第12話 聖女が現れる
教会へ着くと、もうそこにはかなりの人が集まっている。
「凄い人だね。そんなにみんな気になるのか」
アルドは不思議そうに人混みを見ていた。
「聖女様は神のご加護を与えられた人の中で選ばれた方なのですよ、国に聖女様がいらっしゃると、その国は安泰した良い国になると言われているのです」
「へえ~、詳しいんだね」
「本に書いてあったのを読みました」
そんなことを話しているうちに、中から教会の者が出てきた。
「皆様、お集まり頂きまして誠にありがとうございます。今から聖女様のお披露目でございます」
人々からはたくさんの大きな歓声が上がり、教会周辺に声が響き渡っている。
そして、ついに聖女がその姿を現す。
「皆様、私の為に集まって頂きありがとうございます!私はソフィア・ハイリヒと申します。是非ソフィアと呼んでください!」
「「ソフィア様ー!!」」
彼女が名乗り、微笑んだところで今までで一番の盛り上がりをみせている。
トイフェリンは視線をアルドの方へと向けた。
アルドは驚いた顔をしているように見える。
(殿下にとって彼女はやはり、好みなのですね)
するとアルドは歩き出しソフィアの元へと向かう。
その時トイフェリンは願った。アルドが聖女の手の甲に口づけをしないことを。
「僕はこの国の皇太子アルドリック・グラナートだよ。この度は神のご加護の中で選ばれたこと、お祝い申し上げよう」
「皇太子様が!ありがとうございます!」
二人が挨拶を交わす所を、トイフェリンは遠くから心配そうに見つめていた。
(口づけなさらなくて良かった…。でもやっぱり挨拶を交わすことは変わらないですね。それに、聖女様は殿下に一目惚れしたようです)
ソフィアはアルドに話しかけられた時、頬を赤らめ見惚れていた。
(これで私と殿下の間に何も無くなれば、二人はこの先幸せに暮らして行けますね。後は皇帝陛下、皇后陛下に謁見して婚約破棄を認めてもらうだけです)
まだ聖女とアルドが会話している中、トイフェリンは先にその場を離れ、馬車の中へと戻って行った。
読んで頂きありがとうございました!
そろそろ第1章も終わりが近づいてきています!