第39話 求婚の返事
あれから準備を進め、手紙でヴァイゼに訪問することを伝えた。
会う時間が取れたのは、あれから一週間経った頃だった。
いつも通り、リナと一緒に城に向かう。
城に近づいて行くにつれて緊張が増していき、どんな風に話すかも考えて来ていたのに忘れてしまいそうなくらい、心臓がバクバクと高鳴っていた。
城に着き馬車から降りたトイフェリンは、深呼吸をして気を引き締める。
「フゥ…」
(ちゃんと話せるかな?)
この前お世話になった侍女に案内され、今回はヴァイゼの執務室に通された。
「失礼します」
中に入ると椅子に座っていたヴァイゼは立ち上がり、トイフェリンの方へと近づい来る。
「ここまで遠かっただろう。疲れていないか?」
「はい。馬車には慣れているので大丈夫です」
「そうか。なら良かった。そこに座ると良い」
ヴァイゼに促され椅子に座り、向かい合うようにしてヴァイゼも椅子に座った。
「婚約の申し込みをして頂きありがとうございました。返事つきましては前向きに考えています」
トイフェリンは緊張して、いつもは見れていたはずのヴァイゼ顔を見られずに少し俯いてしまう。
「前向きか…。それは了承ということで良いのか?」
「婚約を決める前に、お話ししなければいけないことがあるのです」
そう言って、トイフェリンは物語のことを打ち明けた。
トイフェリンの中でヴァイゼと婚約することは、もう心に決めている。だからこそ、この先一緒に生きていくのであれば話しておかなければいけないと判断し、先に話すことにした。
話している間ヴァイゼは何も言わず、トイフェリンが話していることを静かに聞いてくれていた。
「なるほどな…。この先のことを心配していたのか」
「はい…」
「お前の身に何があろうと俺が必ず守ると誓おう。処刑される未来には絶対しない」
「…!」
この話を聞いても、迷うこともなくすぐにトイフェリンの身を案じてくれる姿に安心と感謝の気持ちでいっぱいだった。
「お前が何故、婚約破棄をされたのかと思っていたがそういう裏があったんだな」
やはりヴァイゼでも、トイフェリンが婚約破棄を望んだことは知らなかったようだ。
「この物語で気になっていたことがあるのですが、どうして殿下と聖女様が結婚することが無かったのか分かりますか?」
「そうだな…」
トイフェリンの質問にヴァイゼは考え始め、物語の本を手に取り何かを確認しているようだった。
「まず、エーデルのような聖女信仰の風習はこの国には無い。だから俺は聖女自身を好きになったとしても、聖女の気持ち次第で国が繁栄するなどという伝えを信用しないし、国民も納得しないだろう。皇太子の身分では恋心だけのメリットの無い婚約は決められないからな」
「殿下がその考えだった為に二人が結婚することが無かったんですね…。でも、それでは私との婚約には殿下にメリットがあるということですか?」
「ああ。その聖女の元孤児という身分とは違い、皇太子と元婚約していた侯爵令嬢ならばエーデルのことも皇太子のことも良く知っているだろう。それならエーデルの国勢を今より把握出来るようになる。後、今聞いたこの物語の話も今後役に立つしな」
その話も聞いて、トイフェリンが抱えていた不安は取り除かれ心置きなく婚約を承諾出来そうだ。
「お話を聞いて頂いて、嬉しい言葉も下さってありがとうございます。それでは殿下、これからよろしくお願い致します」
「こちらこそよろしく頼む」
ヴァイゼが微笑み、彼の嬉しいという感情が伝わってきてトイフェリンは嬉しくなる。
「では婚約の手続きを始める。それとこれからはフェリンと呼んでも構わないか?」
「は、はい!」
急に愛称で呼ばれ解けていた緊張が戻ってきて、声が裏返ってしまった。
「俺のことはヴァイと呼んでくれると嬉しい」
「分かりました。ヴァ、ヴァイ殿下…」
今までヴァイゼのことを殿下としか読んでいない為、いきなり愛称呼びは恥ずかしい。
顔を赤くし照れていることは、きっとヴァイゼにもバレていることだろう。、
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