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神使  作者: シュバル
13/22

巫女の舞

  ~~ 半年後 ~~


 母親の四十九日の法要が終わり、親戚のみんなが帰った後、リンと父親はリビングでくつろいでいた。

 「お母さんが手術をする前に言っていた話だけど‥。私を生む時に死にかけたことをきいたわ。」

 リンは急に思い出して言った。

 「あぁ・・、また同じような事になると大変だから、子供は一人と決めたんだ。お母さんは、リンに兄弟を生んでやれないことに罪悪感を持っていたよ。」

 「私は一人っ子が嫌だと思ったことはないわ。」

 リンは明るく話し続けた。

 「そして、お母さんは『人生は全てが喜びだと思う』って言っていたの。」

 父親は少しうつむいて、考え込むようにして話し始めた。

 「そんな言葉を、お父さんは一生言うことが出来ないかもしれない・・。ずっと平凡なサラリーマンだったから、贅沢はさせてやれなかったけど、定年したら退職金で海外旅行へ連れて行こう、そして畑を借りて一緒に野菜作りを楽しみたい、リンが巣立って寂しくなったら、お母さんの好きな犬種の犬を飼おう・・などと勝手に考えていた。お母さんと一緒に自分の夢も失ったようで、人生の喜びなんて考えられないな・・。」

 「お父さん・・」

 父親の本心を知ったリンは、少し言葉につまったが、明るい口調で話し始めた。

 「今度の日曜日、四宮神社でお祭りがあって、私も巫女舞に出るの。もうすぐ巫女も卒業だから、絶対に見に来てね。」

 「もちろん行くよ。」

 父親は顔を上げて、少し嬉しそうにこたえた。


 日曜日の早朝、リンは父親が起きてきた姿を見届けてから、あわただしく家を出て行った。

 父親は身支度をすませてから、ゆっくりと四宮神社へ向かった。境内のまわりには屋台も出て、多くの人々でにぎわっていた。父親は節目ごとに訪れていた神社を懐かしむように、全てのお社へ参拝した。

 舞殿の前には多くのイスが用意されていたので、父親は後ろの方のイスに座り、舞が始まるまで待つことにした。しばらくするとイスは満席になり、巫女の舞を楽しみにやって来た人たちで辺りは埋め尽くされていった。

 突然、舞が始まる合図の太鼓と笛がなり響いた。多くの巫女の中にリンを見つけた父親は、娘が神と一体化しているように感じた。

 そして優雅で美しい舞を見ているうちに、父親は自然に涙がでてきた。

 『生きていて良かった・・』

 心の中は、この思いでいっぱいになった。



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