第76話 信じられない言葉
目が覚めた時、トイフェリンが居たのは何故か牢屋だった。
「どうしてここに…」
確かに海に飛び込んだはずだ。
海に沈んでから意識を失ってしまい、どうしてかここに連れて来られたと考えた。
周りを見渡していた時、自分の手にあったものに気づく。
(これは…!)
手にはしっかりと握られていた痕があった。
つまり、飛び込んでからあまり時間が経っていない。
出ようにも牢には勿論鍵が掛かっていて、自力で出られそうにない。
誰かに助けに来てもらわなければ。
(ソフィア様とアクストさんは無事でしょうか)
自分が誰かに連れて来られたのなら、他の二人もどこかに連れて行かれたことだろう。
今の状況では無事を祈ることしか出来ない。
そんな時、扉が開き入って来たのはヘルヘーニルだった。
「やあ、トイフェリン」
ここに来て挨拶をした時とは、まるで雰囲気が変わっている。
口調も、目つきも。
「ヘルヘーニル殿下!」
トイフェリンはその姿を見て悟った。彼は自分を助けに来た訳ではないと。そしてここに連れて来た本人であると。
「ねえ、どうして牢屋に入れられてると思う?」
「…分かりません」
「分からないんだ。聖女を海に突き落としておいて白を切るつもり?」
(ええ?!)
ヘルヘーニルが一体何を言っているのか理解が出来なかった。
どうしてそんな話になっているのか。
「それは誤解です!私は突き落としておりません」
「証人がいるんだよ」
不気味な笑みを浮かべ、トイフェリンを嘲笑っているようだった。
「そんな、でたらめです!私たちは剣を向けられ追い詰められました。ソフィア様もアクストさんもいらっしゃったのに、二人はどこへ連れて行かれたのですか?!」
剣を突き付けて来た従者たちは命令に従うだけだと言っていただけで、『誰』とは言っていない。
それがヘルヘーニルなのは分かっているが、証拠が無い以上咎めることは不可能だ。
「ソフィアは最高の部屋でゆっくりしてもらっているよ。それからあいつは…ここよりもっと酷い場所に居るかなー?」
「そんな…!」
背筋が凍るようだった。ここよりもっと酷いとなればアクストが心配だ。
海に飛び込んだことで体も濡れ、服も軽装だがまだ水を多く含んでいる。ここは地下なのか室温は低く、今のトイフェリンには寒すぎる。
きっとアクストはもっと寒いはずだ。
「どうしてこんなことを」
「それはこっちが聞きたいよねー、なんて。もう君には用がないし一つだけ教えてあげるよ。君は僕の計画を壊したんだ」
(計画を…壊した?)
「何を言っているか分からないって顔だね」
彼と会話を交わすことなどほとんどなかったのに、計画など知るなんて無理だ。けれど、何かあったのかと思い返してみるも、思い出せない。
そんな時、彼から放たれた言葉に強く衝撃を受けた。
『あの物語は僕が作ったのに』
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