第32話 聖女を助ける為に
二人が歩き出してから数十分後、神殿が見えてきていたその時―
「きゃあああ!!!」
神殿の方から声がした。近くに居た人々が神殿の方を見ていて、人も多く二人が居る場所からは何も見えない。
でも、この声はトイフェリンだけは聞いたことがある。
「お嬢様!今叫び声が神殿の方から聞こえましたよ!?」
「あの声は、聖女様の声です!!」
人混みの中を抜けて行き、なんとか見える所まで行くことが出来た。
そこから見えたのは、聖女が数人居る盗賊の内の一人に腕を掴まれていた。
怪しげな馬車に乗せられそうになっているのを、聖女は必死に抵抗しているようだが聖女の力では大柄な男の力には敵わない。
「早く乗りやがれ!」
「離して下さい!!」
(あのままでは連れて行かれてしまう!)
トイフェリンは聖女の元へ走り出そうとしたところ、抱き着かれた。
「お嬢様!!行くのは危険です!お嬢様に何かあったら私は耐えられません!殿下が来るまで行かないで下さい!!!」
リナにがっちりと抱き着かれていて抜け出せない。
周りの人たちも見ているだけで助けようとする人が居らず、このままでは本当に連れて行かれてしまう。
「リナ」
落ち着いた声でリナに問いかける。
「嫌ですお嬢様!この手は離しません!!」
リナの手に手を重ねて体から腕を離させ、問いかける。リナの手を両手で包み込んだ。
「殿下が来るとしても、私はこのまま見ているだけなんて出来ない。だから、ごめんね」
「あ!お嬢様!!」
トイフェリンは再度走り出し、聖女と男の元へ向かった。
「その手を離してあげて下さい」
男の目を真っ直ぐに見て、強く言い放った。
「お前もいい所のお嬢さんだな。お前もこいつと一緒に連れて行ってやる」
そうしてトイフェリンも腕を掴まれた時、聖女を掴んでいた方の手の力が弱まったように見えた。その時、聖女と男の手の間にトイフェリンは勢い良く突っ込んだ。
それにより聖女の手は離れ、トイフェリンが聖女の前に立っている状況になった。
「聖女様は逃げて下さい!神官の方と来ているのではないですか?」
「そうですが、それではあなたが…!」
「私のことは気にしないで下さい。大丈夫ですから」
聖女を安心させる為に、トイフェリンは微笑んだ。
「ごめんなさい!ありがとうございます!」
聖女は人が居る方へ走って行った。
(あれくらい離れていれば、聖女様はもう大丈夫ですね。神官の方も近くに見えましたし合流出来るでしょう)
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