第86話 本物の聖女はすぐ傍に
集まったのは騎士が数十人、皇太子が三人に令嬢が二人。
全員でヘルヘーニルの元へと向かって行く。
まだ空が黒いだけで他に何も起こっていないが、そろそろ攻撃が始まってもおかしくない。
移動をしている中、ティーフが調べて分かったことを話し出した。
「二人がアオスに帰ってからこっちでも色々調べて、ヘルヘーニルの禁忌の魔法には聖女の魔法が一番だと分かったよ」
「聖女様も魔法が使えるのですか?!」
「どうやらそうみたい」
となれば、対抗するにあたって本物の聖女を探し出さなければいけなくなってしまった。
魔法が使える人が少数なことから、探すのは楽になるかもしれないが時間が問題だ。
「予想はついているのか?」
ティーフの言葉にヴァイゼはそう問い掛けた。
「そこでヴァイゼの知ってる限り魔法が使える人を教えて欲しいんだよ」
「俺と母上、ヘルヘーニル、メーアの皇帝、それから…」
言葉の最後に、ヴァイゼはソフィアの方へと目を向けた。
その視線の意味を理解したソフィアは、焦りながら返答する。
「わ、私は使えません!!」
「…だそうだ」
ヘルヘーニルが仕組んでいたことだから仕方ないが、聖女だと言われていた自分が魔法を使えないことで聖女じゃないことに気づき驚いていたのだろう。
「僕もソフィアに出会ってから聖女について調べたのですが、エーデルもメーアも聖女は一人だけで聖女の命が尽きればまた新たな聖女が生まれるそうです」
アルドがティーフの話に説明を付け加えた。
「だったらメーアの聖女はヴァイゼの母親だ」
「そうなるな。だが、流石に間に合わないぞ」
「ヴァイゼは聖女の息子になのに何か出来たりはしないの?」
「聖女の力には及ばないだろう」
「そうか…」
最適な答えが分かりそうな時、ヘルヘーニルが動き始めたことで考えることを中断しなければならなくなった。
魔法の黒い風が街を壊し始めている。街の人たちには避難するよう騎士たちが伝え付近に人は居ないようだが、あっという間に避難している所にまで影響が出そうだ。
「ヘルヘーニル殿下!!どうしちゃったんですか?!」
「……」
自我を完全に失い、ソフィアの声すらも届かないようだ。
戦える人がヘルヘーニルの魔法をはじくも、数が多すぎて全てをはじききれない。
トイフェリンとソフィアも近くに居るのは危ない為、離れた所で見守っている。
(私にも戦える力があったら皆さんを手伝うことが出来るのに…)
この四国では女性騎士というのは存在しない。
つまり、女性は戦う術を持ち得ないということだ。
ヘルヘーニルの魔法は更に勢いを増していき、ほとんどの騎士たちに疲れが見え始めてきた。
三人の皇太子とアクストも余裕がなさそうで、このままではメーアも他国も、そしてたくさんの人々を守ることが出来ない。
(神様…!どうか国も人々も守って下さい!)
手を握り心の中でそう願ったことにより、トイフェリンの身体から白い光が溢れ出した。
トイフェリンだけでなく、ヴァイゼの身体も。
「これは一体…?」
「お嬢さんがエーデルの聖女ということだよ」
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