第63話 早過ぎる到着
国民全員が避難し終え、竜巻が収まったところで皇宮で誘導をしていたティーフと合流する。
「こっちはもう落ち着いたよ。そっちは?」
「こちらも落ち着きました」
「それなら良かった。でも、本当に竜巻が起こるとはね…何で分かっていたのか気になるところだけど、それは後回しになりそうだ」
その後、街の方へと行き被害状況を確認していく。
肥料の木も何本も倒れ、家も何軒か破壊されている。畑の方は竜巻の威力が弱くなっていたようで被害はそう大きくなかった。
しかし予想通り、肥料を保管したり作ったりするところはかなり破損してしまっている。
「これは困ったな…。小麦は今が収穫時期なのにこれではいくつか駄目になってしまっただろうな。それに次に育て始めるのが遅くなると足りなくなるかもしれない」
ティーフの考えは当たっている。この先、聖女が新しい肥料を思いつかなければ、街を修理していく中で食料と材料だけが減っていってしまう。
「そのことで私は肥料を調べていたのですが、何か新しいものを思いつくことは出来ませんでした。お力になれずごめんなさい。でもまだまだ調べていくつもりです」
「アオスからも支援物資を送る準備はしていたが、届くのには一週間は要するだろう」
「二人が居てくれたおかげで助かった。ありがとう」
そして素早い復興を目指し、話し合いを行った。
ティーフは街や住民の家の修理を率先して行っていく。ヴァイゼはアオスで機械に慣れているのもあって、機械系の修理を手伝う。
トイフェリンは肥料について考えながら、畑を手伝うという分担に分かれた。
「それぞれ担当の場所に移動すると―」
「待ってくれ」
ヴァイゼの言葉を遮って、ティーフは口をはさんだ。
「どうかされましたか?」
「さっきエーデルの二人がもう到着するとの話が入って来た。行くのはまだ待った方がいい」
(もう?!物語では竜巻が発生してから一週間後に到着するはずなのに、どうして…)
向かって来ていると聞いて早く到着するとは思っていたが、発生した日に到着するとは思っていなかった。
これはさすがに早過ぎる。
三人が居た城の前に一つの馬車が止まる。これはトイフェリンも何度も乗った、エーデルの皇室の者が乗る馬車だ。
扉が開き、中からアルドが聖女と一緒に出てくる。
「エッセンの皇太子ティーフ殿にアオスの皇太子ヴァイゼ殿、お久しぶりです。それからフェ…トイフェリン嬢も久しぶりだね」
「はい。アルドリック殿下、お久しぶりです」
アルドとは数ヶ月ぶりの再会。そして…
「こちらは婚約者のソフィアだよ」
「皆様にご挨拶を申し上げます。ソフィア・ハイリヒです。よろしくお願いします!」
聖女ソフィアはエーデルの教会で初めて見た時よりも、所作がとても綺麗になっていた。未来の皇太子妃としてかなり教育されたのだろう。
「トイフェリン様にもまた会えてとても嬉しいです!」
ソフィアはトイフェリンの手を握り、満面の笑みで喜びを口にした。
「聖女様にそう言って頂けて光栄です」
「そんな…聖女様だなんて堅苦しく呼ばずにソフィアでいいんですよ!私たちは皇太子妃となるんですから!」
確かにそれはそうだが、エーデルの聖女と皇太子妃の肩書きを持つソフィアと、隣国から来たアオスの皇太子妃では国によって捉え方が違う。
聖女信仰のあるエーデルではソフィアの方が身分が上だと言われるだろうし、信仰のないアオスではトイフェリンの方が上だと言うだろう。
エッセンではどちらとも言いづらいものではあるが。
「挨拶も終わったことだし二人は話し合った通りに先に進めておいて欲しい。この二人には俺が説明をしておく」
「分かりました。それでは」
トイフェリンとヴァイゼはそれぞれの担当場所へと向かって行った。
読んで頂きありがとうございました!
7話の後書きで私が話していた、トイフェリンの名前にアメジストを入れた理由のもう一つと髪と目の色を紫色に選んだ理由は、エーデルの象徴『赤色』で生まれたトイフェリンとアオスの象徴『青色』で生まれたヴァイゼが結ばれるという伏線でした!
とはいえ、結婚するとトイフェリンの目の色はヴァイゼと同じ青色に変わってしまうのですが。




