第77話 牢からの脱出
『この物語は僕が作ったのに』
(ヘルヘーニル殿下が…作った?)
「それはどういうことですか?!」
「事が済むまでそこにずっと居てもらうからね。じゃあ」
「待って下さい!!」
トイフェリンが引き留めようとするも、その言葉に反応を見せることなく出て行ってしまった。
(助けを求めるのは難しいし…、でも今はそれよりも)
物語を作ったということを聞いて、それは具体的にどういうことなのか考えてみる。
疑問点といえば数多く挙げることが出来るが、その答えを導き出すのは今の情報量では困難だ。
例えば、夢を見たのはどうしてか、どうやって物語通りに進められたのか、不審な点が多く見受けられる。
(私が計画を壊したというのは、私が悪役にならなかったから?)
そう考えてみるも、トイフェリンがただ悪役になったところでヘルヘーニルに利益があるとは思えなかった。
(でも、ソフィア様は最高の部屋に…)
ヘルヘーニルは聖女が狙いなのではないかと考えるも、だったらこんな物語にした理由が分からない。
トイフェリンを利用するにしても、わざわざ他の皇太子と結ばれる展開なんて果たして必要なのだろうか。
ただ、ヘルヘーニルとソフィアが結ばれる物語では駄目なのか。
(ヘルヘーニル殿下は魔法が使えた?と言っても、私は魔法に関して全くもって知らないから何も分からない…)
魔法の事はヴァイゼ聞いてみるなりしなければ分かることは無い。
(とにかく、ここから出ないことには何も解決出来ない。今は考えるよりも出るのが最優先!)
トイフェリンは先ほどヘルヘーニルが出て行った後、外の警備が居なくなったことに気づいていた。
それが罠の可能性もあるが、この牢屋には他の人は居ないし令嬢が一人で出るのは不可能だとでも思われているのだろう。
この牢屋は使われていた形跡も無いし、壊れそうなところがあるかもしれない。
精一杯の力で鉄柱を押してみるが、ビクともしない。
(やっぱり私の力じゃ……。いいえ、諦めては駄目。頑張らないと)
別の方法を考えて、鍵の南京錠を鉄柱に打ち付けることにした。カンカンと音が牢屋中に響いているが、外からはまだ何も聞こえてこない。
しばらく続けていると、鍵も古かったのか少しづつ傷がついてへこんできている。
しかしそろそろ手が限界だ。強く握っていたことと、打ち付けていた振動で手に力が入らなくなってきた。
(後もう少しで壊れそうなのに…!)
そんな時、外から勢いよく走ってくる足音が聞こえた。
(気づかれてしまいましたね…)
そう思った時、扉が壊れ破片が視界に入ってくる。
「無事か!?」
「ヴァイ殿下!!」
ヴァイゼは汗を流し、息が切れている。さっき聞こえて来ていた足音はヴァイゼだったようだ。
「少し後ろに下がってくれ」
「はい」
言われた通り後ろに下がり、それからヴァイゼは腰から剣を抜き鍵を壊した。
開けられ牢から出てすぐさま、ヴァイゼに強く抱きしめられる。
「下から音が聞こえて、地下なら牢屋があると思ったんだ。そこに居るかもしれないと思って。本当に良かった…!」
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