告白
「ありがとう。こんな俺を蘇生させてくれた上にこんなに能力を強くさせてくれるなんて、どうお礼を言ったら良いか…」
「いいえ、構いません。それよりカナタさん…」
「うん? どうしたの?」
「私…カナタさんとお付き合いしたい、それでも構いませんか?」
「えっ!? お付き合いって…どういうこと?」
「私、あなたに惚れました。だから婚約を前提に付き合いたい」
「えっ!? どうして?」
「私…実は月の世界の人間なのですが、私の両親に地上の人間と婚約されているのを反対されております。両親は月の世界の男と婚約しろと言うのです。でも私はカナタさんのことが大好きで…惚れているのです」
「その前に君の名前、何て言うの?」
「私は…セリン! よろしくお願いいたします」
「セリンか? 可愛い名前だね」
「あ、ありがとうございます」
「そうか…。でもセリン、やっぱり君は君で月の世界に帰った方が良いのでは? 月の世界の人の方が君のこと、良く思ってくれるんじゃないかな?」
「それでも、私、一度で良いからあなたと一緒に旅をしたい。旅をしてあなたを旦那さんとして私の両親に紹介したい」
「ありがとう、セリン。気持ちだけ受け取っておくよ。俺は、俺で腕を磨きたいから。セリンに仮が出来たからね。生き返らせてもらった仮が」
「ううん。気にしないで」
カナタさんと会話をしていたその時でした。私の脳内から誰かが語りかけて来たのです。
『セリンよ、その男が良いのか?』
あれ? さっきも聞こえたこの声、もしかして…お父様!
『良く分かったな。そうだ、私がお前に声を届けていた』
じゃ、じゃあ、お父様は私のこと、見守ってくれていたのですね。
『私だけではない、妻もお前のことをとっても心配して見守ってくれている。ずっと、心配だったのだよ。お前が地上の人間に酷いことをされている時も』
「お、お父様、ありがとう」
私は涙を流してしまいます。その時、カナタさんはハンカチを私に差し出してくれました。
「どうして泣いているのか分からないけど、何か俺が泣かしてるみたいだよ」
「ううん、カナタさん、ごめんなさい。私、勝手に泣いちゃって」
「いや、良いんだけと」
カナタさんが持っているハンカチを受け取り、目に流している涙腺を拭きました。
『セリン、どうなんだね。その男が良いのか?』
「はい、私、カナタさんのお嫁さんになりたい」
「えっ!? お嫁さん!?」
彼はびっくりしています。
『そうか…セリン、私達は地上の人間との婚約は反対していたが、しかしその男はお前のことを大事に思ってくれるように見える。だだし、私も妻もその男に完全に警戒心を解いた訳ではない。その男の良からぬところが見えてきたら私も妻も反対するからな。そのつもりでいるんだぞ』
はい、お父様。ありがとうございます。彼は、カナタさんは大丈夫です。絶対に良からぬ人ではありませんから。
『そうか、分かった。じゃあお前とその男の無事を祈っているぞ』
「お父様、本当にありがとう!」
「えっ!? お父様って…。じゃあ、君は自分のお父さんと会話をしてたの? テレパシーで」
「はい、その通りです。両親は私とカナタさんの婚約に賛成してくれるみたいです」
「えっ? そ、そうなの?」
「はい!」
今はと言いますと、カナタさんは積極的にグイグイ行く私に引いているように見えます。
でもいつかはカナタさんの心を掴んで彼と結ばれるようになっていきたいです。
END
これにてこの作品は完結致します。お時間いただいた皆様、まことにありがとうございました。