第56話 エッセンの緑豊かな風景
トイフェリンたちはエッセンの国境まで来ていた。
綺麗な水が流れる川や面積の広い畑が数々広がっている。エーデルやアオスではあまり見ることのない光景だ。
市街地の方に着くまでの間、トイフェリンはヴァイゼに頼まれた新しい肥料の為に馬車の中から外の畑をよく観察していた。
(ゆっぱり小麦を育てている方が多い…)
多く見られるのは小麦ばかりで、時々野菜の畑だったり牛や豚などの飼育場が見られた。
肥料の手がかりを得る為にトイフェリンはアオスの図書館で本を探して読んだり、アオスで畑を育てている人に聞いたりしてみたものの、手がかりは何も得られず。
やはり食物に長けているエッセンの人たちに聞いてみないと答えは出そうにない。
国境を越え畑を抜け、エッセンの市街地へと入って行った。
街並みはエーデルとはあまり変わらないが、街の人が売っているものは全然違う。食べ物が多く並んでいて見たことのない食べ物もあり、とても美味しそうだ。
(やるべき事が終わったら、ヴァイ殿下と食べにいけるかな?)
そして、ティーフの居る城までやって来た。
ティーフはヴァイゼと同じで皇宮に住んではいないようだ。
門の前まで行くと、ティーフが出迎えてくれている。
「ご足労頂き感謝するよ、急に呼び出してすまないね。まあ元から来るつもりだったと思うけど」
「この度はエッセンに呼んで頂きありがとうございます」
「久しぶりだね、お嬢さん」
ティーフに挨拶をしたトイフェリンを隠すように前に出たヴァイゼは、少し冷たい目を向けティーフに言葉を発した。
「自ずとそう言うとは、何を聞かれるか分かっているんだな?」
「ああ、分かっているよ。話すかどうかは別としてね」
二人の間には険悪な空気が漂っている。その様子にトイフェリンはどうするべきか困惑してしまう。
(これは止めるべきでしょうか?でも、私がここで出ても…)
「とりあえず中に入ってもらおうか。こんな周りの目がある場所で話す内容じゃないしね」
トイフェリンが考えている内にティーフが先に話を切り上げた。
そこから、どちらも言葉を発することはなく城の中を静かに進んで行く。
客室に着いた後、ティーフの方から簡単な説明を受けた。
「まずヴァイゼは俺に聞きたいことが山ほどあるだろうけど、それはまた後日ということで」
「それはどうしてですか?」
「この後夕方にある会食に出てもらいたいんだよ」
どうやらお互いの本当の目的を隠すために、アオスの人たちとは仲良く会食をしたと街に広めておきたいらしい。
「それならこちらとしても好都合だ」
「そう言ってもらえて助かるよ」
先ほどまでの険悪な空気はなくなったが、会食で何も起きないようにとトイフェリンは心の中で祈っていた。
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