私の蘇生能力
コウマったら本当に鬱陶しい。
歩いて移動している際にも私に寄ってきて自分の自慢話しなんかしてくるし、そしてしまいには今まで俺の格好良さどうだったとか私の名前まで聞いてくる始末。
もうどうでもいい存在なのにどうして私にそんなことまで聞いてくるのかしら? 全く意味が分かりません。
だから私はコウマのことを無視していました。しかし気になる存在がいました。離れて歩いているカナタと言う少年の存在です。
クールっぽい表情で歩いているのを私はチラチラと見ていました。ちょっと格好良いなって言う感じで。
私はさっきまでアルファの男の人と婚約することを決めていたのに、どうして急に彼の存在に気になり始めたのかしら?
私はすぐ傍で歩いているコウマの自慢は聞いているフリをしてそんなことばかり考えるようになりました。
そして場所に到着します。コウマとカナタの決闘する場所が。
お互いが剣を抜いて持つと、二人が正面で剣を持ち構えます。
「さあ、決着をつけようじゃないか。コウマ」
「カナタ、後悔するなよ。負けるのはお前だ」
「そんなことを決めつけるな、俺は少しは強くなったんだ」
「ほう、面白い。だったらお前の変わったところを見せて貰おうか!」
コウマが剣をカナタさんに振りかざして来ました。彼も負けずと剣を降ります。
互いの剣の金属音が鳴り響きます。周りの連中達はやっぱりと言いますかコウマを応援していますが、私が応援していたのはカナタさんでした。
「どうした、どうした! 少しは強くなったんだろ! その強さ、この俺様に見せてみろよ!」
カナタさんが押されています。
頑張って下さい、あんな女の人を平気で殴るような人なんかに絶対に負けないで下さい。
しかし私が心の中で応援しても何も状況は変わりません。カナタさんの表情が苦しそうです。
「やっぱりお前は口だけの奴だな! 所詮、雑魚は雑魚ってことよ!」
「お前は何も変わっちゃいない。人をバカにするところは」
「だったらこの俺様に勝って逆にバカにしてみろよ!」
「俺はそんなことは興味がない、俺はただ悔しかっただけだ。お前に追い出されて見返したい! 少しでも俺は強くなるために努力した」
「それにしては弱すぎるんだよ!」
コウマの振り下ろした剣によりカナタさんの持っていた剣が飛ばされてしまいました。
「クッ」
剣を拾いに行くカナタさん。カナタさんがしゃがみ込み拾った剣を持った時です。
「後ろ!」
私が彼に言いましたが手遅れでした。コウマの剣がカナタさんの心臓に貫通したのです。
血を吐き出すカナタさん。
コウマが剣を抜くとカナタさんは地面にうつ伏せで倒れ込んでしまいました。
「カナタさん!」
私がカナタさんのところに駆け寄ります。
「ふん、所詮コイツはただの雑魚だったな。何の張り合いもないな」
その言葉を聞いて私は彼を睨みます。
「何故、そんな弱っちい奴に構う? 早く俺様のところに来いよ。この俺に惚れただろ?」
何を勘違いしているのでしょうか? この人は。まるで私の気持ちに気付いていない。私に嫌われているということが分からないのですね、コウマは。
「あなたには全く魅力がありません。本当に弱いのはこの人よりもあなたの方ではありませんか?」
そう言ってやりました。するとコウマから平手打ちがきたのです。
「また暴力をふるいましたね、あなたは最低な勇者です!」
「ふん、この俺様の魅力に気付かないとは愚かな女だ。もういい、貴様はこの雑魚と一緒に死ね!」
コウマが剣を私に振り下ろそうとしたその時でした。私の何かが語りかけてきたのです。
『その者を蘇生せよ、蘇生時、汝の中にある無限の能力をその者に分け与えよ』
どういうことかしら……これってカナタさんを蘇生ってことよね。でもどうしたら。とにかくやってみるしかない。
私はカナタさんの心臓部分に手を触れます。何か奇跡が起きれば、起きて欲しい。
「くたばれ! このクソ女!」
その時でした。彼の心臓と皮膚が再生して動き始めたのです。私にも分かりました。どうして……これってまさか私の能力?
私の傍に剣が振りかざされようとした時でした。
「相変わらずだな、コウマ。女に剣を向けるとは」
カナタさんの言葉にコウマの動きが止まります。
「その声は! バカな! 剣で突き刺したはず! どうして生きている!」
「あー痛かったな。背後から剣で突き刺すとは卑怯な真似をするんだな」
「カナタ! お前生きていやがったのか?」
「おかげ様で。どうやらこの女の能力らしいが……」
「この女に能力だと……そんなバカな!」
「そういうことだ。コウマ、続きをしよう。決闘のな」
コウマが笑います。するとこのように言いました。
「雑魚が再び蘇っただけで何も状況は変わらん。また同じように殺してやるよ。同じ方法で。しかも今度はその女も一緒にな!」
「さっきはお前に殺されたかも知れんが、今度はどうかな? もう先ほどの俺じゃないからな!」
自信がありそうな彼。私はカナタさんが勝つことにかけることにしました。