第43話 翌朝、目が覚めると
シュヴェアと約束し部屋を出たトイフェリンは、両親との話が終わったであろうヴァイゼの元へと向かった。
「ヴァイ殿下、両親とのお話はどうでしたか?」
「色々な話が出来て、とても有意義な時間だった」
「それは良かったです!」
両親の話は婚約の話だけではなかったようで、それぞれの国の情勢やアオスでのトイフェリンについて聞かれたのだそう。
「両親とお話しされている間にお兄様とお話ししてきたので、もう大丈夫ですよ」
「そうか。そういえば両親や兄には物語のことは話していないんだな」
「はい。物語のことはリナとヴァイ殿下しか知りません。心配をかけたくなかったので」
「人に心配を掛けまいと一人でどうにかしようとするのは良くない。これからはちゃんと何かあったら俺や信用できる周りの人に頼れ。フェリンの周りには良い人ばかりだろう?良い人には良い人が寄って来るからな」
ヴァイゼの言葉を聞いて、胸が軽くなった。
今まで誰かに心配を掛けるのも頼り過ぎるのも良くないと思っていた。心配を掛けてばっかりだとずっと不安にさせてしまって、安心させてあげることが出来なくなってしまうから。
それから最初は頼られるのが嬉しいと感じていても、度が過ぎれば迷惑となって相手を困らせて迷惑が掛かると思っていたから。
ずっと自分のことは自分でどうにかしないと、と呪いのように思い続けていた。
けれどそれは間違いで、時には心配を掛けることもいつでも誰かに頼ることもしていいということに気づかせてくれた。
トイフェリンは誰かの為と思うばかり、自己犠牲をしてしまうことが多い。そのことにヴァイゼは気づいているだろう。
どこまでも優しくいつも気を遣ってくれるヴァイゼもきっと自己犠牲をするタイプだ。トイフェリンとは似た者同士なのかもしれない。
それでもそう言ってくれたことが申し訳なくて、でも嬉しくてたまらなくて涙が零れてしまう。
「ありがとうございます。ヴァイ殿下と出会えて本当に良かったです。ここまでたくさんしてもらって何を返せばいいのか…」
涙を流しながらも笑うトイフェリンに、ヴァイゼはそっと彼女を抱き寄せた。
「返そうとしなくて大丈夫だ。これから俺の隣に居てくれるだけでいい」
「はい…はい…!」
抱きしめられたままヴァイゼの胸の中でトイフェリンは子供のように泣いていた。
目が覚めるといつの間にか自室のベットの上に寝ていた。あのまま泣き疲れて安心して眠ってしまったようだ。
(泣いたのは何年ぶりだろう…。ヴァイ殿下の前であんなに泣いてしまうなんて…!)
あまりの恥ずかしさに悶絶して体を動かした時、体に何かが当たった。
何かと思い起き上がると、トイフェリンから少し離れてベットの上で寝ているではないか。
(え?!ヴァイ殿下がどうして私のベットで…!)
考えてすぐに答えは出た。寝てしまったトイフェリンをヴァイゼがここまで運んでくれて、その後に眠ってしまったのだろう。
(本当に申し訳ない…)
そう思いながらヴァイゼの寝顔を見ていると、視線に気がついたのかヴァイゼが目を覚ました。
「あ!おはようございます、ヴァイ殿下」
「…おはよう」
なんだか幸せな空気に忘れてしまいそうになるが、今はトイフェリンの部屋にヴァイゼとベットの上で二人きり。
その状況をようやく理解したトイフェリンの頭には一つあることが浮かんでいた。
(お兄様に一緒のベットで寝ていたなんて知られたら大変なことに…!)
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