第78話 ヘルヘーニルと対峙?
ヴァイゼの温もりを感じて安心する。
けれど、今は急がなければ。
「ヴァイ殿下お一人ですか?」
「そうだな。こういう時は替えの利く側近ではなく、ただ一人の妃を優先するのが当たり前のことだからな」
「ですが…」
「アクストなら大丈夫だ。あいつもそれなりに強いからな」
ヘルヘーニルの言った酷い場所がどんなところなのか分からないが、長年連れ添ったヴァイゼが大丈夫だと言うのなら大丈夫なのだろう。
とにかく、こんな場所からは早く出てアクストと合流した後、ソフィアと一緒に居るであろうヘルヘーニルの元へ向かう。
その道中でアルドとも出会えると良いのだが。
「急ぐか」
「はい」
牢屋から出ると、薄暗い地下の道が広がっていた。
他に人が居るような気配は全くしない。
「ここにはアクストさんもアルドリック殿下も居なさそうですね」
「そうだな。要注意人物はもっと厳重に警備されてるだろう、そういう場所を探せばいい」
地下を出ると、最初に案内された皇宮だった。
そこで不思議に思う。
あの海と崖までは馬車で行ったにも関わらず、手に痕が残るほどの短時間で移動出来るものなのか。
そんなことを考えながらも皇宮の中を急ぎ足で進んで行き、その途中の曲がり角で人とぶつかりそうになった。
「っ!…アクストさん!?」
「おお!良かった、合流出来て…。本当にどうなるかと思った」
アクストの表情で脱出が大変だったのが察せられる。
とはいえ、アクストの服装などは濡れているだけで全然汚れていない。
「ご無事なようで良かったです!」
「合流出来たことだ、あいつの部屋へ向かおう」
皇宮の中だが人気がなく、使用人も居ない。普通なら部屋に向かうまでの間に誰かとすれ違いそうなものだが。
確かに皇宮だけど、どこか皇宮じゃない、そんな場所。
しばらくしてヘルヘーニルの部屋に着き、ヴァイゼが勢いよく扉を開いた。
「あれ?三人共お揃いで」
中にはヘルヘーニルだけで、ソフィアの姿はない。
「ここまでして何が目的だ」
ヴァイゼは鋭い視線を向けながら、冷静に言い放った。
「ヴァイゼに用はないから自国に帰って欲しいんだけどな…」
小声で呟くようにヘルヘーニルはそう言い、トイフェリンとアクストは何と言ったのか聞き取れなかったが、ヴァイゼはしっかりと聞こえたらしい。
「彼女に聖女を殺そうとした濡れ衣を着せ、その上処刑までしようとしていて俺が黙っている訳ないだろ」
「うわー、怖い顔だね」
ヘルヘーニルはヴァイゼの殺気に動じることなく、笑って更に挑発をしている。
「トイフェリンが僕の計画を壊していく中で僕にとって良い方向だったこともあるけど、壊したことで最終的に彼女が幸せな結末になるのが癪に障るんだよ。だからもうここで消えてもらうよ」
それから急に床が揺れ出した。
「これはどういうこと?!」
「…魔法か」
トイフェリンが急な出来事に驚いている中、ヴァイゼだけがずっと冷静だ。
「さすがに状況をちゃんと理解しているようだね。だったら脱出法も考えてあるんだろうけど、多少は時間稼ぎになるし僕はこれで」
そう言い残すと、ヘルヘーニルは目の前から消えていった。
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アクストが意識を失ってしまったトイフェリンとソフィアを抱えていました。
それから崖下に居たヘルヘーニルの従者たちは泳ぐことに慣れている為、二人を容易くアクストから引き離し連れて行った後、アクストはそのまま海に放置されました。
アクストは何とかして陸に上がり、二人の後を追いあの場所へ向かったのでした。




