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鬼人と妖狐  作者: ミント
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プロローグ

【3月18日 日曜日PM19:12】


 映画デートの帰り道、俺達はとある神社へお参りに来ていた。


「ふぅ」


 白い息が、賽銭箱に影を作る。


 ……今日も退屈な1日だった。


「まなぶ君は、なにをお願いしたの……?」


 理由はこいつ。

 

 名前は黒瀬千花くろせちか17歳。

 

 ちっちゃい身長。貧相な体つき。

 黒縁のメガネをかけてて、ぱっと見は無愛想。

 おしゃれに無頓着なのか黒い服ばっか着ていて、スカートなんかを履いているところは見たことがない。今日もなんか真っ黒なズボンを履いて来ている。

 不細工ではないが可愛くもない。いつも下を向いてて他人には無愛想。目が細くて顔つきも暗いので、化粧でも覚えれば化けるかもなぁって感じ。

 趣味は読書。特技は暗算。

 普段から学校に居ても居なくても、別に気付かれないような性格をしている。


 千花と俺は同じマンションの真下の部屋に住んでいるので、幼い頃から顔見知りであった。しかし小中共に同じクラスになる事がなく、本格的に知り合ったのは高校2年になってから。


 あれはそう、今から半年くらい前のこと。

 千花は高校2年の2学期頃、イジメに遭っていた。

 そこを同じクラスの俺が助けたら、まぁ、なんか好かれてしまって。それからしばらくしたらなんか告られたので、なんとなく付き合う事にした。


 とはいえそれからのお付き合いはなんとなく順調に進み、5ヶ月が経過。

 なんだかんだ毎日電話してるし、休みの日にはこうやって出かけたりもしている。


 そう、今日は日曜日なのだ。

 

 で、冒頭に戻る。

 今日もつまらなかった。


 理由はこいつ。


「ど、どうしたの……かな?」

 

 話し方がよそよそしい。

 俺の機嫌を伺うような、おどおどした話し方。

 電話でもそう。ずっとこんな感じ。

 しかも、出会った時から。


「いや、なんでもない」

 

 なんだろう、このムカムカする感じ。

 実際に会うと、最近余計にムカつく。

 別にこいつが悪いわけじゃないんだけど、なんだか腹が立つ。

 

 できればそんなよそよそしい話し方はやめて、普通に話してほしい。


 だからって別れたりするのも、なんか勿体無いなぁって思ってしまう。なんせ初めてできた彼女だし。って、ほんと最低だな、俺。


 でも、どうせこいつも同じなんだ。


 いじめから助けてもらったから俺の事を好きになっただけ。

 学校で居場所がないから一緒にいてほしいだけ。

 俺と別れるのが嫌で、俺に嫌われたくないからおどおどして、そのせいで心の距離が縮まらない。だからこんなよそよそしい話し方になる。

 だからって別に、こいつのことが嫌いなわけじゃない。ただ一緒に居てつまらないってだけ。

 なのにずっと一緒に居てしまう。つまらないとか言いながらもなんだかんだで俺はこいつを必要としているのだ。


 ……ところで話は戻るが、俺達は今とある神社に来ている。

 

 ここは、家から徒歩5分の場所にある神社。別に有名でもなければ特にご利益もなさそうな神社なのだが、千花がどうしても映画の帰りにここへ寄りたいと言うのでなんとなく来てみた。なんという名前の神社なのかは知らない。


 俺と千花はお賽銭箱の前で向かい合う。

 

「お前はなにか、願い事したのか?」


「それは、、ひ、秘密……」


 恥ずかしそうに目を逸らし、お賽銭を眺める千花。なにを秘密にすることがあるのやら。


 ところで俺はというと、さっきお賽銭にお金を投げて手を合わせたというのに、特になにも頭に願い事を思い浮かべずにただぼーっとしていた。これではお賽銭の投げ損だ。

 うーむ、なんだかそれは勿体無い気がする。何かお願いしないと。

 とはいえ、別に何か困っているわけでもないしなぁ。


「願い事か。そうだな」


 強いて言うなら、こいつをちょっとでも好きになってみたい、とかかな。かといって別に、願いはしないけど。


 まぁ高校生の恋愛なんてこんなものか。


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