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061番  作者: ︎︎
少女から061番へ
2/8

合流

 「かっこいい...」

ボクの口からその言葉は零れ落ちた。

不思議と、その人達を怖いとは思わなかった。

それ以上に謎の安心感が体に来て、本能的に味方とさえ感じた。

マントに身を包んだ人は「大丈夫?」と声を掛けながら、檻を開けてくれた。

その言葉を掛けられた瞬間、僕は自然と涙が出てきて...泣きながらその人に抱き着いた。

フードから僅かに見えた黄色い目は、優しさを表しているようだった。

冷酷さを象徴するかのようなマントの下には、今までボクが感じた事の無い[人の温もり]があった。

その人は両膝を地面につき、より温もりを感じ取れるよう体全体でハグしてくれた。

体が、それ以上に心が、温かくなって行った。



──────────────────────



目を開けると、ボクは背中で抱えられていた。

(あのまま寝ちゃってたんだ...)

さっきボクが抱き着いたであろう人は、マントを抜いでボクに掛けようとしてくれていた。

「任務中にマントを脱ぐのは組織の規約違反じゃなかったっけ〜?」

ボクを背中で抱えてる人が意地悪そうに言う。声で気付いたけどこっちの人は女の人のようだ。

「子供に風邪を引かせるくらいなら、罰の一つや二つ覚悟しましょう」

「命令に忠実な26番にしては、ず〜いぶんと人間らしい事をいうじゃないか!」

ガッハッハッと女の人が豪快に笑った

「そんな25番もこの子を見た途端、剣に力入れましたよね?相手の剣粉砕してましたもん...」



少しの沈黙が続いた後、25番さんが小刻みに震えて、体温が高くなっているのが分かった。

ボクは重くて我慢してるかと思い、声を掛ける。

「あ、あの...」

25番さんが少し大きな声で反応する

「あっ!起きた?色々聞きたい事があると思うけど...その前に、君を運んでたヤツらが何処に向かおうとしてたか、教えてくれないかな?」

「それが...分からないんです。行き先はいつも教えてくれなくて...」

二人がうーんという唸り声を上げる。

「最後の一人も25番が殺してしまいましたし、手詰まりとなりましたね」

26番さんが25番さんを横目で見ながら答える。


「あっそういえば...」

 ボクは二人に騎士達が話していた協会の事、そしてその協会でハプニングが起こった事を伝えた。

一通り聞き終わった後、26番さんが事情を話してくれた。

「私達はここから近くにある村の協会、そこの悪名高い騎士団を始末する為にここまで来ました」

「けれど途中で25番...君を背負ってるお姉さんが道を間違えて迷子になってしまったのです」

25番さんが会話の途中で何か言おうとしてたけど、口を閉じてしまった。

「ただ、あの馬車を襲ったのは正解でしたね。馬車の荷物を調べた所、次の目的地を表す地図が置いてありました」

「ここから走れば数分程度で着くでしょう」

26番さんが言い終えると、25番さんが誇らしげに喋り出した。

「ふっ!やっぱりこの馬車襲っといて正解だったなぁ!」

「よく言いますよ...[風呂敷被った変な馬車があるから、とりあえず襲っとこうぜ!]と興味本位で突っ走ってましたよね?それに元はと言えば──」

ただの会話を聞いてるだけのはずなのに、自然と笑みが零れる。ボクはきっとこういう「普通の日常」に憧れてたんだと思う。誰かの温もりを感じながら、他愛の無い話をする。そんな平凡な日々をボクは...


──────────────────────


 ボクを背負いながら二人は村の周辺まで来た。

「そういえば君、名前は?」

25番さんが突然質問を投げかけてきた

「ドール...です」

「良い名前じゃん!ドールちゃん宜しく〜!」

「宜しく...お願いします」

25番さんはスッキリするほどハキハキ喋るから、話しててとても気持ち良い。

「二人とも、そろそろ協会が見えてくるはずのでお静かに」

26番さんが周囲を見渡しながら、静かな声で言った。

「あっあれじゃね?あの柵がしてあるとこ」

25番さんが指をさす。

「地図の位置的にあそこで間違いなさそうですね...先に私が見てきます」

26番さんが木々に隠れながら近付く。柵の近くまで行って少し経った後、25番さんへ合図を出した。

25番さんはボクを背中から降ろし、手を繋ぎながら26番さんのところへ向かった。

「なんじゃこりゃ!?」

25番さんが不意に大声を出す。


 そこには、鎧を着た兵士が手を組んだ状態で、仰向けに寝かされていた。

首には刺し傷の跡が二箇所残っていた。

「この傷...殺されてからまだ殆ど経ってないようです。周囲を警戒しつつ、手分けして他の場所も確認しましょう。」

「了解」

25番さんは剣を砕いた時の、あの真剣な眼差しで返事をした。25番さんの目はピンク色に輝いていた。

26番さんは宿舎の中へ、ボクと25番さんは建物の外と協会の中を確認した。ボクは目を瞑りながら静かについて行く。



五分後、ボク達は協会の前に集まった。

26番さんが先に話を切り出す

「宿舎の中には八部屋あり、四部屋は空室でした。残りの四部屋は...騎士達の死体が一部屋に一つ有り、全て死んでいました。」

「加えて三つの死体の首には毒矢らしき物が刺さっており、最初の一部屋に関しては...喉を斬られ、心臓近くの内蔵を抉られ、涙を流しながら死亡していました。」

聞いているだけでえずいてしまい、25番さんが背中をさすってくれた。そのまま25番さんが話を始める

「こっちもさっきの死体を抜いて二人、一人は柵の前にあった死体のように喉を刺されて、もう一人は鎧を脱いでたからか首元に毒矢だけ刺されて死んでた」

26番さんが顎に手を当てて考えを話す

「切り傷の所にも毒らしき物がありましたし...殺り方から推察するに、全員が同一人物に殺られたと考えるのが妥当でしょう。」

「ただ寝込みを襲い、奇襲を掛けたとしても一人で七人を殺すなんて...私達と同等程ではありませんが、私達に近い強さと知識を持つ人間の仕業かもしれません」

25番さんがさっきの話と繋げるように話す

「あ〜ただ、協会の中に二つ鎧があるのと、地下に続く隠し階段みたいなのがあったんよ」

「もしかしたらまだそこに居るのかも...すぐに向かいましょう」



ボク達は協会の隠し階段へと赴く。

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