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一期一会の魔法使い  作者: 有世けい
公園のキラキラな魔法使い
33/67







でも、ぼくが「え?」って思うヒマもなく、光はパッて消えちゃった。


光がなくなると、友達はみんな「え、空?」「空を見る?」って言いながら上を見てた。


そうしたら、空に大っきな大っきな虹があらわれたんだ!!

すっごくすっごく大きな虹!!



「うわあっ!すげぇ!」

「虹だ!!」

「めっちゃキレイじゃん!」


みんなは口々にそう言って、大喜びした。

ぼくも嬉しくなって、みんなのところに走っていった。


「みんな!きれいだね!」


ぼくは全員に手をふりながら言った。

でも、友達のひとりが虹からぼくに顔を向けて聞いてきたんだ。


「さっき『この公園でいいこと(・・・・)あるよ』って言ってたのは、この虹のことだったんだ?」


顔じゅう笑顔の友達にぼくもいっぱい笑顔になったんだけど、でも………友達が何のことを言ってるのか全然わからなかったんだ。


なのに、ほかの友達も同じことを聞いてきた。


「なあなあ、なんで今日虹が出るってわかったんだよ?」

「わかったって……ぼくが?それ、どういうこと?」


ぼくは不思議に思って聞いた。

そうしたら友達はもっと不思議そうな顔をしたんだ。


「何言ってんだよ、自分で言ってたじゃん」

「そうだよ、『今日この公園でいいことあるから、一緒に行こう』って」

「え?そんなこと、ぼく言った?」

「言ったよ!なあ?」

「うん、言った言った………っけ?」


友達のひとりが、急に自信なさそうな言い方に変わった。

それを聞いた他の友達も、


「あれ………そうだっけ?」

「そんなこと言ってないよなぁ?」

「俺、なんでそんなおかしなこと言い出したんだろう……」

「覚えてないや……変な感じ」


次々に不思議顔になっていった。

でもすぐにその顔がまた大きな笑顔になったんだ!

だって―――――



「ぅわぁぁぁっ!今度は雪だっ!!」



虹が出てる青い空から、ふわふわと雪が降ってきたんだ。


夏なのに。8月なのに。雲なんかいっこも出てないのに!



ぼくが見える空いっぱいに、キラキラな小さな雪が、太陽のの光に反射して輝いていた。



「すごいや………」


こういうときの気持ちを、感動って言うんだろうな。


ぼくは虹と雪のどっちを見たらいいのか迷っちゃうほど、とにかくすっごく感動したんだ。

こういうのは大感動って言うのかな?

でも、”大” は1コだけじゃ足りないや。

大大大大大大感動だ!


そうやって、ぼくが ”大” を何コくっつけたらいいか考えてたとき、後ろから女の子に話しかけられたんだ。



「ねえねえ、虹も雪も、すっごくキレイね!」


ぼくがくるって後ろを向いたら、知らない女の子がニコニコ顔で立ってた。

知らない女の子だけど、たぶん、同じ小学校の6年生だと思う。

前に見かけたことがあったから。

でも、話すのははじめてだ。

女の子はなぜかちょっとだけ髪が濡れてるみたいだった。

なのに、全然そんなの気にならないみたいに、空を見上げていた。


だからぼくも、もう一度空を見上げながら返事した。


「うん、そうだね。どっちもキラキラしててキレイだね!」

「私、虹と雪を同時に見たのはじめて!」

「ぼくもだよ。夏に雪が降るなんて知らなかったもん!」

「私もよ!ていうか、夏に雪なんて降らないわよ、普通は」

「やっぱりそうだよね?じゃあ、もしかしてこれって、普通じゃないのかな?」

「そうね……普通ではないんじゃない?」

「じゃあ、”魔法” ?」


ぼくがパッと頭に浮かんだ言葉を言うと、それを聞いてた友達のひとりがプッて噴き出した。


「魔法なんてあるわけないじゃん」

「そうだよ。あれはマンガやアニメの中だけの話だって」

「魔法なんて信じてんのか?子どもだなあ」


みんなは面白そうに僕を見てきたんだ。

でも、女の子はみんなとは違った。


「きみたちだってまだまだ子供じゃない。1年生でしょ?1年生にはまだわからないかもしれないけど、この世の中にはね、不思議なことがたくさんあるのよ?だから、この虹と雪も、もしかしたら ”魔法” かもしれないのよ。ま、1年生にはわからないでしょうけどね」


女の子はちょっと大人ぶって言った。

6年生だから、ぼくよりは大人なのに違いないんだけどさ。


でもそんなことより、ぼくはなんだか、”魔法” って言葉がすっごくワクワクに聞こえたんだ。

みんなが言うみたいに、”魔法” って、子どもっぽいのかな?

それとも、この女の子が言うみたいに、今よりも大人になったら、”魔法” のことももっとわかるようになるのかな?

…………よくわかんないや。


でも、どっちでもいいや。


だって、”魔法” でも ”魔法” じゃなくても、虹も雪も、キラキラ、キラキラ、すっごくすっごくキレイだから。


ぼくは、キラキラな空を、ずっとずっと忘れたくないなって思ったんだ。


ずっとずっと、忘れない。


大人になっても、ずっと、ずっと……………






※※※




「―――――で?お目当ては見つかったのか?」

「そうっすね。二人ほど」

「よかったじゃないか。ロケを中断してまでこの公園に急いだ甲斐あったな」

「あんまよくないっすよ。対象者はあの子供達だったんで」

「え?でも ”魔法” が使われた気配を感じたんだろ?それもあの子達が?」

「そうみたいっすね。正しくは ”魔法の元” だったみたいっす」

「じゃあ ”MMM” へのスカウトはしなかったのか?」

「一応、カードは渡しておいたっす」

「怖がらせたりしてないだろうな?お前は態度も言葉遣いも雑なんだから」

「気をつけたっすよ?優しく紳士的に…って、記憶操作しちまったから意味ないっすけど」

「記憶を消したのか?」

「あの子達、”魔法の元” のことで友達とひと悶着あったみたいなんで」

「なるほどな。よく聞く話とはいえ、可哀想に」

「人と違うっていうのは、即行で孤独を連れてくるっすからね」

「でもどっちみち ”MMM” は未成年者は入れないんだろ?だったら、それまでは普通の子供時代を過ごせたらいいのにな」

「そうっすね。二人とも、純粋でとにかくキラキラな目をしてたんすよ。あの瞳が曇らないように見守っていかなくちゃっすね」

「そうしてやってくれ。今の時代、多様性だなんだと言われても、まだまだマイノリティには過ごしにくい世の中だからな。これからだってあの子達はたくさん傷付くんだろう」

「あの二人が大人になる頃には、少なくとも今よりは ”魔法使い” が生きやすい世界になってるといいっす………いや、俺達、現代の ”魔法使い” がそういう世界を作っていかなくちゃっすね」

「非魔法使いながら、俺も協力は惜しまないよ。俺達みたいな理解者がいることも、ぜひ忘れないでおくれよ」

「サンキューっす」

「じゃあとりあえずは、ロケ再開だな」

「あ、できたら今日は早めに終わってもらえたら有難いっす」

「急用か?」

「あの子達の親に説明or記憶操作しなくちゃなんで」

「しょうがないな。なんとか調整してもらうよ。ああ、あと、あの虹と雪はどうするんだ?」

「そのままで大丈夫っすよ。しばらくしたら自然に消えるっす」

「なんだかもったいないな。あんなに綺麗なのに。ところで、そろそろ言葉遣い戻せよ。どこにファンがいるかわからないんだからな」

「了解しました。けど…………儚いから、綺麗なんですよ。自然も、生命も。いつか ”終わり” がくるから、”終わる” とわかってるから、大切にしなくちゃいけないんです………」

「なに?なにか言ったか?」

「いいえ?なんにも。それじゃ、もうひと頑張りしてきます!」

「おう。頑張ってこい。…………って、何してるんだ?」

「いや、あの子達にもエールを送ろうかと思って」

「なるほど」

「…………また会う日まで元気で。キラキラな目の、未来の ”魔法使い” 達。どうか、その目を孤独で曇らせないでくれ。きみ達はもう、ひとりじゃないからな」










公園のキラキラな魔法使い(完)












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― 新着の感想 ―
[一言] ”魔法の元”を持っているために、周囲に違和感を持たれてしまって孤独になってしまう。 そんなこどもたちを見守ってくれている魔法使いや協力者もいるんですね。 この彼は、もしかしたら「満月に集う魔…
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