第38話 トイフェリンの選択
二人の時間を楽しんだトイフェリンは、来た道を戻り家へと向かって行った。
「今日は楽しかった。ありがとう」
「私も楽しかったです!返事が決まりましたら、今度は私が殿下のお城を訪ねます」
「わかった。ゆっくり休めよ」
「はい!ありがとうございました」
トイフェリンは帰って行くヴァイゼをを見送っていた。
(出来るだけ早く返事を決めないと…)
婚約の返事を待たせすぎるのは良くないと聞く。
ヴァイゼの為にも早く決めなければならない。
自室に戻ったトイフェリンは、リナの元へ向かう。
「リナ、ただいま」
「お帰りなさいませ、お嬢様!どうでしたか?!」
「とても楽しかったよ!」
「それだけですか?」
リナは物足りない顔をしながら見つめてくる。
「…殿下から婚約の申し出がありました」
「お嬢様、照れて頬が赤いですよ?それで返事はどうしたんですか?」
「返事は待って頂いてるの」
「え!どうしてですか?!両想いなのに?!」
リナのニヤニヤしていた表情が一変して、驚きの顔に変わった。
「でも、そうですよね~、お嬢様は物語を気にしているんですね?」
「うん…」
物語の事もあるが、他にも気にしていることがある。
トイフェリンはヴァイゼから直接婚約を申し出てくれたが、相手が決まっていないヴァイゼには縁談がたくさん来ているはずだ。
その中にはトイフェリンよりも相応しい令嬢がいるだろう。トイフェリンは身分的には大丈夫なものの、アオスの人たちからすれば『皇太子と婚約破棄した隣国の侯爵令嬢』。
アオスの国民と貴族たちや両陛下も、納得しない婚約になってしまうかもしれない。
せめてこのアオスの将来に利益のある者でなければ。
「殿下にも物語の事を話してしまえば良いんじゃないですか?」
「え?」
「殿下はきっとお嬢様の立場や身分も考えた上で、婚約を申し出てくれていると思いますよ」
「そうだよね…。殿下のことだから、またたくさんの配慮をして下さっているよね」
「もう細かいことは考えずに婚約しちゃいましょう!お嬢様には私もついていますから!ね?」
自分の気持ちに気づいた時、頑張ると決めた。今からが一番頑張っていく時なのかもしれない。
リナと一緒に考えていき、不安な気持ちも薄れていく。
それになにより、色々な気持ちがある中で一番思っていることは、ヴァイゼも言っていたようにもっと一緒に居たい。
アオスでのイベントが終わってしまった以上、また何らかの形で次の舞台であるエッセンに行く事になる。
となると、ヴァイゼに会うことはほとんど無くなってしまう。
一緒に居たいのなら婚約するしかない。
(会う度に大きくなっている気持ちに正直にいるべきだよね)
「リナのおかげで揺らいでいた気持ちも固まったよ」
「ということは?」
「うん。婚約する」
「お嬢様ー!!!殿下と幸せになって下さいね!!」
リナはトイフェリンに抱き着き、泣きながら喜んでくれた。
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