2人は小式部に目隠しをすると縛り上げて、外に連れ出していった。
目隠しを外されると、見えたのは古い建物の中のようだった。
範永と公成がそこにいた。
「あなたたち、何するの。」
小式部が声をかけるが、反応がない。よく見ると2人の頭から白い糸が外に出ている。
「あなたたち、操られているんだね。糸って、まだ蜘蛛残ってたの?」
物音がしたのでみると、天井に大きな蜘蛛が1匹。
「子蜘蛛は5匹だけど、おっきいのがまだいたんだ。」
大蜘蛛は白い糸を吹き出すと、小式部の体をぐるぐる巻きにして、生命力を抜き取ろうと太い糸をだしてきた。
「ちょっと、範長、公成。助けなさいよ。私が死んだら付き合えないよ。」
範長と公成の目に光が戻ったようだった。2人は動き出そうとしたが、こちらにも白い糸が……。範長と公成はぐるぐる巻きにされて宙吊りになってしまった。
だんだん小式部の全身の力が抜けていく、意識がだんだんなくなりそうになる。
もう、だめなのかな。
私、死ぬのかな。
でもこんな死に方はいやだな。
保昌パパや晴明さん、博雅さん怒るだろうな。
かたき討ちはしてくれるだろうけど。
もっとライブやりたかったなぁ。
ママ泣くだろうな。
保昌パパと一緒になるまで二人きりだったし。
でもママより先に死ぬのはいやだなぁ。
ママ、メンタル弱いし、きっと病むよなぁ。
いかにせん いくべき方も おもほえず
親にさきだつ 道を知らねば
「見事!」
いきなり雷が、大蜘蛛の体を打ち抜き、 深紅の紅葉の葉が小式部に絡んでいた白い糸を消し去った。
見ると、美青年とダンディなおじ様が立っていた。
「その歌に感動したよ。天神様も感動したって。」
美青年が声をかけると、その横のダンディおじさんもにこやかに笑った。
「もしや、あなたは?」
「右馬神だよ。」
「業平様?そして天神様?えええっ」
小式部はそのまま意識を失ってしまった。
「間に合いましたね。」
「ああ、危機一髪だった。」
「ここで、式神が仕事してくれましたよ。」
「でも、『見事!』って誰の声だったんだ?」
「さて?」
保昌と晴明は、まだ気を失ったままの小式部を連れた帰ったそうな。
めでたし、めでたし。
最後に一波乱はお約束ですね。