第5話 今後について考える
家に向かいながら、馬車の中で考える。
(私が悪女?ということ以外、本の通りに進むとしたら殿下はやっぱり聖女様に一目惚れするのでしょうか?殿下のことを好いている訳ではないから、そこはいいのですけど…)
そんなことよりも、心配していることがある。
まずこの国で主に皇族、貴族は、婚約又は結婚している場合は異性に好意を持って接触することは家の評判を落とすことになるし、その人自身の評判も下がり未来の可能性を失ってしまう為、禁止されているのだ。
あっという間に社交界で話が広まっていき、公の場に出てくれば大勢の人に後ろ指を指されるだろう。
つまり物語に書いてある、手の甲であったとしても口づけをするイベントなどもってのほかだ。
それでも皇太子が何も咎められていないのは、婚約者であるトイフェリンの行いの所為である。
誰もがこのことを、『婚約者があんなんじゃ仕方がない』、『皇太子が可哀想』だと言った。
だが現状トイフェリンは悪女などと呼ばれていない。ということは、皇太子が何か咎められてしまうかもしれない。
トイフェリンは皇太子に好意を寄せていなくとも、尊敬はしている。
だから罪には問われないようにしてあげたい。
そして、例え何もしていなくても追放されてしまう可能性だってある。追放という形でなかったとしても、何らかの形でエーデルから出ないといけなくなるかもしれない。
そうなると、第一章のエーデルは追放されて話の終わりを迎え、第二章のアオスの話が始まるのではないだろうか。
アオスに行くことになるとしたら、そこにはあてが何もない。全て一から一人で生きていかなければならない。
令嬢が知らない土地で暮らすのはかなり難しいだろう。トイフェリンは料理や掃除なら出来るが、洗濯をしたことはないし土地の管理もしたことがない。
それに、身に危険が及ぶことも考えて暮らす場所もよく考えなければ。
それだけじゃない、家族や友人、使用人たちと離れるのはとても寂しい。
物語のイベントだけは、今のところ確実に起きている為やはりそこは心配なところだ。
「お嬢様、そんな難しい顔をして悩み事ですか?」
トイフェリンはリナに呼ばれて気がつく。
「少し考え事をしてて」
(リナが居るのに考えて過ぎてしまった…。続きは戻ってからにしないと)
そして窓の外を遠い目で見つめるのだった。
読んで頂きありがとうございました!