第30話 自分の気持ちと向き合う
「惜しいが、そろそろ公務に戻らなければならないな…」
「あ!そうですよね!話を長くしてしまってごめんなさい」
トイフェリンは勢いよく立ち上がり、ヴァイゼの方を見た。
「むしろ良かった。外まで送ろう」
「ありがとうございます」
そしてヴァイゼも立ち上がり、リナと途中で合流した後美術館の外まで送ってもらった。
「今日はお礼が出来て良かったです。貴重なお時間を頂きありがとうございました」
「こちらこそありがとな。気をつけて帰れよ」
そう言ってヴァイゼは微笑んだ。
(やっぱりその笑顔は反則です…!)
ヴァイゼの笑顔を見ると、トイフェリンは心臓が大きな音を立てて波打ってしまう。
それからトイフェリンとリナは馬車に戻り、ヴァイゼから聞いた聖女の話を共有する。
『近々聖女が来るため警戒を強めている』ということを。
そこで二人が話を整理していて気づいたことがある。それは聖女が盗賊に襲われた時は、元から聖女をヴァイゼ自身が近くで警備をしていた可能性があることだ。
実際はたまたま聖女を助けに行けたのではなく、最初から助けられるように近くに居たのではないだろうか。
トイフェリンがヴァイゼと接していて、とても優しいことは知っている。だから何かあれば必ず助けるに決まってる。
それに、エーデルでの重要な人物である聖女の身に何かあれば、エーデルとアオスの関係に亀裂が入るだろう。
「ところでお嬢様!殿下とは良い感じ何ですか?」
リナに物凄く期待されているような感じがする。
「良い感じかと聞かれても正直分からないかな…?」
「でも外まで送ってもらった時、凄く良い感じだったじゃないですか!」
「そうだったとしても、聖女様に一目惚れするのだから関係ないよ」
そう言いながらも、また胸が痛んだ。
「お嬢様はどうして自分のことを諦めているのですか?!物語通りに進むなら自分の気持ちは要らないと思ってるんですか?」
「そういう訳じゃないの。でもやっぱり物語通りに進んでしまうなら、私がどんな気持ちを抱いていたとしても関係ないだけで…」
「じゃあ本当はどう思ってるんです?殿下が聖女様に一目惚れしても良いんですか?!」
「それは…」
一目惚れしても物語上当たり前のことだ。でも、それでも。
(私は…)
「聖女様に一目惚れしてほしくない…」
リナに聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声で、自分の本当の気持ちを明かした。
「だったら自分の気持ちに気づかないふり何てしないで頑張りましょうよ!!これまで物語通りでしたけど、今回で物語と違うことが起きたはずです!」
リナの言う通り、物語と違うことは起きている。それも一番重要なポイントなのが、トイフェリンの『第一印象』である。
トイフェリンが物語通りの性格なら、ヴァイゼも彼女の悪評を知って嫌うはずだ。でも実際のトイフェリンについては変わった人とは言われたが、ヴァイゼからの印象は悪くなく、むしろ良かったように思う。
「そうだね。この気持ちは大事にしたい。だから、リナも一緒に手伝ってほしいな」
「勿論ですよ!!絶対にお嬢様と殿下をくっつけて幸せになってもらいますよ!」
リナが凄く張り切っていて心強い。
後悔しないように生きると決めたから、結果がどうなろうとも頑張っていく。
もう物語通りに進まないと一縷の望みに賭けて。
読んで頂きありがとうございました!




