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1話 初配信

「あ、あーマイクてす。聞こえてますか?」


ちゃんと配信に声が載っているかを確かめる為に、マイクに向かって声を発しながら、コメント欄を確認する。


:ケミーについてどう思ってんの?

:ケミーの事を話せよ

:聞こえてますよ

:同期があんなことしてどう感じた?


コメント欄を見てみると、そこにはケミーについて聞きたがるもので溢れかえっていた。

それだけならまだしも、ほかの同期や俺に対しての単なる暴言も混じっており、それに対して運営さんが頑張って対処してくれているが、なにぶん数が多すぎるので、その全てを消せる事もなくコメント欄は地獄の様になっていた。


そもそもケミーとは誰なのか?どうしてここまで配信が荒れているのかを説明する為には、大体1ヶ月前に遡ル必要がある。



それは何の変哲もない日常の中の1日だった。


「マジか!」


そう叫んだ俺の手元には現代では小学生までもが持っているスマホがあり、そしてその画面にはとある企業からの合格を知らせる為のメールが届いていた。

俺が応募していたのは、vtuber好きなら誰もが知っている大手事務所の【クラウン】だった。

クラウンはvtuber黎明期である2017年に、今までは3Dが当たり前だったvtuber業界に、初の2D vtuberである一期生たちを連れてやってきた事務所だった。


もちろん捻くれたネット民はそれを見て、手抜きだや vtuberと名乗っているだけのただの絵だと馬鹿にして、誰1人と見ようとはしなかった。


だがそれでもクラウンと一期生メンバー達は折れずに配信を続けた結果、今ではvtuberと言えばと言われるほどの、vtuberの看板とも言える事務所に成長したのだ。


そして、そのクラウンがこの度1年ぶりに新人、五期生を募集し、その募集人数を有志が計算したところ、何とその倍率は2500倍を超えるとも言われていた。


そして俺はそんな凄い事務所であるクラウンに、二期生の募集を開始した時点から数年、今まで何度も動画を作っては送るを繰り返し、その数は何と余裕で3桁を超えたが、その中で最終面接まで残れたのは今回と、まだ応募人数の少なかった二期生募集の頃だけだった。


正直ここ最近親から、vtuberは諦めて早く定職に着く様言われており、実際問題高校時代から何度も応募していたのにも関わらず、結局一度も受からずにいて、流石に自分に才能がないことに気づき、今回落ちたら諦めると両親に言い、応募したところ何と受かってしまった。


両親はvtuberに付いてまったく知らないので、それがどれほどまでに凄いことかは分かっていなかったが、息子が青春のほとんどを費やしていたものが報われた事を喜び、その日は家族3人で星が三つも付いているレストランに、分厚いステーキを食べに行った。


それからは、色々と話したいことがあるとのことで、俺は事務所に向かうと、そこで俺と同時にデビューする事になった同期の、俺より少し年上で25歳の長身のイケメンであるケミーさんと、これまた年上で上品さを見にまとっている様な女性のフユキさんに、まさかの現役高校1年生でその言動と行動はtheクソガキな姫花さんの3人と対面した。


ケミーさんは事務所にそのゲームのうまさを買われて合格したらしく、ケミーさんがプレイしている動画を見せてもらったが、そのうまさには驚きのあまり開いた口が締まらないほどだった。


そして清楚なお姉さんなフユキさんは、話した所その見た目通りな清楚さで、握手をした時には少し照れ臭かったのか、少し顔が赤らめていてちょっとドキドキしたのは、ここだけの秘密だ。


そして最後に姫花さんだが、正直話してみてすごく羨ましく感じた。

多分だが、この子は俺たち五期生の中で1番人気になるだろうと感じた。

話してみると自分が思っている以上にクソガキで、初対面にも関わらず少し口を出してしまい、その時に俺は彼女を天才だと思ってしまった。


普通ならば初対面の相手とは、お互いのラインを探る為の探り合いを始めるのだが、姫花さん彼女はそれを直感で理解しているのか、初対面でいきなり怒られないギリギリのラインを攻めてきており、その感じは昔からの仲だと錯覚してしまい、俺は無意識に友人にする様な態度をとってしまったのだ。


その3人特に姫花さんを見て、正直どうして自分がクラウンに受かったのかが、全くもってわからなくなってしまった。


その後は事務所の運営さんに、俺達が配信で使う用のアバターを見せてもらったり、配信のルールの様なものを説明されたりと、色々事務的な事を話されたりなど話された。


その際に俺達五期生の初配信がこれから1ヶ月ほどらしく、その間俺達は配信の準備をする様にと仰せつかり、その日はそのまま解散の運びとなった。


そしてそれからの1ヶ月間で、五期生で何度か話し合い、お互いがどう自分達を売り出すかを話し合ったりした。


フユキさんは清楚売りするらしいので、五期生全員のコラボ以外は出来るだけ男性と1体1の配信を薦めてみたり、逆に姫花さんはその才能を生かす為に男女問わず我の強い先輩とコラボする事を薦めたり、ケミーさんはただゲームをするだけだと勿体無いと思ったので、ちょうどケミーさんが得意なゲームが、俺がやってみたかった人気のFPSゲームだったので、俺が初心者代表として、ケミーさんに教えてもらいながらやる配信などはどうかと、話し合ったりしながら準備期間である1ヶ月を過ごした。


そして、初配信の前日。俺は流行病を患ってしまった。

それでも初日はそこまでしんどさも感じなかったので、vtuberとしての出だしは今までのvtuberを見ているとその大切さも分かるし、そして何よりもほかのみんなと一緒にデビューしたいという気持ちがあったから、少しぐらいなら我慢してでも初配信をしようと思っていたが、初配信当日は熱も40度を超え、頭もトンカチで叩かれた様な痛みが永遠とし、まともに喋れないほどに咳まで続けた。


正直vtuberとか考えられず、それよりも今日俺は死ぬのでは?と考えてしまう程、それはそれは想像もし難いほどにしんどかった。


その結果もちろん俺は初配信を行えず、その後数日間もずっと寝込んでおり、そのせいでまともに自分の状況を言えず五期生の皆んなや、クラウンの運営さんに先輩方に、初配信を楽しみにしてくれていたリスナー達を心配させてしまった。


そしてそれから数日経ち、ゆっくりとだが熱は引いていき、連絡ができる様になるとすぐさま、今まで心配してくれた皆んなに連絡を返した。


そしてまだ少し熱はあったが、ほとんどしんどさは無くなり、正直他のみんなから1週間も遅れてしまい、出来るだけ早くその差を埋めようと、今からでも初配信を行おうとしたが、何故か俺の口からは掠れた声しか出てこなかった。


気になって病院に行くと、咳のしすぎで喉を痛めたらしく、治るのにさらに1週間以上はかかるとの事で、またしても俺のデビューは遅れる事となった。


その間に、俺の予想通り姫花さんが頭一つ抜ける形で、俺以外の五期生のメンバーは着々と人気を伸ばしていき、それを見ながら自分の同期が周りに認められている事に喜びながらも、みんなに置いて行かれているこの状況に、日に日に不安が積もっていった。


そんなある日事件が起こった。


ケミーの昔のアカウントが掘り出されて、チートを使っていたことが発覚した。


それを発見したのは俗に言うケミーのアンチをやっていた人物で、正直全く信じられなかったが、念の為ケミーに確認したところ、チートを使っていたのは事実だった。


何でも昔一時期全く勝てなかった頃があり、その時にウォールハックと言う、壁をすかして見える様にするチートを使っていたらしい。


正直FPS初心者の俺からすると、壁を空かせるからどうしたと思ってしまうものだが、ケミーに聞いた限りでは凄いチートらしかった。


だがそれも数年前にほんの少しの期間使っていただけで今は使っておらず、正直自分が使ったことがあることすら、すっかり忘れていたらしいのだが、やはり過去にチートを使っていたのなら、今も使っているのではと疑われて、元々ケミーのゲームのうまさに嫉妬していた人物達を中心にケミーは炎上していた。


ケミーは今は使っていなかったとしても、過去にチートを使っていたのは事実なので、すぐにでも謝ろうとしていたが俺はそれを一旦止め、俺らの様な素人が勝手にどうこう動いて、場を掻き乱すよりかはこの道のプロである運営に頼った方がいいのではないかとケミーに伝えると、それを聞いたケミーも俺の意見に納得して、今回の件を運営と話し合った。


そしてその結果、ケミーは配信で過去にチートを使っていた事を証拠を自ら出してそれを認め、更には自分の持っている機材の全てを運営にチェックしてもらう事で、今現在自分がチートを使用していない事を証明しながらも、どんな理由があろうとも過去にチートを使用していたのは事実だと認め、リスナーのみんなに頭を下げた。


その熱意と証拠が合わさり、リスナー達も一部を除いて、今やっていなくて過去の事もしっかりと反省している様だからと、ケミーの事を許すまでも行かないが、責めることは無くなった。


それからケミーは運営と話し合った結果、今回の罰に対して謹慎1週間を言い渡された。




だが、これだけでは終わらなかった。


ケミーが謹慎になってから2日後、とある一つのアカウントから今回発覚したケミーのアカウントから、万引きなどの軽犯罪をしていた事を自慢げに話しているツイートが投稿され、今回の件は前回のチートの件よりも比べ物にならないほどの大炎上となった。


もちろん今回の件も気になった俺は、すぐさまケミーに聞きに行くが、ケミーはなぜ今自分が燃やされているのか理解できていない様子だった。


それに対して俺は今回の件を自分なりに調べた事をケミーに話してみると、それを聞いたケミーは顔を真っ青に変えて、「なんだそれ?」と一言呟いた。


ケミーはそれを驚きながらも否定し、更には信じてもらえるか分からないけどと言いながら、昔使っていたトゥイッターのアカウントとパスワードを教えてもらい、ケミーのアカウントにログインして過去のログなどを色々と漁ってみるが、ケミーのアカウントにはそんな事をツイートした記録は見つからなかった。


その事を俺とケミーは運営に話して相談し、運営は公式の声明で今回の件を否定したが、それも運営がケミーを庇っているだけと、一蹴されリスナー達には聞いてもらえず、中にはそれを信じてくれるリスナーも居たが、やはり大多数はケミーを叩くことを是として、意気揚々と叩き続けた。


その結果、ケミーはネットでは全く知らない犯罪を犯した犯罪者に仕立て上げられ、更には過去のツイートから今住んでいる家を特定され、家凸までされた結果、人間不信になってしまった。


流石にこの状況には怒りを覚えたクラウンは、家凸してきた者に訴訟を起こしだ結果、大声でケミーを叩く者の数は減ったが、それでもケミーはネットの中では犯罪者の烙印を押されたままだった。


それもどうにかしようと運営は色々と動き回ったが、結局のところそれは解決できずに終わり、ケミーを今後も雇い続けると他のライバーにも被害が移る事を懸念しながらも、それ以上にこのままvtuberを続けていくのは、ケミーの精神状態的には良くないと思い、運営とケミーで話し合った結果、ケミーとの契約は解除することとなった。



コレが俺が休んでいた際に起きた一連の事件で、トゥイッターやケミーの配信内で、俺と仲良くしていると話していたことから、俺の配信が荒れに荒れまくっている原因だ。


正直俺は今無性に腹立たしく思っており、声を荒げながらキレ散らかしたい気持ちでいっぱいだが、それでもケミーがクラウンを離れる事になった日に、ケミーから初配信楽しみにしていると言われたので、その気持ちをできるだけ我慢しながら、俺は初配信を続けた。


運営からもケミーの事は配信で触れないようにと言われていたので、ケミー関連のコメントは無視しながら配信を続けていた。


「そうなんですよ、本当に皆さんも風邪には気をつけて下さいよ。アレ本当にキツいんですから。俺あの時は絶対に死んだと思いましたからね」


:何でケミーのこと話さんの?

:わかる、俺もかかったけどアレはしんどい

:もしかしてケミーと仲良かったっての嘘なの?

:どうせケミーに付いて話すと自分も燃えるとか思ってるんだろ

:皆んなも消毒忘れるなよ


「マジでそれ!あと、外に出る時は絶対マスクしろよ。ッと色々話したけどそろそろ本題に戻らなな。えっと次に決めるのはファンネームだったな」


その後もケミー関連のコメントを無視しながらも、なんとか配信を続けて行っていたのだが、それもとある子の配信内でも何度か見かけたコメントによって、俺の我慢の限界に来た。


:こんな事で切られたケミーが可哀想、クラウンマジ無能


「…………ケミーが可哀想?運営が無能?……ふっざけんな!!いい加減にしろやテメーら!さっきから散々配信荒らしやがって、それに何だ?ケミーが可哀想?運営が無能?全部テメーらのせいだろうが!なに人のせいにしてんだよ!」


今までケミーがこの初配信を見ていると思い何とか我慢していたが、それも限界で俺は人生初の台パンをしながら、喉を痛めるレベルの大声で叫んだ。


「さっきから見てれば、ケミーが犯罪者?それどこ情報だよ?トゥイッター?お前ら知ってるか?お前らの出してる証拠をUPしたアカウント、今回の件が大事になった日に消えてるんだぞ?それにケミーを切った運営が無能?そうせざるを得ない状況にしたのは、あやふやな証拠とも言えない証拠で、公式の声明や本人の意見を無視して、人を貶める事に快感を得ていたテメーらのせいだろ?あ"あん?違うのか?言ってみろや!」


俺がそう言うと、先程までのコメントの勢いはどこへ行ったのか、企業勢それも天下のクラウンに所属するvtuberにとっては、ほぼあり得ないほどにコメントが書き込まれず、書き込まれたとしてもそれは、どこぞの暴露系の名前だったりしか書き込まれなかった。


「だーかーらー!そいつらも不確かな情報で叩いてた奴らだろ?お前らと一緒じゃん。それとも何だ?全てはこいつらのせいで自分達は悪くないとでも言うつもりか?んなわけねぇだろ!もちろんそいつらは悪いよ?けど、それと同じくらいお前らも悪いからな?そこんとこわかってんの?どう言う気持ちでケミーの事書き込んでたから知らないけど、お前ら1人の人間の人生をめちゃくちゃにしたのわかってる?それもお前らが考えた事もないほど努力してる人間のをな」


その後も俺は反論してくるリスナーを言いくるめながら、今までの鬱憤をリスナー達にぶつけ続けて、運営からの静止の連絡を無視しながら、そのまま配信を続けた。


そして、当初予定していた配信時間を大きく超えていたが、色々言い終えて少し気が晴れた俺は、同接数が10万人を超えているのにも関わらず、誰一人としてコメントしないと言う、史上最悪の空気と言ってもいいほど配信で、そのままリスナーネームやハッシュタグに好きな物などの、元々決めていた配信内容を話して、俺こと黒斗の輝かしきデビューを飾る初配信は、ある意味話題となって終了した。

【★読者の皆様へ お願いがあります】

作者のなべたべたいです。


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よろしくお願いします!

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