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葛城山の土蜘蛛退治

おじいさんのありがた~い おはなし。

 保昌と綱は、体力が回復していない頼光を残して、葛城山に向かった。

「貞光たちは、鴨君之湯というところにむかったそうだな。」

「合流して四天王で切る。」


 そのころ貞光一行は

「いい湯だな」

「ははん♪」

「うん、赤子も喜んどる。」

 のんきに温泉に入っとったそうな。

「貞兄、どうやってこれ運ぶんだ?」

「おっきな桶にいれて、金太が担ぐ。」

「おらがか?熊に運ばせてもいいか?」

「おまえと熊で桶2つは運べるな。」

「頭のためだし、頑張るだ。」

と、金太郎と貞光が話していると、季武がぼーっと空を見つめている。

「季さん、どうしただ。」

「あれ。」

と、季武の指さす方を見ると、何かが飛んでいる。

「あれはなんだ?」

「貞兄、足が6本の蜘蛛みたいな形してるぞ。」

 目もいい野生児の金太郎が言うと、急いで弓を持って来た季武が、

「矢がない。仕方がないなぁ。」

と、横にいた赤子をつがえると、ビューンとすごい速度で発射した。

「あっ、当たった。」

「山の方へ落ちていくだ。」

「うむ、なかなかの威力であった。」

「季武、あれは何だったんだ?」

「おれの秘密兵器。おっと、これ以上は企業秘密だ。」

「貞兄、企業秘密ってなんだ?」

「よく効く温泉が、成分を秘密にするようなものだな。」

 


 さて、翌朝、貞光たちが都へ帰ろうとしているところへ、ようやく保昌と綱がやってきた。

「おっ、綱さんどうしただ。」

「保昌どのまで、温泉に入りに来ましたか?」

「いや、お前たちこの辺で何か変わったことはなかったか?」

「変わったこと?」

「おれたち逃げた蜘蛛の化け物を切りに来た。」

「蜘蛛の化け物ってなんだ?」

「おい、昨晩、季武が撃墜したやつ。」

「あれは6本足だっただ。蜘蛛は足8本だ。」

「いや、私と綱どので1本ずつ切り落としたんだ。」

「あれ、山の方に落ちて行っただ。」

ということで、昨日蜘蛛らしき物体が墜落した場所に、保昌と四天王は出かけて行った。


 道中、保昌たちが事情を説明すると、

「蜘蛛の化け物が頼光殿の体力を奪っていたのか。」

と、貞光が体力回復にいい温泉を探し始めた。

「晴明どのの話では、異界の魔物らしい。」

「姿が消えたり、飛んだりする化け物どうやって倒すんだ。」

「霊力のある刀だと切れるらしい。」

「さっきから『らしい』って、まどろっこしいな、今、秘密兵器用意するから」

と、季武はまたどこからか拾ってきた赤子の世話をうれしそうに始めた。

「秘密兵器?」

「昨日、赤子で撃墜しただ。」

「赤子で?」

「みんなびっくりしただ。秘密兵器っていうそうだ。」

「じゃあ、消える前に貞さんと金太で押さえつけて、私と綱さんで切りつけて、最後に秘密兵器でどかーんって作戦で行こう。」

 保昌が四天王に作戦を指示して、山の怪しげな洞窟に近づいて行った。


「ん、体が重い。」

「貞兄、運動不足だ。ダイエットってやつやる……確かに重いだ。」

保昌は晴明から預かってきたお札を二人にはり、綱は二人の回りを刀で切った。

「何するんだ…。体が軽くなった。」

「晴明どのの話では、目に見えない糸をはってくるらしい。」

「おれだけが、切れる!」

 綱がうれしそうに刀をふりまわしている。

「あそこだ!」

「いましたね。」

「よし!」

「行くぞ。」

 作戦通り、貞光と金太郎が駆け出したが、途中動きが鈍くなって近づけない。

「また見えない糸か。」

「綱さん、何とかして。」

 綱が二人の周囲を切って、急いで救出すると、保昌は

「先にお札で糸を焼くべきだな。」

「でもどうやって近づくんだ。」

「切る、切る、切りまくる。」

 綱が、自滅覚悟の強行突撃をしようと提案すると

「さて、おれの出番だな。」

「季武?」

「保昌どの、そのお札をこの赤子に」

「なるほど」

季武はお札を張った赤子を弓につがえると、びゅーんとすごい速度で発射した。

 ドカーン

 ものすごい音がして、蜘蛛の化け物との間にあった何かが壊れる音がした。

「いまだ!」

 貞光と金太郎が飛び出し、蜘蛛の残った6本の足を押さえつけると、保昌と綱が、同時に切りかかった。

「えぃ!」

「切る!」

 蜘蛛の化け物は動かなくなった。

「これで、おしまい。おれ都に帰ったら結婚するんだ。」

「貞兄、それふらぐっていうだ。」

 突然、死んだ蜘蛛のおなかから数十匹の子蜘蛛が出てきた。

「貞が余計なことを言うからだ。切る!」

「面倒だが、普通の矢ならいっぱいあるぞ。」

「逃がすな囲んで!」

 

 保昌と四天王はほとんどの子蜘蛛を退治したようだが、数匹逃れたものが出てしまったようだ。保昌は互いの無事を確かめると、

「蜘蛛の死体は念のため焼いておくとして、何匹逃したかだな。」

「金太、何匹だった?」

「貞兄、おらが数えたのは5匹だ。」

「その5匹がどこにいったかですね。飛んでりゃ落とせるんだが、消えたんではね。」

「見つけたら切るよ。」

というわけで、保昌と四天王はひとまず都へ帰ることにしたそうな。


赤子って何なんだろう?

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