第6話 トイフェリンの家族
家に着く頃にはもう日が落ちかけていた。
今日はトイフェリンの実家、アメテュスト家に帰るので家族と仲良く晩餐をとる。
トイフェリンの家族は四人家族で、父、母、兄がいる。
父ツァールト・アメテュストは、ツリ目だが優しさがわかる顔立ちをしていて、この侯爵家を長らく支えてきた。
母ミルト・アメテュストは、髪がゆるふわウェーブな髪型で、穏やかで温厚な性格をしている。たくさんの愛情を注いで育ててくれていて、感謝してもしきれない。
トイフェリンの目は父譲りで、髪は母譲りであり、性格は両親に似ている。
兄シュヴェア・アメテュストは、トイフェリンより四つ年上でしっかりしていて、次期当主として勉学に励んでいる。
また、トイフェリンのことをとても可愛がっていることから、周りにシスコンと呼ばれている。
当の本人はそのことをとても誇らしく思っているが、両親は跡継ぎのために兄の婚約者を探すのに苦労していて、全然決まらないと困り果てている。
トイフェリンがたまに家に帰るのは、兄がずっと皇宮で住まうことを許さなかったからである。
少し帰る日が遠くなってしまっただけで、頻繁に手紙が尋常じゃないほど送られてくる。
「今日は図書館に行ってきたのだろう、目当ての本は見つかったかい?」
父がそう問いかけてきた。実は今日の予定は朝から実家に帰るはずだったが、図書館に行ってから帰ることを家に伝書鳩を飛ばしておいたので、家族はトイフェリンの予定を知っていた。
「はい!ありました」
トイフェリンは笑顔で質問に答える。
「たくさん勉強していて偉いな。その上で可愛いとは本当に天使だな」
「お兄様はいつも私を褒めすぎです!私より頑張っていらっしゃる方はたくさんいますよ」
「謙虚な所もまた、フェリンの可愛さだな」
(謙虚な所に可愛さなんてあるのでしょうか?)
家族との食事はいつもこんな感じで、トイフェリンは恥ずかしい気持ちと兄の言葉に疑問を抱きながら食事している。
「あなたは本当に……、フェリンがとっても可愛いのは事実よ。でもあなたは社交界でも気持ちを出し過ぎなのよ」
(お母様まで…)
トイフェリンの頬はどんどん赤く染まっていく。久しぶりに帰って来たからか、家族からは褒めの言葉しか出てこない。
「僕は他の者が冷たすぎると思うがな」
シュヴェアは、クールな顔立ちで顔が良い為、令嬢から人気も出るのだがシスコンなことを知った令嬢たちは離れて行ってしまう。
なんせシュヴェアは妹トイフェリンの可愛さをそのクールな顔でさらっと言う。
ギャップはあるかもしれないが、やっぱり令嬢は離れていく。シュヴェアには結婚願望がない為、離れて行かれるのは本人にとって好都合だった。
それに、『フェリンに勝る者はいない』と他の令嬢には少し冷たい。初めはもっと冷たかったが、トイフェリンが怒った為に少しやわらかくなった。
それでも最低限の社交辞令しかしないのだが。
シュヴェアのシスコンは、トイフェリンの性格が物語と違うからそうなった訳ではなく、元からシスコンだった。
トイフェリンを一番甘やかしていたのは当然シュヴェアで、物語では甘やかされて育ったトイフェリンはわががままになっていき、全て自分の思い通りになると思ってしまっていた。
それが悪役令嬢になっていく一つのきっかけだった。
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