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愛されない妃ですので。  作者: ごろごろみかん。


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共に心中する相手

頭ごなしに否定するアークに、私は戸惑った。


アークは今、十七歳だ。

いずれ伯爵家を継ぐことを考えれば、決して婚約が早すぎるということは無い。


アークはエルフを嫌っている。

それは理解しているが、彼がシェリンソン伯爵家の次期当主である以上婚約、結婚は免れない。


そして、彼はエルフ全員を嫌っているが、もしかしたら彼の考えを変えてくれるような人だっているかもしれない。

相手は、メロディ様かもしれないしメロディ様ではないかもしれない。

とにかく、会ってもいないのに否定するのは気が早すぎるというか、一度会ってみて答えを出しても遅くはないはずなのだ。


私はそう思ってアークを説得しようとした時、背後から弾んだ声が聞こえてきた。


「あ!こちらにいらしたのね。アーク様!」


石柱の影に隠れるようにして話していた私たちは、その声に非常に驚いた。

アークはそうでもなかったようだが、とにかく私はびっくりしたのだ。

肩が少し揺れる。そのまま視線を声のした方向に向けると、そこには淡い金髪をふたつに結った、紫根の瞳の少女がいた。私とそう、年齢は変わらないだろう。

彼女はきらきらとした瞳をアークに向けている。


(彼女は──)


ミレーゼであった時にあまり顔を合わせなかったのだろう。すぐには彼女が誰か思い出せず、私は困惑した。

私の隣で、アークが静かに彼女の名を呼んだ。


「……エバンス伯爵令嬢」


「……!」


彼女が、メロディ・エバンス。

アークの婚約者候補。

私はふたたび彼女に視線を向ける。

彼女は、アークばかり見て、きらきらとした瞳を向けていたが、ようやく私にも気がついたようだった。あからさまに気分を害したように眉を寄せている。

その様子から、彼女はアークに気があるのだとすぐに分かった。


「あなたは……アークの妹さん?」


声も、刺々しい。

アークと私が血の繋がらない兄妹だと知っているのだろう。

私は、慣れた微笑みを顔に浮かべた。


「ごきげんよう。フェリス・シェリンソンと言います」


メロディ様は眉を寄せてじっと私を見つめていたが、不意に何かに気がついたのか目を見開いた。

そして、驚いたように今度はまじまじと私を見つめてくる。


「……あなた、先程リュシアン殿下と踊っていた……?」


「…………はい」


「なぁんだ!ごめんなさい。私、てっきりアークといい雰囲気の方なのかと……。ほら、ふたりでこんなところにいるし。とても探しましたわ。ねえ、アーク。あなたも知っているでしょう?私たちの婚約の話!今日はその話をしようと思ったのに、ホールにいないんだから!」


メロディ様の興味はすぐにアークに移ったようだった。この場合、私はここから離れるべきか。

あるいは、お母様に言ったようにメロディ様がどういう女性か様子を見るべきか。

メロディ様は積極的にアークに近づき、ぴたりと体を寄り添わせた。

楽しげなメロディ様とは対照的に、アークは無表情だった。何も答えていない。

会話という会話が成り立たない彼らに、私はハラハラしてしまった。


「どうして会いに来てくださらないの?」


メロディ様がアークの手を取って、甘えるような声を出す。アークはちらりと見たが、やはりそれに答えない。


「ねえ、アーク。あなたも知っているでしょう?この婚約は私の強い希望で用意されたのよ。シェリンソン伯爵も乗り気だと言うじゃない。もう私たちは婚約して、結婚する運命なの。それなのにどうしていつまでも、そんな顔をするの?婚約者なのよ、私?」


怒涛に捲したてるメロディ様に、ようやくアークが細く息を吐いた。

そして、乱暴ではないがあっさりと、彼女の手を払う。


「あん」


メロディ様が残念がるように甘えた声を出す。

なんというか、メロディ様とアークは見ていてこちらが心配になる組み合わせだった。

確かに、メロディ様が婚約者というのは幸先が不安かもしれない。

私は早々にそう判断していた。


「私は婚約する気はありません。あなたに会ったら、そう言おうと思っていました」


アークが静かに言った。

メロディ様は眉を寄せ、睨みつけるようにしてアークを見ている。

これは、完全に私はお邪魔だろう。

メロディ様がどういう方なのか──少なくとも、アークがどう思っているのかは、理解出来たような気がする。

ここは私は離れるべきだ。

そう思って、私はそろりそろりとその場を離れようとした。

しかし、メロディ様と話しているくせに私が後退していることにすぐ気がついたアークに、腕を掴まれてしまう。驚いて彼を見るが、彼は変わらず落ち着いた様子でメロディ様と話していた。


「どうして……!どうしてなの!」


メロディ様が悲鳴のような声を上げる。

とてもいたたまれない。

そして、この状況には既視感があった。

ミレーゼであった時、ミチュア様とロザリア様の口論を仲裁する時、私はいつもこんな気持ちになっていた。当事者ではないけれど、ギスギスした空気は胃が痛くなる。

それでもミレーゼであった時は、私は王妃だからとそこから逃れることもできなかった。


だけど今は別だ。

メロディ様とアークの婚約について、私は完全な部外者。

ここにいるべきではないだろう。

そう思って、アークを強く見つめるが彼は変わらず澄ました顔でメロディ様と話している。

私の腕を掴む手は、そのままに。

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