子蜘蛛襲来3
おじいさんのありがた~い おはなし。
「公任さ~ん」
晴明と小式部が藤原公任邸につくと、やはり襲撃の跡があった。なかから定頼が飛び出してきた。
「小式部ちゃん。どうしたの?」
「公任じいさん大丈夫?」
「よくわかりましたねえ。さすが小式部ちゃん。」
「何かありましたか。」
「おっ、晴明さん。急に父がたおれましてな。」
「やはり、そうですか。それで。」
「死んだと思って、お経を唱えたら、生き返りました。」
「中に入っていいですか。」
「入るよ。」
晴明と小式部が公任が寝ている部屋に入ると、白い糸が無数に散らばっていた。
しかし、霊視しても部屋には子蜘蛛の姿はなかった。
「おじさんのお経って強力よね。」
「子蜘蛛を追い払ったようですね。」
「おお…。小式部ちゃんではないか。ここは極楽か?」
「父上、気が付きましたか。」
目を覚ました公任に、定頼が声をかけた。
「お経を読んだのはお前か?」
「はい。」
「見事じゃ。すっと体が軽くなってな。悪いものがなくなったようだ。」
「定頼おじさんのお経は教通さんや、頼宗さんも大人しくさせるのよ。」
「うむ。心がまっすぐになった証拠じゃな。」
「とりあえず、結界を張っておきましょう。」
晴明は公任の部屋に結界を張ると、残った糸を焼き払った。
「これで、安心ね。つぎ三位ちゃんのところへ行くから、おじさんもついてきて」
紫式部邸にむかうと、先に保昌がついていた。
「中の様子が変なんだが、近づけないんだ。」
「う~ん、とんでもない数の物の怪がいますね。」
「こんなにいて、びっくり。」
「お経よみますか。」
「待って」
中から娘の大弐三位がでてきた。
「三位ちゃん!」
定頼がうれしそうにしている。
「へえ、あさぼらけおじさんって 推し変したんだ。」
「そんなことありませんよ。箱推しですよ。」
「DDなんだ。」
定頼が気まずそうに、それでいて三位の方をちらちらとみている。
「それは後にして、この物の怪の数は。いったいなんなのですか。」
「見えるんですね。母が物語を書くときに降りてくるそうです。」
「言霊っていうやつね。」
「それこそ文才、父がほめるはずだ。」
「とはいっても、この中から子蜘蛛をさがすのはたいへんですね。」
「ちょっとまって、聞いてみる。」
小式部は近くにいた物の怪に話しかけた。
「おい、小式部ってそんなこともできるのか。」
「パパ、黙ってて、怖がってるみたいよ。」
「小式部さんはうちの式神とも話せますし天才ですよ。」
小式部は物の怪としばらく話すと
「うんうん。なるほど。」
「どうしたんだ。」
「わかったわ。紫さんの近くにいた物の怪さんたちが、子蜘蛛を怖がって、逃げてきているんだって。」
「子蜘蛛はいるんだ。」
「で、何体か。勇敢にたたかっている子たちもいるみたい。」
「そうか、浄化したら、その子たちまで消えてしまうわけか。」
「とりあえず、逃げ出さないように結界を張っておきましょう。」
それから、小式部たちは紫式部の部屋に向かった。
「あれ、あれってげんじさん。」
小式部が部屋に近づくと、あの「酒呑童寺」にあった「ほすとくらぶ」にいた2色の髪の毛の男が戦っている。
「あの子って、物の怪だったの?」
「あれは、守護霊ですね。紫式部さんを守っていますよ。」
「げんじさん!がんばって!」
「ん、僕はひかるだ!そのイントネーションだとおじさんになる。」
「今助けるぞ、小式部、どこを切ればいい。」
霊が見えない保昌は刀を抜いて構えている。
「げんじさん、その子蜘蛛を部屋の隅に追い込んで」
「僕一人では苦しい……。」
そのとき、突然ローラースケートを履いたバンタナをまいた7人組が飛び込んできた。
「あいつらも物の怪だったの?」
「いや、あれは邪霊ですね。ほら後ろから眼鏡をかけたお爺さんが見てますよ。」
バンタナ組は子蜘蛛を取り囲んで回りをくるくる回っている。
「パパ、あそこよ。」
保昌の刀は子蜘蛛を見事に刺し貫いた。子蜘蛛は一瞬姿を現すと溶けるように消えていった。
最後が昭和だw