第68話 アオスの情報を狙っている者
ティーフがゆっくりと口を開いた。
「アオスの情報を頼んできたのは、メーアの皇太子ヘルヘーニルだよ」
『ヘルヘーニル・ラクス』
物語最後の登場人物、メーアの皇太子であるヘルヘーニル。トイフェリンよりも年上であるが、彼は四ヶ国の中で一番年が若い。
エーデルの隣にメーアは位置する為、トイフェリンも挨拶をしたことがある。
水色の髪に、国の象徴である緑色の目。落ち着いた性格でも、他の皇太子に比べるとまだ幼さを感じるような、そんな印象だったのを覚えている。
「どうしてヘルヘーニル殿下が?!」
「それは俺にも分からない。交易とか色々な理由で脅されていたから、詳しく聞くことが許されなかったからね」
「そうなのですね…」
まだ若い彼が他国の情報を得ようとしたことは、とても信じ難い話だ。ティーフを疑っている訳では無いが、物語ではそんな話は一切出てきていない。
しかし、ヘルヘーニルがティーフを脅し始めてから、更に物語がおかしくなっていったのは事実。それに、もしかしたらエーデルの二人をエッセンに呼んだのは、ヘルヘーニルだったのかもしれない。
三人の皇太子がエッセンに集まっている中、彼だけは姿を見せなかったし、何の援助もしていないようだったから。
「ならば、今度はメーアに向かう必要があるな」
「気をつけた方がいいよ。何をして来るか分からないし」
「分かっている」
「出来る限りは俺も力を貸すから、何かあったら連絡して」
「ありがとうございます、ティーフ殿下」
黒幕が分かったものの、もう日が暮れてしまっている。今日はまだティーフの城に泊まることにして、明日の朝アオスへ向かうことに決まった。
その帰りに今後についてヴァイゼと話すことも。
太陽の光がよく当たるエッセンでの朝は、とても目覚めが良い。この気持ちのいい朝も今日で最後だけれど。
全ての支度を終えて、城の出口まで向かいお別れの挨拶を済ます。
「今日までありがとうございました」
「礼を言うのはこっちの方だよ、ありがとう。二人が居てくれて本当に良かったよ。メーアのことが片付くまで来れないだろうけど、いつでも来てくれていいよ。歓迎する」
「はい!」
ティーフがトイフェリンと会話をし、ヴァイゼの方へ目を向けた時、先にヴァイゼが話し始めた。
「アオスの騎士たちを何人かここに残していく。後は頼んだぞ」
「分かった。ヴァイゼもありがとう」
「こちらこそ感謝する」
「…?俺ヴァイゼに感謝されるようなことしたっけ。ずっと不機嫌じゃなかったか…?」
小さな声でティーフが何かを言っているが、普通に二人の耳に届いてしまう。
「自分で考えるんだな。無理だろうが」
「なっ…!絶対に当ててやる…」
そんな二人の仲の良い姿に、トイフェリンは不意に笑ってしまう。それに釣られてティーフも笑い出し、ヴァイゼも微笑んでいる。
大変なこともたくさんあったし、ヴァイゼと二人で街を見て回ることは出来なかったが、三人で街を見て回ったり、ヴァイゼと同じ部屋で寝るようになったり、思い出がたくさん出来た。
「また訪れた時はお願いします、ティーフ殿下。それでは、また」
「うん。またね、お嬢さん」
そして二人はアオスへと帰って行った。
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ちなみにヴァイゼが感謝していたことは、ティーフがトイフェリンと同じ寝室に入れたことです。そのおかげでトイフェリンの積極的な姿が見れたことを、内心とても喜んでいます。
ティーフが何もしなくても、トイフェリンはリナと計画していたが、そのことをヴァイゼが知る日は来ない…。




