表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鬼人と妖狐  作者: ミント
3/12

二話

 目を覚ますと、部屋が真っ暗だった。


「はぁ、はぁ、はぁ」


 死ぬほど怖い夢を見た。

 まるで夢とは思えないほど、リアルな夢だった。

 そっと、背中に触れる。まだ背中に痛みが残っているみたいだ。今生きていることが奇跡のような、そんな気さえする。

 部屋を見回し、自分の体を確認した。

 大丈夫、どこも怪我してない。けれど、さっきの夢のせいで生きている心地がしない。


 気を紛らす為に、携帯を見た。


【3月20日火曜日 AM 4:12】


 背筋が、ゾッとした。


 見たことのある数字の並び。

 そういえばさっきの夢でも見たような気がする。

 いやいやいやいやまてまてまて、そんなわけない。

 きっと何かの偶然だ。そうに違いない。

 

 そう頭では理解しているのに、身体は恐怖で動かない。

 手の感覚が、恐怖を記憶している。背中が、焼けるような痛みを覚えている。

 

 ーーカランコロンカランッ


 リビングから、何かが落ちる音が聞こえた。

 

 まるで、さっき見た夢が再現されているみたいだ。ははっそんなまさか、ないない。

 けれどそう、こんなのきっと偶然なんだろうが、それでも気味が悪くて仕方がない。あやうく、タイムループしいるんじゃないか? とか思ってしまいそうになる。

 でも偶然だろ、こんなの。だってそんなオカルト、ありえない。

 そうだな、例えばここで突然部屋の扉が開いたりでもすれば、少しは信じてしまうかもしれないが……。


 ーーガチャッ、ギィィィィイ

 

 不意に、扉が開いた。

 扉の先には誰もいない。


「あっ、あぁ、ああぁぁ」


 論理的思考が停止する。

 恐怖以外の感情がロストし、手足は硬直状態。布団に包まる余裕すらない。


「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」


 浅い呼吸が何度も続いた。

 脇や手足が汗ばみ、緊張で全身が痙攣する。


 ーーピンポーン


 さらに追い討ちを掛けるように、インターホンが鳴り響いた。

 もちろん、なんの物音もしない。母が起きてきて、玄関を覗いたりもしない。


 開いた扉の先、リビングのさらに奥の方に玄関が見える。遠目でよくわからないが、玄関横の窓にうっすら人影が見えた。


 ……開いた扉の向こう側をじっと見ていると、何も無かったリビングから突然、ツノの生えた男が現れた。


 その姿は、まさに鬼人。

 鬼と人のハーフ。


 背が高く、端正な顔立ち。

 少し赤みがかった髪色。

 筋肉質で、肌は少し黒い。


 そんな鬼人は、手に血の付いた槍を持って立っていた。

 

「あっ、ああぁ……」


 俺は怖くてろくに言葉も発せぬまま、ベットに両手を付いて後ずさる。

 しかし、全く距離が取れていない。


「く、くるなぁ」


 ガバッ


 破裂しそうなほどに脈打つ心臓を抑えながら、一心不乱にシーツを鬼人に投げつけた。

 しかしそんな抵抗は何の意味も持たないようで、鬼人がとの距離はすぐに縮まってしまう。


「わぁっ、わあぁっ」


 必死に逃げようとする俺。

 やがて鬼人は手に持った長い槍を無慈悲に振り翳し、グサッと俺の腹を貫く。


「うぐぅっ!!!」


 文字通り腹を貫かれた俺は、血を吐き出して両膝を付いた。


 ーー痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!

 何が起きてる?

 どうすればいい?

 どうすれば助かる? 

 なんでこうなった?

 俺はまた、このまま死ぬのか?


「ぐぅっ、ひゅぅ、ぐぅ、ひゅぅ」


 お腹が焼けるように痛い。呼吸ができない。まだ意識がハッキリしているせいで、刺された痛みがダイレクトに脳を刺激してくる。

 口から血が噴き出し、手足の感覚が無くなった。俺はその場でうつ伏せになって倒れ込む。


 出血が止まらない。意識が朦朧としてきた。苦しい、苦しい、苦しい、苦しい……。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ