第60話 ティーフの口からこぼれた一つの真実
城に戻ったトイフェリンは城の使用人に二人の居場所を聞き、客室へと向かった。
「失礼します」
扉を軽く叩いてから中に居る二人に声をかけ、扉を開ける。
中で二人はソファに向かい合って座っていた。
トイフェリンが中に入ると、ヴァイゼが自分の座っているソファの隣をポンポンと叩いている。
その意図を汲み取ったトイフェリンはヴァイゼの横に座る。
「何事もなかったか?」
「はい!大丈夫でした」
そんな会話をしている二人の様子を、ティーフはつまらなさそうな目で見ていた。
「お互いに結構惚れ合ってるんだね。てっきり政略結婚だと思っていたけど」
「惚れ合っ…!」
確かに両想いだし政略結婚ではなかったが、周りの人に言われるとかなり恥ずかしい。
うっかり顔を赤らめてしまうトイフェリンだが、今はそんな場合ではなくティーフに聞かなければならないことがある。
「…っとりあえず、ヴァイ殿下に頼まれていたことは後でお話しすることにして、ティーフ殿下には聞きたいことがあるのです」
「まだそんなに聞きたいことがあるんだね。さっきまでヴァイゼに尋問されてたんだけどな…」
ティーフは苦笑いを浮かべながらも、トイフェリンの話に耳を傾けていた。
「今日街で偶然にアルドリック殿下の執事の方にお会いしました。それで、現在アルドリック殿下と聖女であるソフィア様がエッセンに向かっていると聞きました。エーデルの二人も呼ばれていたのですか?」
トイフェリンの話を聞いてティーフは驚いているようだった。その様子にトイフェリンは不思議に思う。
「それは俺が呼んだんじゃないよ」
「え?!ではどうして…?」
「呼んだのが誰なのかは想像がつく。でも、それが誰かは俺の口から離せないね」
(一体、誰が呼んだのでしょう?呼ぶような方はエッセンの両陛下以外にありえないのでは?)
考え込んでいるトイフェリンをよそに、ヴァイゼが口を開いた。
「さっきからずっと自分の口からは言えないと言っているが、誰かに脅されでもしているのか?エッセンの皇太子という身分を持っているお前が」
ヴァイゼの放った言葉は、少し怒りが含まれた声で発せられた。
それを聞いていたティーフは、反対に落ち着いた様子で話し始める。
「ヴァイゼは自分の国の情報を知られて焦ってるかもしれないけど、アオスに何か影響がある訳じゃない」
「じゃあ何故諜報員を送り、更に自ら潜り込む必要があった?」
「本当は自分が最初から行くつもりだったんだ。けど、アオスの警備は厳しいからね。婚約パーティーで他国からも人が来るような時なら行けると思ったんだよ」
「それで?」
ヴァイゼから言葉の圧を感じ参ったのか、ティーフは大きな溜息をついてからある言葉を口にした。
「…結局、欲しかった情報は得られなかったよ」
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