4話 初コラボ
アーちゃんが配信に出てから数日後、いつもの様に配信の準備をしていると、同期の姫花さんから連絡が来た。
姫花『黒斗コラボしよ!』
黒斗『すみませんお断りします』
姫花『なんでぇ?この前アーちゃんって言う、知らない女とコラボしてたじゃん!もしかして姫とは遊びだったの?』
黒斗『あーうん。遊び遊び、今配信の準備してるからちょっと待っててね』
姫花『今のスクショしたから、もしバラされたくなかったら、コラボして』
黒斗『今忙しいのでお断りします。』
姫花『むぅ〜!ならもしコラボしてくれないなら、初対面の時に押し倒された話するから』
黒斗『おい!やめろ!マジでやめろよ!それとあれは躓いただけだから!本当にやめろよ!今ゆっくりだけど同接増えてきてるんだから、本当にやめろよ』
姫花『ならコラボして』
黒斗『…………わかりました。それでコラボでは何をするんですか?事前準備は必要ですか?』
姫花『準備はしなくていいよー!それとコラボ内容は当日のお楽しみね!』
黒斗『おい待て』
黒斗『おいってば、どんな配信内容なんだよ』
黒斗『なぁ、聞いてるんだろ?』
黒斗『……せめて変な配信だけはやめてくれよ』
結局その後姫花さんからの返信が来ることはなかった。
そう言えば話が変わるのだが、つい先日俺のというか、黒斗のママであるyuki道先生が勝手にアーちゃんのイラストを描いた事によって、今現在俺の絵を上げるためのタグが、アーちゃんによって占領されているのだが、これは泣いてもいいのかな?
それとアーちゃんは意外に順応する能力が高いのか、自分のトゥイッターを開設し俺がそれを少し宣伝すると、一瞬で俺のフォロワー数を上回った。
いや何でだよ!
◯
そして結局何をするか分からないまま時間は過ぎ、姫花さんとのコラボの当日になった。
「あの、姫花さん……これ本当にやるんですか?」
「え?ダメなの?」
「いや、別にダメってわけではないですけど……」
「なら別にいいじゃん!」
「まぁ、はい……でもどうなっても知りませんよ」
……やだなぁ
そんな俺の思いは当然の如く姫花さんの元には届かず、無慈悲にも配信は開始してしまった。
「はーい!ザコのみんなぁこん姫♡」
:こん姫!
:こん姫
:今日も可愛いよ!
:姫最高!
うわっ何これ!
今までまで自分の配信で見た事もないほどの速度で、コメントが上から下へと動く姿を見て、俺は改めて姫花さんの凄さを目の当たりにした。
「それじゃあそろそろ今日のゲストに登場してもらいまーす♡」
「はい、どうも皆様はじめまして、姫花さんの同期をしております黒斗です。よろしくお願いします」
「ちょっと!黒斗固いって!」
「いえ、そんなことありませんよ姫花さん」
:すごい他人行儀で草
:今までの誰よりも距離あって草
:姫嫌われてない?
「姫嫌われてないもん!ねー黒斗!」
「はい、そうですね。俺は同期のみんなが大好きですからね」
「ねーねー!本当にどうしたの?さっきから固いよ?」
「どうしてかですか?それは正直にいうと、今回の配信が死ぬほど嫌だからですね」
「えーどうして?黒斗がやってたんじゃん耐久配信」
「だから嫌なんだよ!」
「そうなの?あの配信面白かったよ?」
「見てる方はそうだな!こっちは32時間も話が尽きない様に考えながら話し続けるんだぞ?そんなのきついに決まってるだろ!」
:草
:そんなのやってたの?
:32時間はバカだろ
:普通は長くても12時間とか何だよなぁ
:あ、いつもの黒斗だ
「でも、それって単に黒斗がゲームの腕がクソザコだったから、そんなに時間かかったんでしょ?」
「うっ!それは……まぁそうだが」
「それに比べて姫は普通にゲーム上手いし、何よりスラッシュブラザーは前の奴からやってたから、10連勝なんて余裕なんだもん!」
「そうか……でもな、俺はスラブラ一回もやった事ねーんだわ、何でそんな俺を誘ったんだよ。絶対俺のせいで長引くやつじゃん。」
「大丈夫だって!姫が黒斗の分も敵倒してあげるからさぁ♡」
:あれ?でも姫もスラブラ弱いよね?
:おや?てっきり黒斗くんがスラブラ強いのかと……
:これ大丈夫か?
「そっか……ならまぁ大丈夫かな?あっそう言えば、俺19時から知り合いが家にご飯食べに来るんだけど、それまでに配信って終わるよな?」
「えー何それ、姫との配信よりもその知り合いが大切なの?」
「え?うんまぁ、そうだけど」
「えー誰それ!もしかして噂のアーちゃん?」
「違う違う。普通に知り合いだよ。ついでに言えば姫花さんも知ってる人だよ。」
「あっ!それってもしかしてゲームがめちゃくちゃ上手い人かな?」
「そうそう。今日うちで一緒にお寿司食べる予定なんだよ。だから出来れば19時までには終わりたいなって」
「それなら姫も本気出さないとなー。でもまぁ今12時だからえっと19時だから……9時間も有るんだから大丈夫だって!」
「9時?……んまぁ姫花さんがうまいなら事前準備とかも色々有るから、18時までにはクリアを目標にしましょうか」
「それじゃあ早速やろっか♡」
:姫花フラれてて草
:おやおや?
:これってあの人?
:このコメントは削除されています
:やっぱり仲良かったんだな……
:ん?9時間?
:おや?
:19時は9時だった!?
そんな話を姫花さんとしながらも、まだ操作の仕方に慣れていないせいか、少しもたつきながらもゲームを始める。
そもそもスラブラとは、正式名称を大乱闘スラッシュブラザーと言い、某有名ゲーム会社の発売しているキャラ達が一挙に集まった格闘ゲームで、その人気度は毎年大きな世界大会が開かれるほどの人気っぷりだ。
「黒斗はどのキャラを使うの?姫はビリチューつかうんだけど」
「えっとちょっと待ってくれ、うまく操作が……」
「えー、黒斗ってそんなにゲーム下手だったの?」
「まぁ、アーちゃんにも一緒にやっても面白くないって言われるぐらい弱いぞ」
「そうなの。でも安心てもいいわ!今日はこの姫のパートナーとして一緒間に戦うんだから!」
「おお!そこまでの腕なのか」
:お爺ちゃんと孫かな?
:あーこりゃだめだわ
:絶対終わんないわ
:絶望の二文字
「よし!俺はやった事あるマリおっさんにするわ」
「そう、決まったのなら早くやるわよ!」
「おう」
という訳でゲームが始まったのだが、ステージは終焉という障害物などが一切ないステージで、プレイヤー本人達の実力が1番現れるステージだ。
「相手は……2人ともゴリラか?」
「あ、アイツらは!」
「何か知っているのか?姫花さん」
「うんアイツらは通称煽りゴリラって言われている人種で、人を煽る事を生きがいにしている憎々しい奴らよ!」
「へーそうなんだ。それでその煽りゴリラって強いの?」
「めちゃくちゃ強いわ。……でも安心してもいいわ!だってあなたの仲間には姫がいるのだから!」
「おお!」
という訳で、意気揚々とゲームを始めた俺と姫花さんだったが……
YOU LOSE
おや?
「姫花さん俺達何もできずに負けましたけど、それも相手のゴリラにすごい煽られたんですけど……」
「い、今のは何かの間違いよ!いつもなら姫がコテンパンにしてるんだから」
「そ、そうですか」
YOULOSE
「姫花さん?」
「たまたまよ、たまたま!」
「ですよね」
YOULOSE
「これ大丈夫ですよね?俺達まだ一勝も出来てませんけど」
「今のはアレよ相手がプロだったのよ!」
「へー」
YOULOSE
YOULOSE
YOULOSE
YOULOSE
YOULOSE
・
・
・
「あの姫花さん?これ19時までに終われますか?」
「……」
「既に開始から3時間経ってますけど、俺たちが勝ったのって一回だけですよ?それも相手の1人が開始と同時に自滅したから、1対2でそれもギリギリ掴めた勝利ですけど。俺達10連勝するまで続けるんですか?」
「……」
:あーあ、姫拗ねちゃった
:ひ、姫も別に弱いって訳じゃないんだ。ただ相手が強いだけで……
:姫!配信中だよ!喋って!
:仕方ないって、わからせを超えてほぼいじめみたいになってたんだから
:姫頑張って!
「姫花さん、一つ提案なんですけどせめて連勝は辞めませんか?このままだと俺達一生配信を続ける様な気がするんですけど?」
「……うん。そうする」
「じゃああと9勝したら終わりでね」
「うん」
「それじゃあ、早速続き行きましょうか」
「うん」
YOULOSE
YOULOSE
YOULOSE
YOUWIN
YOULOSE
YOU LOSE
YOUWIN
YOU WIN
・
・
・
「姫もうやりたく無い」
「そんなこと言わずに続きやりましょうよ、あと半分じゃ無いですか」
「もうむり」
「まだ始まってから7時間しか経ってないじゃ無いですか」
「何言ってるの?もう7時間だよ?」
「いえ、まだですよ姫花さん耐久は二桁からが本番ですよ」
「やだもう姫やりたく無い!疲れた」
:姫は頑張ったよ
:もうやめてもいいんじゃ無い?
:ていうか、もう19時になったけどいいの?
:流石は32時間耐久配信をした男だ、面構えが違うぜ
:5勝もできたんだから上出来じゃ無い?
「ほらもう姫花さんは子供じゃ無いんだから早く続きやりましょうよ」
「姫まだ子供だもん」
「じゃあ子供でもいいですから早く続きやりますよ」
「どうせ勝てないんだもん。やっても無理だもん」
「さっきからウダウダいってますけどねぇ。俺言いましたよね耐久配信は辛いって、それでその時姫花さん自分がなんていったか覚えてますか?余裕だとか楽勝って言ってましたよね?」
「……うん」
「俺止めましたよね?」
「はい」
「でもやるって言いましたよね?」
「……」
「ね?」
「…………はい」
「じゃあ続きやりましょうか」
「……」
ピーンポーン
「ん?……あっもう19時か。俺ちょっと行ってきますから、その間にメンタル戻しといてくださいね」
そうして俺はマイクをミュートにして、玄関で待ってあるであろう客人を迎えに席を立った。
玄関についた俺はガチャリという音を立てながら、玄関の扉を開くとその先には推定185センチはあろう巨大で、金髪と茶髪の中間ぐらいの色合いの糸目で軽くパーマのかかった男性が、その片手にパーティー用の大量に寿司が入った容器を持ちながら、スマホで配信を見ながら立っていた。
「ごめんごめん実はまだ配信が終わってなくてな」
「大丈夫、見てたから知ってるよ」
「それもそっか」
そう言いながら俺は、その手に持っている寿司の入った容器を受け取り、元同期であり友人のケミーを自宅へと招き入れた。
「俺がお寿司の用意しとくから、黒斗は早く配信に戻ってやれよ、姫花ちゃんさっきから黒斗が配信に戻って来なくって若干挙動不審になってるぞ」
「あっやべ忘れてたわ。すまんケミー後任せた」
そう言いながら俺は、いくつかの寿司を皿に盛り付けながら急いで配信へと戻った。
「いやーごめんごめん配信の事すっかり忘れてたわ」
「ふ、ふん!そうなの……まぁ姫的にはそれでもよかったんだけどね。それでそっちは大丈夫だったの?」
「ああ、大丈夫大丈夫あっちの方の準備は、今やってくれてるから」
「そう」
「あ、あと俺20時から飯食べることになったから、姫花さんもその時にご飯食べてきたら?」
モグモグ
「…………そう。それとさっきから何か食べてない?」
「ん?今か?今俺はハマチ食ってるぞ。」
「なっ!」
「いやー今日の寿司はちょっとお高い寿司でな、これがめちゃくちゃ美味いんだよな!」
「う〜」
「そういや寿司関連で聞くんだが、姫花さんって寿司のネタだと何が1番好きなんだ?やっぱりたまごとかハンバーグか?」
「ふ、ふーん姫の好きなお寿司を聞きたいのね!」
俺がそう聞くと、姫花さんは先程までの意気消沈していた様子から、いつもの元気を取り戻したかのように話し始めた。
「ん、まぁ」
「なら教えてあげるは!姫の1番好きなお寿司は大トロよ!アレは凄くいいものよ黒斗も食べてみたらわかるわ!」
「へぇーそうなんだ。けど流石に大トロはなかったな」
「そうなの……」
「でもその代わりに中トロはあったけど、そっちはどうなんだ?」
「まぁ、大トロに比べたらアレだけど、姫的には中トロも断然okね」
「そうか、それは良かったよ」
姫花さんが美味いと言うのなら多分美味いのだろう。
そう思い中トロを取りに一旦席を立とうとした時に、姫花さんに話しかけられた。
「それじゃあ姫、黒斗の家知らないから住所教えてくれないかしら?」
「え?何で?」
「え?だって今のって姫を誘ってたんじゃ無いの?20時からうちで一緒にお寿司食べようって」
「いや別に違うけど……」
「じゃ、じゃあ何で姫の好きなネタ何で聞いたの?」
「いや普通に次何食べようかなって思ったから、その参考程度にと思って聞いただけだけど……」
「……うそ」
「え、本当だけど……」
「……」
「……」
:草
:上げて落とすとは鬼畜だなw
:まぁ、一言も連れて行くとは言ってないからなw
:姫虐w
:黒姫てぇてぇ
:俺も寿司食いてぇ
「……えっと家来ます?」
「…………うん」
「えっとじゃあ、ちょっと裏技使うからちょっと待っててくれる?」
そう言って俺はマイクをミュートにして、リビングに行きテレビを見ている父さんに1人追加することを伝え、母さんと一緒にサラダを作っているケミーを連れて、俺の部屋に戻ってくると、そのままコントローラーをケミーに持たせて配信を再開した。
「戻りました、それじゃあこれから5連勝していきましょうか」
「え、うん」
という訳でゲームを再開したのだが、先ほどまでとは違いマリおっさんを操作するのは俺ではなくケミーに変わった事により、姫花さんを置き去りにして凄まじい動きで、リスナー達を一方的に打ちのめしていき、こちらは初めてどちらも欠けることがなく勝利を掴み取ることができた。
その後も俺達は一度も負ける事なく、ほとんど1人でリスナー達を倒して、俺達(ケミーを除く)がやって来た7時間は何だったんだと思わせるほどの圧倒的強さを見せつけて来た。
「はい、これで10勝した事ですし、さっさと配信閉じちゃいましょうか」
「そうね!まぁ姫は今からでも10連勝に変えてやっても良いけど、黒斗がどうしてもっていうのならこのまま終わってやってもいいわよ♡」
「え、別に俺も連勝に変えてもいいですけど、うちの秘密兵器ならさっき料理作りに戻ったけどいいか?」
「よし!〆るわよ!それじゃあザコのみんな乙姫でした♡」
「お疲れ様でした」
:乙姫
:乙
:お疲れ様
:乙姫
:乙姫
◯
という訳で姫花さんと俺による7時間と少しの耐久配信が終わり、姫花さんに俺の家の住所をメッセージで送り、それから俺も料理を手伝ったりしながら20分たった頃、少しおめかしをした姫花さんがお母さんに車で送られてきて、みんなで机を囲って少しお高めのお寿司を食べた。
その際、耐久配信で失ったであろう姫花さんのメンタルを回復させるために、家族総出で姫花さんをヨイショしたり、少し多めに中トロを皿に盛り付けてあげると、少しずつだがメンタルを回復させていき、お寿司を全て食べ終わる頃にはいつものクソガキムーブに戻っており、その様子を俺達は温かい目で眺めていた。
だがそのままの状態で帰れば良かったものの、調子に乗った姫花さんは耐久配信を終わらせてくれたケミーに勝負を挑み、即落ち2コマが如くスピードでわからせられた。
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