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悪役令嬢のはずですが、悪役じゃないのは何故ですか?  作者: 希空 蒼
第2章 パパラチアサファイヤ

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第33話 聖女を庇い受けた傷

「クソっ!!お前のせいであの女に逃げられたじゃねぇか!」 


 男は苛立ち始め、トイフェリンを握っている手に強い力が込められる。


「っ!」

「手荒な真似はしたくなかったが仕方ねぇ。もう逃がさないぞ!」


 そして男に胸ぐらを掴まれて馬車の中に投げられてしまった。馬車は大きな音を立て、トイフェリンは全身を打っていた。


「いっ…!!」


(体が痛い…)


 トイフェリンは急いで立とうとするも体に力が入らず立てそうにない。それに男が出口の前に立っていて、立てたとしても出られなそうだ。


「これでたくさん金が手に入るぞ、お前ら!!」


 男は仲間の方を見て驚いているようだった。


「おい!どうしたんだ!何で倒れて…うっ!!」


 男が周りを見渡した時、男のみぞおちを誰かが蹴ったのをトイフェリンは馬車の中から見ていた。


(もしかして…!)


 蹴られたことにより男は倒れ、その代わり出口から別の男が入って来た。


「殿下!!」


 物語通りヴァイゼは助けに来てくれた。


「遅くなってすまない。大丈夫か?」

「大丈夫です。ありがとうございます」


 と、言いつつも体中が痛い。馬車から降りようとするが力が入らず倒れそうになったところを、ヴァイゼに体を支えられた。


「大丈夫じゃなさそうだな…」


 そう言われトイフェリンはヴァイゼにお姫様抱っこをされてしまう。


「え!?そこまでして頂かなくても…!」

「お前の大丈夫は信用できない」

 

 そのままヴァイゼが用意したと思われる馬車に向かい、椅子にゆっくりと降ろしてくれる。


「ここで少し待っていてくれ。すぐに戻る」

「はい、分かりました…」


(殿下の馬車に乗せてもらいましたけど、この後どうするのでしょう?)


 リナはヴァイゼか騎士に案内されてここに来ると思うが、トイフェリンが乗って来た馬車は神殿に向かい始めた所で待っているであろう。


(この体ではあそこまで歩いて戻れないですし、殿下に聞いてみよう)


 一難が去って落ち着いていると、勢い良く馬車の扉が開いた。


「お嬢様ー!!!」


 リナが大号泣でトイフェリンに飛びついて来た。


「グスッ…本当に、良かったですぅ…!」

「心配かけてごめんね」

「うぅ…お嬢様ー…!」


 最近リナには心配をさせ過ぎてしまっている気がして申し訳ない気持ちでいっぱいだ。リナを慰め泣き止んだところでヴァイゼが戻って来た。


「今から俺の城に向かうつもりだが良いか?」

「はい。ですが私が今住んでいる家と、リナと乗って来た馬車に伝えて頂けますでしょうか?」

「それについてはもう手配してあるから安心しろ」

「ありがとうございます」


 そしてヴァイゼも馬車に乗ろうとした時、聖女がこちらに走って来た。


「この度は助けて頂きありがとうございました!私の所為で怪我までさせてしまって…、本当にごめんなさい!」

「あなたが無事で良かったです。聖女様の身に何かあってはいけないですから」

「本当にありがとうございます!!あなたのお名前を教えて頂いてもいいですか?」

「…!」


 トイフェリンは言葉に詰まってしまった。


(名前を教えるわけには…。教えてしまったら聖女様は自分を責めてしまう)


 名前を聞いたということは、聖女はトイフェリンのことを知らない。アルドの元婚約者であることから名前だけは知っているだろう。

 トイフェリンは聖女を見たことがあるが、聖女はトイフェリンを見たことがない為分かっていない。


 名前を知り自分を助けてくれた人が、自分が現在婚約している人の元婚約者だと分かってしまったら罪悪感に苛まれるのではないかと、トイフェリンは考えたのだ。

 

「…もう良いだろう。彼女も怪我をして疲れている」

「そ、そうですよね!?ごめんなさい、私ったら」

「では行くぞ」


 そうしてヴァイゼは馬車に乗り扉を閉め、城へと向かって行った。


 

読んで頂きありがとうございました!

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