弁財天神社
四宮神社から徒歩五分の所に大きな池があり、そのすぐ横に弁財天神社があった。弁財天神社は小さくて無人のため、榊の交換や掃除などは四宮神社の者が担当していた。そしてリンは神職に頼まれて、弁財天神社へ行くことが度々あった。
ある日、リンが弁財天神社の池に近づくと、弁財天の神使であるヘビが姿を現した。
「こんにちは」
リンは社の方へ歩いていた足を止めて言った。
「あなたを待っていたのよ。」
いつも友好的な神使のヘビは嬉しそうに、リンを見ながら言った。
「ローランと話がしたいの。あいさつをしても、私をチラッと見るだけで、すぐどこかへ行ってしまうのよ。あなたから、私が話をしたいと言っていたことを伝えてくれない?」
「ローランに何か用事があるのでしょうか?」
リンは少し驚きながら言った。
「用事はないけど・・。天界からきた龍は、初めから地球にいる龍と違って威厳があるから近寄りがたいのよ・・。でも話をしてみたいなって、ずっと思っていたの。」
神使のヘビは微笑みながら言った。
「ローランは昔からクールで、ほとんどしゃべらないです。でも最近は穏やかになって話しやすくなったかも・・。」
リンは少し考えこむように言った。
「よろしく頼むわね。」
神使のヘビは、そう言うと社の方へ向かい、姿を消した。リンは社へ急いで行き、弁財天にあいさつをした。そして神職に頼まれた用事をすませ、四宮神社へ戻った。
アルバイトを終えたリンは、ローランの元へ行き、弁財天神社の神使であるヘビの話を伝えた。
「何も話すことはないぞ。」
ローランがそっけなく答えた。
「絶対にそう言うと思った! でも話しかけられたら、ちゃんと答えてね。」
リンは笑いながら言った。そしてローランは少し困った顔をしたまま何も答えなかった。
次の日、ローランが上空を飛んでいると、弁財天神社の池の真上に、神使のヘビが現れた。ローランはリンの話を思い出し、神使のヘビの前で止まった。
「こんにちは、ローラン。地球にはもう慣れたかしら?」
ヘビは嬉しそうに話しかけた。ローランは表情を変えずに、うなずいた。
「天界と地球はどちらが過ごしやすいのかしら?」
「どちらも悪くはないが・・。」
ローランの困っている様子を見ていた弁財天が二人の前に姿を現した。
「お久しぶりです。」
ローランは社よりも、ずっと大きな弁財天に軽く頭を下げながら言った。
「私もローランに話がある。」
弁財天は、ほほえみながら続けて言った。
「リンがこの神社へ使いで来るようになって、この場所が明るくなり、私も快適に過ごせるようになった。私が喜んでいる事を大国主に伝えてほしいのだ。」
「わかりました。」
ローランは穏やかな口調で言うと、すぐに四宮神社へと飛び去った。
四宮神社へ戻ったローランは、大国主に弁財天の話を伝えた。
「確かに・・。お前とリンが、この神社に来てから、私も心が軽く明るくなった。ほかの者たちも、そう感じているだろう。」
大国主は嬉しそうに言って、空を見上げた。すると大国主から、すがすがしい気があふれ出し、神社全体が包みこまれた。




