第58話 街に聞き込みと再会
目が覚めるとヴァイゼはすでに起きていて、椅子に座って書類に目を通しているようだった。
「おはようございます…」
「おはよう」
眠そうに目を擦りながらトイフェリンは声をかけ、ヴァイゼから笑顔で返事が返って来る。
(これから毎朝、目を覚ます度にヴァイ殿下が傍に居て下さるのはとても幸せなことですね…)
トイフェリンはそんな些細な幸せを感じていた。
リナを呼び準備を終えた二人はそれぞれするべきことを果たす為に、ヴァイゼはティーフの元へ。そしてトイフェリンはリナと共に護衛をつけて街へと向かった。
「まずは街で食べ物を売っている方たちに聞いてみて、それから畑の方へ行って実際に育てている方のお話も聞いてみよう」
「そうですね!それが一番良いと思います!」
来るときに通った道のたくさん食べ物が並んでいた所までやって来た。
その中で野菜や果物を売っている人ではなく、パンなど小麦を使ったものを売っている人に話しかける。
「いらっしゃい!貴族のお嬢さんが直接買いに来るなんて珍しいな」
「お尋ねしたいことがあるのですが、小麦はどのような肥料を使って栽培されているのでしょうか?」
「そんなことが知りたいのか?そうだな…土に石灰を撒いて広葉樹の葉とかを使っているらしい。詳しいことは育ててる奴に聞いた方が早いと思うぞ」
「貴重な意見をありがとうございます。お礼と言ってはなんですがパンを買っていっても良いですか?」
「勿論だ!ありがとさーん!」
トイフェリンは自分の分とリナと護衛の人たちの分も買い、ベンチに座り少し休憩してから畑の方へと向かうことにした。
「とてもいい方でしたね!それにこのパンもとっても美味しいです!」
「そうだね!お城で食べるパンも美味しいけれど、街で食べるパンも少し違っていて美味しい」
さすがは食物で貿易しているだけあって、他の国とパンの作り方やこだわりも違うのだろう。
皆でパンを堪能していたそんな時、トイフェリンの前にとある人が通りかかった。
「お久しぶりです。トイフェリン様」
「ロイさん?!どうしてあなたがこの国にいらっしゃるのですか?」
ロイとはアルドに仕えている者だ。エーデルにアルドと一緒に居るはずが何故ここにいるのか。
「殿下とソフィア様が現在向かっておられるのです。それで私だけ先に下調べと思いまして」
「そうなんですね!」
(物語より訪れるのが少し早いような気がする…)
トイフェリンたちが招待されていたように、同じくアルドたちも招待を受けていたのか気になるが今はもう聞ける立場ではない。
「トイフェリン様もリナもお元気そうで良かったです。ヴァイゼ殿下との婚約もおめでとうございます。幸せになって下さいね」
「ありがとうございます」
「それでは、私はこれで失礼致します」
会釈をしたロイは街の通りの中へと入って行った。
「会うなんてびっくりですね!」
「そうだね…。何もないと良いのだけど…」
アルドが思っていたよりも早く着くことに、トイフェリンは嫌な予感がしていた。
物語では竜巻が発生して被害がエッセンだけでなくエーデルにまで出たことで、アルドと聖女であるソフィアがエッセンに向かうはずだ。
まだ竜巻すらも起きていないのに向かっているとはどういうことなのだろうか。
トイフェリンはそんな気持ちを抱えたまま、畑の方へと向かって行った。
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