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神使  作者: シュバル
22/22

  ~~ 百年後 ~~


 エミが仕事を終えて家に帰ろうとしている時、強風と共に八大龍王の神使である黒龍がエミの前に舞い降りた。

 「八大龍王様がお呼びだ。さあ、早く乗りなさい。」

 エミは龍がめったな事が無い限り、人を背に乗せない事を知っていたので、少し緊張しながら、その黒龍の背にまたがった。その場から八大龍王の宮殿までは、龍に乗ると数分で着く距離だった。

 そして八大龍王はエミの到着を待ちかねて、宮殿の前に立っていた。

 「ありがとうございました」

 エミは黒龍の背から下りながら礼を言い、八大龍王に近寄った。

 「お久しぶりです」

 「元気そうだな。お前に伝えたい事がある。」

 八大龍王は微笑みながら言った。

 「先ほど、ローランが天界へ戻って来たと、白山の神使が伝えに来たのだ。まだしばらくは白山の神の元にいるようだが、じきに帰って来るだろう。楽しみに待っていなさい。」

 「・・・ありがとうございます。」

 エミは八大龍王の言葉が信じられず、驚いた顔のままお礼を言い、頭をさげた。

 その後、エミは何も手につかなくなり、ずっとソワソワしながら家の前をうろうろして、空を見上げていた。

 そして少し薄暗くなり始めた頃、突然、美しい輝きを放ちながらエミの方へと龍が飛来し、ゆっくりと舞い降りた。

 エミは驚きながら、白山の神使である白龍に近寄り、頭を下げた。

 「白山の神がお呼びだ。」

 白龍は優しい目をしながら、首を背の方へ向けて、エミに乗るようにうながした。

 「はい」

 エミは返事をすると、慌てて大きな白龍の背によじ登った。そしてエミを乗せた白龍は白山を目指して、ゆっくりと舞い上がった。

 間もなく白山に着き、白龍に礼を言ってから下りたエミは、ローランの姿を見つけてかけ寄った。ローランはエミが白龍の背に乗って、白山に来たことに驚いて、その場でかたまっていた。

 「ローラン・・」

 エミは涙を浮かべながらローランの首に手をふれた。ローランもエミを優しく見つめた。

 「突然、呼び出してすまなかった。」

 白山の神の声が響いた。エミは巨大な白山の神がそばにいたことにハッと気づき、とても驚いた。そしてローランから少し離れて、白山の神に深く頭を下げた。

 「本当にありがとうございました。」

 嬉しそうな顔をしている白山の神に、エミは涙を浮かべたまま言った。

 「ローランからも話は聞いた。お前たちの存在は、私の予想をはるかに超えていた。しかし、ローランの願いを聞き入れる前に確かめておきたいのだ。」

 白山の神は真剣な面持ちで続けた。

 「ローランは龍から天人になる事を望んでおる。私はその願いを叶える事ができるのだが、エミ、お前の考えを聞かせてもらいたい。」

 エミは一瞬、頭の中が真っ白になったが、すぐに白山の神を真っすぐに見ながら答えた。

 「私はローランに龍として自由に、そして幸せに生きてほしいと思っています。天人になるという願いは取り下げて下さい。」

 白山の神はエミに少し微笑んでから、話し始めた。

 「ローラン、もしエミがお前ともっと寄り添いたいから、自分を龍に変えてほしいと言ったら、どうするのだ?」

 「絶対にやめさせます。」

 ローランはキッパリとこたえた。

 「はっはっは。私の出番はもうないようだ。暗くなってしまったから、気を付けて帰りなさい。」

 白山の神はローランとエミを見ながら穏やかに言った。

 ローランとエミは、もう一度、白山の神に頭を下げた。そしてローランはエミを背に乗せて、ゆっくりと白山から飛び去った。

 「愛・・愛か。」

 白山の神はつぶやきながら、感無量の面持ちでローランとエミを見送っていた。


 「ねえローラン、大阪の天満宮の神様の話は何だったの?」

 ローランの背に乗っているエミは、ローランにしっかりと聞こえる様に少し大きな声で話しかけた。

 「それは・・・内緒だ。」

 「えー・・」

 エミが残念そうに口をとがらせた顔を、ローランは少し振り向いて、愛おしそうに見つめた。


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