番外編 アクストのこっちの話 前編
ヴァイゼが美術館でトイフェリンと会った日。
その後、外での公務を終え城に戻ったヴァイゼは執務室の椅子に座り、再び公務をこなしていた。
「外から帰って来てまた公務をしてるのか?たまには休んだらいいのに」
アクストが呆れたようにヴァイゼに話しかけた。
いつもアクストが寝る時も起きた時もヴァイゼは公務をしている。
(本当にいつ休んでんだか)
「そうだな。たまには休むのも良いだろう」
「は?今なんて?」
「たまには休むのも良いだろうと言ったんだ」
今まで何度言っても休まなかったヴァイゼが、休むという言葉を発したことにアクストは驚き、腑抜けた声を出してしまった。
「一体どんな心境の変化があったんだ?」
「今日は外で良いものを貰ったからな」
少し笑ったヴァイゼは胸ポケットから、トイフェリンに貰ったお菓子を出した。
(ヴァイが笑うのも誰かから何かを受け取るのも珍しい)
「それは誰から?」
「とある令嬢からだ」
「令嬢?!」
そう言いながらヴァイゼはお菓子の包装を開け、食べ始めた。
「何が入っているかも分からないのに毒見なしで食べるなよ!」
ヴァイゼが食べ始めたのを見たアクストはギョッとした顔をし、慌てて急いでヴァイゼを止めに入った。
「心配するな、絶対に何も入っていない」
「それでも毒見はするべきだろ!」
「毒見が必要でも一つも食べさせるつもりはない」
その発言にアクストは言葉を発することが出来なかった。
普段令嬢たちに会うことも避けているのに、急に令嬢からのお菓子を受け取り躊躇することなくそれを食べている。
(絶対に入っていないと断言出来る程その令嬢を信用しているとはな…。しかも一つもくれないとはそこまで美味しい?それともその令嬢に惚れている?いや、流石に後者はありえないな)
困ったように溜息をついたアクストだったが、先ほどヴァイゼの前まで近づいたことであることに気づく。
「あれ?ヴァイそんなネクタイピン持ってたか?まさかそれも同じ令嬢に…」
「そうだが?」
「そんなに気に入ってるんだな。その令嬢のこと」
「そうかもしれないな」
(そこはいっそのこと気に入っていると断言してくれよ…)
アクストは頭を抱えずにはいられなかった。
(ヴァイがここまで変わるとは、一体どんな令嬢なんだ?少し?いや、かなりその令嬢に興味が湧いてきたな)
「今度、俺にもその令嬢に会わせて欲しいな」
「…機会があればな」
(今一瞬ちょっと嫌な顔したな!?)
でも長らく仕えてきてヴァイゼが一人の令嬢の話をすることはなかった為、良い変化をもたらしてくれて少し感謝している。
(まあ、ヴァイが良い人に出会えたなら良いか。令嬢に会える機会が訪れることを願っておこう)
読んで頂きありがとうございました!
トイフェリンにお菓子を貰った後、こんな裏話がありました^^




