第80話 始まりの元凶
やっと本物の皇宮に着いた。
着いてからは皇宮の使用人から案内を受け、後をついて行くことに。
今すぐにでもヘルヘーニルの元へ突入したいところだが、どんな時も礼儀を忘れてはいけない。
案内された部屋の扉を開けられると、ヘルヘーニルが椅子に座り机に頬杖をついて待ち構えていた。
「案外早かったね」
「ここまでの道は覚えている」
「ふ~ん」
思ったほど時間稼ぎが出来なかったのか、不満そうにしている。
「ソフィア様は安全な場所にいらっしゃると思いますが、アルドリック殿下をどこへ連れて行かれたのですか?」
「知ってたんだね、彼がここに来てること。来ていたという事実をなかったことにして、行方をくらませて殺すつもりだったのに。そうか…知っちゃったか…。じゃあここで三人とも消えてもらわないとだね」
張り付いているような笑顔が消え、ゾッとする表情に変わった。
本能的に危ないと感じ、後退る。
しかし逃げる訳にはいかない。
「どうしてそこまで…!」
「アルドリックが危ない目に遭う嵌めになったのは君のせいだよ?」
「え?それはどういう―」
「だって、君がアルドリックと婚約を破棄することを望んだから、ソフィアと婚約を結ぶことになったんだから」
「ですが両陛下も婚約破棄を望んでいらっしゃいました」
「二人が両想いだったら迷ったと思うよ?アルドリックは君に惚れてるんだし。それに、そこは僕が手伝うつもりだったし」
トイフェリンは頭が真っ白になりそうだった。ヘルヘーニルの言っていることを整理するのでいっぱいで言葉が出てこない。
「僕の計画的には、夢と物語とは逆に二人には婚約を続けてもらって、ヴァイゼとティーフがソフィアに惚れないようにする為と、聖女ソフィアの存在を知らしめるのに君を利用したの。だから婚約破棄以外は上手く行ったんだよ。ヴァイゼは君に惚れてるみたいだし、ティーフはどっちにも惚れてないし」
「どうして夢のことまで?!」
「だってそれも僕が魔法で君に見せたものだし」
「そんな…、じゃあ―」
(私が婚約破棄をしなければアルドリック殿下は酷い目に遭わなくて…、それに、私はアルドリック殿下の気持ちを知らなかった…)
自分の恋愛に疎く、自己肯定感の低いトイフェリンはアルドの気持ちを微塵も感じていなかった。
気づくことが出来なかった罪悪感に胸が押しつぶされそうだ。
夢で見た通りになっていくのが怖くて、自ら婚約破棄することが一番の最善択で、その未来から遠のくと思っていたのが実は最悪の選択。
最初さえ間違えなければヘルヘーニルの言う通り上手くいったはずだ。
だって、婚約破棄を選んでアルドとソフィアが婚約したから、今ヘルヘーニルに命を狙われている。
(全部、私の責任……)
トイフェリンの瞳からは涙が零れていた。
読んで頂きありがとうございました!




