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神使  作者: シュバル
16/22

輪廻転生

 ~~ 百五十年後 ~~


 輪廻転生をしたエミは、四宮神社からは遠く離れた場所で人生がスタートした。

 「四宮神社の神様は元気にしたはるかなぁ・・。」

 ヒトミは大学の受験勉強をする手を止めて、窓の外を見ながらつぶやいた。ローランは時々、ヒトミの様子を見に、ふらりとやって来るが、ヒトミは遠い四宮神社には、なかなか行くことが出来なかった。

 「ヒトミ~」

 ヒトミの五歳年上の兄が呼びかけた。ヒトミは二階の自分の部屋から一階のリビングに下りて行った。

 「今週の土曜、関東に用事があって車で行くし、また四宮神社に連れて行ったろか?」

 「え⁉やったー!」

 ヒトミは飛び上がって喜んだ。

 「あの神社、好きやなあ。何がいいんや?」

 兄が不思議そうに言った。

 「あの神社に行くと・・、すごい癒されるねん。」

 「へー・・。土曜は朝の八時までには家を出るで。」

 「りょーかい!」

 ヒトミの兄は、四宮神社が特別な神社とは感じられず、なぜヒトミが行きたがるのかが理解できなかった。

 エミは、ヒトミと呼ばれる事に慣れて、前回の人生の名前であったリンや、天界での名前であるエミよりも、今のヒトミという名前が自分だと感じるようになっていた。

 またすぐに自分の部屋に戻ったヒトミは笑みを浮かべながらつぶやいた。

 「第一希望の大学に受かったら、毎日、四宮神社へ行けるしなぁ・・、よし、頑張ろ!」

 ヒトミは自分に言い聞かせるようにして、受験勉強に取り組み始めた。



 ~~ 半年後 ~~


 ヒトミは大学の近くの学生専用アパートで新生活を始めていた。

 第一希望の大学に受かり、四宮神社へは毎日のように行き、ローランに会えるようにはなったが、大学・家事・アルバイトなどで、慌ただしい毎日が続いていた。そしてヒトミは大学に行く前に四宮神社へ行くことが日課になっていた。ある日、めずらしく神社の入口の鳥居の上にローランがいた。そして待ち構えていたように、ヒトミに話しかけた。

 「エミ、明日お前に会いたいと言う者が、ここに来るぞ。お前がいつも朝九時ごろに、ここに来ると伝えておいた。」

 ヒトミはローランが天界の名前であるエミと呼んだ事に少し驚いた。

 「え?誰なん?」

 「明日の楽しみにとっておいた方がいい。」

 ローランは微笑みながら言うと、神社の森へと帰って行った。

 『誰やろ・・。あ!この前、春日神社の神様のお使いで来た白鹿かな?もっと話がしたいけど、早く戻らないと・・と言いながら帰らはったし。いや、八幡神社の神様かも?』

 ヒトミは心の中で様々な神や神使を思い浮かべながら大学へ向かった。


 次の日、ヒトミはいつもより少し早めにアパートを出て四宮神社へ向かった。ほとんど人がいない境内で、なぜかヒトミは落ち着かずウロウロしていた。

 「来たぞ」

 ご神木の上にいたローランが嬉しそうな声で言った。

 「え?あの人?」

 神か神使が現れると思っていたヒトミは、こちらに歩いてくる女性を驚きながら見ていた。その女性は、ローランのそばにいるヒトミを見つけると、

 「エミ~~!」

 大きな声で言いながら、ヒトミにかけ寄った。

 「えーー、アヤ?ほんまに?」

 ヒトミは、その女性の目を見て、天界で親友だったアヤだという事が、すぐにわかった。二人は笑いながら抱き合い、久々の再会を喜んだ。そして二人は神社の近くにあるカフェへ向かった。

 ヒトミの三つ年上で大学四回生のアヤエは、四宮神社から二駅離れた所に住んでいた。

 「こんなに近所やったら、今まで会ってたかもしれへんなぁ。」

 ヒトミが嬉しそうに話し始めた。

 「エミは・・、やっぱりヒトミって呼んだ方がいいわね。ややこしいから・・。私はアヤエだけど、アヤって呼ばれる事が多いから、違和感がなくて助かったわ。ヒトミは実家が関西なの?」

 アヤはヒトミの関西弁が気になっていた。

 「うん。京都やねん。標準語で話そうと思っているけど、難しいわ・・。」

 「私の大学にも京都出身の子がいて、京都弁って可愛いと思うよ。その子は男子にもモテてるし。ヒトミも可愛いからモテるでしょ?」

 アヤがにやけながら言った。

 「そんなこともないけど・・。」

 「私は今、とても優しい彼がいるのよ。」

 「そうなんや!どんな人?」

 ヒトミはワクワクした目でアヤを見た。

 「半年前、二年間付き合っていた彼氏に浮気されて、別れたの。すっごくつらくて、人生が終わったように感じたわ。でも、そんな私をずっと元気づけてくれた同級生と二カ月ほど前に付き合ったの。」

 「大変だったのね・・。」

 ヒトミが少し心配そうに言った。

 「前の彼氏の事は思い出したら、今でも腹が立つわ。別れる時、思い切り蹴り飛ばしてやった。私、高校の時はサッカー部だったのよ。」

 アヤは鼻をフンっとならして怒り口調で言った。

 「私だったら泣くだけで何も出来ないと思う・・。」

 ヒトミはアヤの言葉に驚いた。

 「ヒトミは優しすぎるのよ。すぐ相手に共感してしまうから、浮気されても、謝られたらすぐに許してしまうんじゃない?地球では、お人よしは騙されやすいのよ。ローランも心配してると思うわ。」

 アヤは笑い出した。

 「そうかも・・。それに天界で白山の神様が『地球ではネガティブな事も受け入れて、本当は全てが喜びであるという事を知っている状態で生きなさい』と言っていたの。時々その言葉を思い出すけど、すごく難しい・・。」

 ヒトミはうつむきながら言った。

 「ヒトミは天界の感覚でずっと生きているのね。私は腹が立ったら思い切り怒るし、悲しい時はどん底に落ちるまで泣きまくる。嬉しい時は人目を気にせずに叫んでいいと思うの。そんな感情を味わえる事が、地球では喜びじゃないのかな?」

 アヤの言葉に、ヒトミは目からウロコが落ちたように感じた。

 「そっか・・、悲しい事も喜びだと思わなくていいんや・・」

 「そうそう。人生が終わった時に、全てが喜びだったと思えるように、今、生きる事を楽しんだらいいと思う。それに人は死んだら終わりと思っている人が多いよね。」

 アヤは明るく話し続けた。

 「でも、終わりがあるから、今を精一杯生きられるのかな?いや・・、死が幻だとわかったら、もっと穏やかに軽やかに生きられるよね?」

 「うん、私は肉体が死んだとしても、本当の自分はあり続ける事を知っているから、死に対する恐怖心がほとんどないわ。」

 ヒトミもアヤに同調するように言った。

 「私、一ヶ月ほど前、急に天界の記憶が戻ったの。」

 アヤは驚いたような顔をしながら言った。

 「そうやったんや!」

 ヒトミも驚いてアヤを見つめた。

 「天界と地球の通路が開いたのかな?それとも地球の波動が上がったのかも?たぶん何かの力が働いた事は確かよ。それからヒトミの事を探し続けていたわ。でもヒトミを探すよりローランの事を知っている神様がいるかもしれないって思いついたの。だから有名な神社へ行っては、そこの神様にローランの事を知っているか聞いていたのよ。でも、なかなか見つからなくて・・。一昨日、家から近い四宮神社へ行ってビックリしたわ。ご神木の上にローランがいたのよ!」

 アヤは興奮しながら続けて言った。

「でもローランは、私以上に驚いていたけどね。」

 楽しそうに笑っているアヤにつられて、ヒトミも笑い出した。

「でも、会えてよかった。」

「ほんまに・・」

 二人は微笑みながら見つめあった。



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